小さなヒョウのようなワイルドな見た目と人懐っこい性格で人気のベンガル。好奇心旺盛で遊びが大好きな猫ですが、長時間の留守番が心配だったり、遺伝性の病気にかかるリスクが高かったりと、飼育する上で知っておきたい注意点もあります。ベンガルの特徴や健康管理のポイントを知り、家族の一員として迎え入れる準備をしましょう。
目次
ベンガルの歴史・特徴
ベンガルの起源は1963年にまでさかのぼります。アメリカ・カリフォルニア州のブリーダー、ジーン・ミルがアジアンレパード(ベンガルヤマネコ)とイエネコの交配に成功し、美しいスポット模様を持つ子猫が誕生したことがきっかけとなります。その後、アビシニアン、ボンベイ、ブリティッシュショートヘア、エジプシャンマウといった複数の純血種との異種交配を重ねることで、現在のベンガルという品種が確立されました。
ベンガルはヒョウを思わせるロゼット模様を持ち、筋肉質でしなやかな体つきが特徴です。輪郭は丸みのある三角形で、離れ気味に付いた眼と大きく広い鼻が独特の表情を作り出しています。被毛はやわらかく艶があり、模様はスポット模様とマーブル模様の2種類です。
ベンガルのかかりやすい病気
ベンガルは遺伝的に気を付けたい病気がいくつか存在します。発症リスクがある病気を把握しておきましょう。
肥大型心筋症(ひだいがたしんきんしょう)
猫で最も多く認められる心臓病です。比較的若年齢での発症が多く、また雄での発症が多いのが特長です。
ヒトと同様に遺伝的な関与が指摘されています。肥大型心筋症による命にかかわる症状には、うっ血性心不全、動脈血栓塞栓症、突然死が挙げられます。一般的に、動脈血栓塞栓症が起こった場合の予後は良くありません。
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●症状
不整脈が見られても多くは無症状ですが、急激に悪化したり、失神や突然死が起こったりする場合があります。心不全では呼吸困難が多く見られます。 -
●診断
臨床症状、X線検査、心エコー図検査、心電図検査、血液検査から総合して臨床診断を行います。動脈血栓塞栓症は後肢に起こりやすいのが特徴です。 -
●治療
病根治療法はなく、投薬およびストレス管理が治療のメインです。症状が出る前に診断ができた場合、予後は比較的良好なことが多いです。
漏斗胸(ろうときょう)
胸骨の背側変異と、それに伴い胸部が腹背方向に圧迫される病気です。漏斗胸はベンガルやマンチカンに好発するという報告があります。
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●症状
無症状の場合もありますが、より重度な症例では発育不良や運動不耐性、頻呼吸、呼吸困難、チアノーゼ(舌の色が紫になる)などを呈する場合があります。 -
●診断
身体検査やX線検査などで診断します。 -
●治療
奇形の程度が重度で、これに伴う臨床症状がある場合は、外科的治療または支持療法が検討されます。奇形が適切に矯正され、他に合併症がない場合は、長期的な予後が期待できます。
尿石症(にょうせきしょう)
結石の成分や発生場所によって病態はさまざまですが、シュウ酸カルシウム結石、ストルバイト結石の2種が全体の発症率を占めています。ベンガルは尿酸塩結石が多いとされています。
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●症状
発生場所と結石の大きさにより、症状は異なります。腎結石が小型であれば無症状のことが多く、尿管結石は多くの場合で痛みを伴います。 -
●診断
尿検査、超音波検査、X線検査などを行って診断します。 -
●治療
具体的な治療法に関しては、結石の種類により対処が異なります。ただし、生活環境、特に飲水環境の改善が重要なため診断ごとの治療と並行しての対策が必要です。
子宮蓄膿症(しきゅうちくのうしょう)
子宮壁の急性または慢性化膿性炎症です。犬ほどは多くはないものの猫でも発生し、ベンガルは好発品種のひとつです。
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●症状
陰部からの排膿、発熱、食欲不振、元気消失などが起こります。 -
●診断
陰部の捺印細胞診、X線検査および超音波検査、血液検査などを行って診断します。 -
●治療
子宮卵巣摘出術を行うのが一般的です。子宮を温存する場合には、子宮口を広げる注射薬での治療が可能な場合もあります。ただし、子宮を温存する場合は、再発のリスクがあります。
末梢神経障害(まっしょうしんけいしょうがい)
脳や脊髄から体の各部へ伸びる末梢神経が何らかの原因によって障害される病気です。ニューロパチーと呼ばれることが多く、複数の末梢神経に生じている状態をポリニューロパチーと呼びます。若齢のベンガルでは、運動神経が主に障害される原因不明のポリニューロパチーが報告されています。
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●症状
運動神経が障害されると後肢の蹠行(しょこう:足底を地面につけて歩く)が起きます。また感覚ニューロパチーが生じると知覚過敏や運動失調、痛覚の低下や消失といった感覚障害が起きることがあります。 -
●診断
生検や血液検査、神経学的検査などの結果を総合して診断します。 -
●治療
原因によって治療法や予後が大きく異なります。若齢のベンガルに生じるポリニューロパチーに対する特異的な治療法は、まだ判明していません。

