手足が長く短毛でスマートな見た目のアビシニアンは、クールな容姿ながら愛情深い性格をもつ人気の猫種です。飼育を検討するなら、アビシニアンの特徴や体質をよく把握しておくことも大切。そこで今回は、アビシニアンの歴史やかかりやすい病気、生活する上での注意点などを解説します。
目次
アビシニアンの歴史
アビシニアンは古い猫種であり、原産には諸説があります。そのひとつは、エチオピア戦争終了時に、イギリスの兵士が祖国に持ち帰った現地の猫が元となったという説です。また遺伝子の解析により、インド洋沿岸の地域に起源をもつ可能性も出てきています。アビシニアンはイギリスで品種改良や繁殖が盛んに行われ、次第に他の国にも広がっていきました。
アビシニアンのかかりやすい病気
アビシニアンには遺伝的にかかりやすい病気があります。以下、病気の特徴や治療方法などについて紹介します。
アミロイドーシス(腎/全身性)
慢性炎症などにより、アミロイドというタンパク質が臓器に沈着する病気です。アビシニアンは遺伝的にかかりやすく、腎臓に沈着して腎機能低下を起こすタイプ(腎アミロイドーシス)と、全身のさまざまな臓器に沈着するタイプ(全身性アミロイドーシス)があります。
-
●症状
アミロイドが沈着した場所によって症状はさまざまですが、病気が進行するまでは目立った症状がみられないことも多いです。
腎臓に沈着した場合(腎機能が低下している場合)は、多飲多尿、食欲不振、嘔吐、体重減少などがみられ、全身性高血圧を伴うこともあります。全身性の場合は、食欲不振や活動低下、嘔吐などが現れます。 -
●診断
血液検査、尿検査、超音波検査、X線検査、細胞診や組織生検などを行います。 -
●治療
根本的にアミロイドそのものを除去する治療法はありません。そのため、沈着した臓器の障害に対する支持療法(輸液、食事療法、降圧剤、ビタミンKの投与など)を行います。進行すると予後は不良であることが多いです。
先天性甲状腺機能低下症(せんてんせいこうじょうせんきのうていかしょう)
甲状腺ホルモンの不足により、代謝が低下する先天性の病気です。アビシニアンは遺伝的にかかりやすい病気ですが、実際には見逃されているケースも多いと考えられます。
-
●症状
成長不良(体格が小さい)、便秘、元気消失、被毛の発育不良がみられます。 -
●診断
身体検査で甲状腺の状態を確認する他、甲状腺ホルモンの測定、血液検査、甲状腺の超音波検査を行います。 -
●治療
生涯にわたり甲状腺ホルモン製剤を服用します。
糖尿病(とうにょうびょう)
猫の糖尿病は人の2型糖尿病に酷似していて、1型糖尿病は少ないです。症状は、無症状から糖尿病性ケトアシドーシスまでさまざまあり、程度によって治療は異なります。
-
●症状
多飲多尿、食欲亢進、体重減少などがみられます。 -
●診断
臨床症状、高血糖、尿糖の存在を確認します。 -
●治療
一般的には、インスリンと食事管理による治療を行います。治療によって寛解することがありますが、インスリン投与は生涯にわたって必要となることも多いです。
糖尿病について詳しくは こちら
角膜黒色壊死症(かくまくこくしょくえししょう)
猫に多くみられ、角膜に褐色~黒色の色素沈着と壊死を伴う疾患です。短頭種に多いとされ、特に 2~7歳で発生が多いとされています。
-
●症状
角膜に黒色の斑ができ、痛み、流涙、瞬きが増えます。進行により角膜潰瘍や壊死が悪化します。 -
●診断
眼科検査(スリットランプ、フルオレセイン染色など)や典型的な黒色病変の確認をします。また背景にある角膜炎や外傷、感染症などの原疾患を評価します。 -
●治療
原疾患の治療が最重要です。点眼薬で炎症や感染を管理します。病変が進行している場合は外科的切除を行うこともあります。
遺伝性網膜変性(いでんせいもうまくへんせい)
猫ではまれな疾患で、視覚が衰えて最終的には失明に至ります。
-
●症状
暗い場所で物が見えにくくなる夜盲の症状から認められ、一般的に両目ともに生じます。症状が進行すると瞳孔が開きっぱなしになります。 -
●診断
眼底検査、網膜電図検査を行います。 -
●治療
有効な治療法はありません。
膝蓋骨脱臼(しつがいこつだっきゅう)
膝のお皿(膝蓋骨)が本来の溝から外れてしまう病気です。猫は若齢に多いです。
-
●症状
歩く際にしゃがむ、活動性の低下、ジャンプができない、足をかばって歩くなどがみられます。 -
●診断
視診・触診、X線検査を行います。 -
●治療
軽度なら体重管理や運動制限をし、歩行に支障が出るほど進行していれば外科手術を行います。
膝蓋骨脱臼を含む足の関節炎について詳しくは こちら
ピルビン酸キナーゼ欠損症(ぴるびんさんきなーぜけっそんしょう)
赤血球の中でエネルギーを作るピルビン酸キナーゼという酵素が先天的に不足する病気です。赤血球が壊れやすくなり、貧血が起こります。
-
●症状
元気消失や下痢、食欲不振などの症状や、黄疸、虚脱までさまざまです。症状が現れない症例も多く存在します。 -
●診断
遺伝子検査で診断します。 -
●治療
無症状の場合もありますが、貧血が重度の場合は輸血が必要です。脾臓の摘出手術を検討することもあります。
中耳のポリープ(ちゅうじのぽりーぷ)
中耳のポリープは鼻咽頭(びいんとう)ポリープ、炎症性(えんしょうせい)ポリープとも呼ばれます。中耳、耳管、鼻咽頭の粘膜上皮から生じる非腫瘍性のポリープです。原因は不明ですが、1歳以下~3歳くらいで発見されることが多く、通常は片側性ですがまれに両側に見られることもあります。
-
●症状
初期は無症状ですが、ポリープの突出した部位や程度により呼吸器症状や外耳炎の症状がみられます。 -
●診断
耳鏡検査、X線検査、CT検査などにより診断します。確定診断にはポリープを切除し、病理組織学的検査を行います。 -
●治療
内視鏡または外科的に切除します。内科療法だけでは効果は期待できず、再発する可能性があります。
猫伝染性腹膜炎(ねこでんせんせいふくまくえん)
FIPとも呼ばれる病気です。猫コロナウイルスが猫の体内で変異を起こし、猫伝染性腹膜炎ウイルスになることで発症するまれな感染症です。1歳未満の子猫に多く、雄に多いとされます。
-
●症状
腹水や胸水など貯留液が溜まるタイプと、病変部位に肉芽腫を形成するタイプがあります。主な症状は発熱、元気消失、体重減少、食欲不振の他、部位により腎機能低下、肝機能低下、ぶどう膜炎、神経症状などです。 -
●診断
特徴的な臨床症状や血液検査、FIPウイルスのPCR検査、画像診断、細胞診、組織生検などいくつかの検査を組み合わせて行います。 -
●治療
抗ウイルス薬を服用します。
猫伝染性腹膜炎のきっかけになる可能性のある眼の病気について詳しくは こちら
アビシニアンとの生活で気を付ける点