白内障(はくないしょう)
水晶体が不透明になった状態です。原因には先天性や加齢性のほか、遺伝性、外傷性、水晶体脱臼緑内障、糖尿病などがあります。ベンガルは遺伝的に白内障になりやすいとされている品種です。一方、猫では糖尿病が原因で白内障が起こることは少ないと考えられています。
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●症状
眼の中が白っぽく濁って見える、暗い部屋で物にぶつかるようになった、高いところへジャンプするのをためらうなど、視力低下が疑われる症状が現れます。 -
●診断
細隙灯顕微鏡(スリットランプ)検査で水晶体の混濁を確認します。先天性白内障では、開瞼時に既に白内障が認められます。 -
●治療
点眼薬のみでコントロールすることはできず、根治には手術が必要です。ただし、白内障は高齢でかかるケースが多く、手術が選択されない場合も多くあります。白内障となった水晶体から水溶性の変性蛋白質が溶け出し、水晶体起因性ぶどう膜炎を発症する場合があるため、予防として消炎点眼薬を使用するケースもあります。
遺伝性網膜変性(いでんせいもうまくへんせい)
猫ではまれな病気で、視覚が衰えて最終的には失明に至ります。暗い場所で物が見えにくくなる夜盲の症状から認められ、一般的に両眼ともに生じるのが特徴です。
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●症状
初期は飼い主が気づくことは少なく、部屋の中でぶつかることが多くなった、あまり動きたがらないなどの症状が現れてから来院するケースが多く見られます。 -
●診断
眼底検査、網膜電図検査を行います。 -
●治療
有効な治療法はありません。
ピルビン酸キナーゼ欠損症(ぴるびんさんきなーぜけっそんしょう)
赤血球の中でエネルギーをつくるピルビン酸キナーゼという酵素が先天的に不足する病気です。赤血球が壊れやすくなり、貧血が起こります。
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●症状
元気消失や下痢、食欲不振などの症状や、黄疸、虚脱まで症状はさまざまです。症状が現れない症例も多く存在します。 -
●診断
遺伝子検査で診断します。 -
●治療
無症状の場合もありますが、貧血が重度の場合は輸血が必要です。脾臓を摘出する手術を検討することもあります。
猫伝染性腹膜炎(ねこでんせんせいふくまくえん)
猫コロナウイルスが猫の体内で変異を起こし、猫伝染性腹膜炎ウイルスになることで発症するまれな感染症です。1歳未満の子猫に多く、雄に多いとされています。
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●症状
腹水や胸水など貯留液が溜まるウェットタイプと、病変部位に肉芽腫を形成するドライタイプがあります。主な症状は発熱、元気消失、体重減少、食欲不振の他、部位により腎機能低下、肝機能低下、ぶどう膜炎、神経症状などです。 -
●診断
特徴的な臨床症状や画像診断など、いくつかの検査を組み合わせて診断します。 -
●治療
近年ではFIPウイルスに効果的な抗ウイルス薬を使用することにより、治る確率が高くなっています。
ベンガルとの生活で気を付ける点

ベンガルは好奇心旺盛で運動量が多い猫種です。人懐っこく甘えん坊な一面もあり、家族と強い絆を築きやすいでしょう。ただベンガルは他の品種に比べて捕食行動や不適切な場所での排泄が多い傾向にあります。家族に対する攻撃行動が多い、尿によるマーキングが多いという報告もあるため、十分な運動・ストレスケア・早期のしつけと環境づくりが重要です。
しっかり運動させる
高さのあるキャットタワーやキャットウォークなどを準備し、おもちゃを使った遊びを1日に数回できると理想的です。狩猟本能が強いため、噛み癖がつかないように根気よく教えましょう。
同居動物との相性を確認する
ベンガルは活発で自己主張が強いので、先住猫がのんびりした性格だとストレスを与えることがあります。先住猫がいる場合は必ず迎え入れる前に相性を確認したいところです。最初は先住猫から隔離し、段階的に慣らしていきましょう。
トイレ環境を整える
マーキング対策として、広めのトイレを複数設置します。トイレの数は頭数+1を目安に準備しましょう。
定期的に健康チェックをする
心筋症などの病気は若齢でもかかる可能性があるため、年に1回は健康診断を受けましょう。ベンガルは筋肉質で運動量が多いですが、食事管理をおろそかにすると肥満につながる可能性もあります。体重を含め、定期的な健康チェックを心がけることが大切です。
ベンガルを飼うのに向いている人

ベンガルはアクティブに猫と暮らしたい人に向いた品種です。活動的で遊びを好むため、積極的に遊ぶ時間を確保しましょう。一方、初めて猫を飼う人や独り暮らしの世帯、年配の方にとっては飼うのが難しい品種と言えるかもしれません。留守番の時間が長いとストレスやイタズラの原因となるため、しっかりとコミュニケーションを取れる人が向いています。
ベンガルを家族に迎えようと考えている方へのメッセージ
ベンガルの特性を知って家族の一員に迎え入れよう

ベンガルは見た目のワイルドさと活発さ、また人懐っこく甘えん坊な性格も魅力です。毎日の遊びや運動を工夫しながら、快適な環境づくりを意識することで、長く安心して一緒に暮らせるでしょう。遺伝性の病気にかかるリスクがあるため、定期的な健康チェックも欠かさずに行いましょう。
服部 幸 先生