ここからはアビシニアンと一緒に生活する上で、意識したい注意点を紹介します。アビシニアンの性格・行動・体質などをくみ、飼い主とペット、お互いの暮らしを整えることが重要です。
他の猫と一緒に飼育する場合は相性をみる
アビシニアンは嫉妬深い一面があり、飼い主と仲が良い他の猫に対して攻撃的な態度をとることも少なくありません。先住猫がいる状態でアビシニアンを新たに飼育する場合や、アビシニアンを先に飼っていて後から他の猫を迎え入れる場合などは、猫同士の相性に注意しましょう。フレンドリーな性格の猫なら、アビシニアンと相性が良い可能性があります。
スキンシップをしっかりとる
アビシニアンは甘えん坊で寂しがりな性格です。飼い主への愛情が深いため、しっかりスキンシップをとって心を満たしてあげましょう。ただし過度なスキンシップは反対にストレスにつながりかねないので注意が必要です。
活発に過ごせる環境を作る
アビシニアンは活発に動く猫で、おもちゃを使った遊びも大好きです。キャットタワーやキャットウォークなどで高さのある場所を作るなどして、運動しやすい屋内環境を整えてあげましょう。ただし、立ち入って欲しくない場所はガードするといった工夫も必要です。
食事は年齢やライフスタイルに合わせる
年齢や成長に合わせたフードでアビシニアンの健康作りをしましょう。活発に行動する、少し太りやすいなどの特徴をふまえて、成猫は高蛋白・低脂質を意識したフードが望ましいです。
適度に毛のお手入れをする
アビシニアンは短毛でダブルコートの被毛を持っています。長毛と比較するとそれほど頻繁にブラッシングする必要はありません。ただし飼い主に甘えたがる性格なので、スキンシップの一環としても1日1回くらいのペースでお手入れするのが良いでしょう。換毛期にはシャンプーをすると抜け毛が取り除きやすくなります。
アビシニアンを飼うのに向いている人

アビシニアンは人なつこい性格なので、よく猫の相手をしてあげられる人に向いていると言えます。また多頭飼いよりは、アビシニアン1頭を集中的に飼育したいという人の方が、猫同士の相性問題を避けられるでしょう。
その他、アビシニアンが屋内で十分運動できるよう、ある程度自宅内のスペースが確保できる人も飼育に向いています。
アビシニアンを深く知り、新たな家族としてお迎えを検討してみて

アビシニアンはクールそうな見た目と、人なつこく甘えん坊な性格のギャップが魅力です。やや嫉妬深いところがあり、活発な行動を好むといった特性に合った環境を整えてあげたいですね。また、かかりやすい病気にも気を付けながら日々の健康管理を意識することが大切です。アビシニアンがどのような猫かを深く知り、新たな家族としてお迎えを検討してみてはいかがでしょうか。
服部 幸 先生