ボーダー・コリーは、高い知能と優れた運動能力を兼ね備えた牧羊犬として知られています。その能力を生かしてドッグスポーツでも活躍する一方、豊富な運動量や適切なしつけが欠かせない犬種です。本記事では、ボーダー・コリーの歴史や特徴、性格、かかりやすい病気に加え、飼い方のポイントまでわかりやすく解説します。
目次
ボーダー・コリーの歴史

ボーダー・コリーの祖先は、8~11世紀ごろにバイキングがイギリスへ持ち込んだトナカイの牧畜犬といわれています。その後、イギリスの在来犬種との交配を重ねることで、優れた牧羊犬としての能力を高めてきました。
イングランドとスコットランドの国境地域(ボーダー)で活躍したことから、「ボーダー・コリー」という名前が付いたとされています。純血種として公認されたのは1987年と、比較的新しい犬種です。現在では牧羊犬としてだけでなく、家庭犬やドッグスポーツでも高い人気を集めています。
ボーダー・コリーの特徴

ボーダー・コリーは、高い知能と優れた運動能力を兼ね備えた牧羊犬です。体つきや性格、動きにも特徴があり、ドッグスポーツでも活躍する犬種として知られています。それぞれの特徴を詳しく見ていきましょう。
均整の取れた体型と優れた運動能力
体高は約53cm、体重は14~22kgほどで、中型犬に分類されます。体高より体長がやや長く、均整の取れた体型をしているのが特徴です。
反射神経や瞬発力、持久力に優れ、ドッグスポーツでもその能力を発揮しています。高い運動能力を持つ犬種です。
豊富な毛色と2種類の被毛
ブラック&ホワイトやトライカラー、ブルーマールなど、ボーダー・コリーの毛色は種類が豊富です。ただし、ホワイトが優勢な毛色は好ましくないとされています。
被毛は「ラフ(長く粗い毛質)」と「スムース(短くてまっすぐな毛質)」の2種類があります。
ボーダー・コリーの性格

ボーダー・コリーは非常に賢く、飼い主とのコミュニケーションを好みます。その性格を理解して適切なしつけを行い、運動環境を整えることが重要です。ここでは、ボーダー・コリーの性格について詳しく見ていきましょう。
賢く従順な性格
ボーダー・コリーは、全犬種の中でもトップクラスといわれる高い知能を持ち、思慮深い犬種です。飼い主に対して非常に忠実で、従順な性格をしています。
牧羊犬として羊や人の動きを見ながら行動してきたため、状況判断を得意とするのも特徴です。そのため、一貫した態度でしつけを行うことが重要です。
責任感が強く仕事を全うする
牧羊犬として活躍してきた歴史があり、作業意欲が高い犬種です。与えられた仕事を最後までやり遂げようとする傾向があり、的確な判断力や粘り強さに優れています。また、羊を傷つけない冷静さも持ち合わせています。
運動量が多く活発
ボーダー・コリーは牧羊犬として羊を追ってきたため、高い運動能力を持っています。アジリティやフライングディスクなどのドッグスポーツを得意とする個体も多くいます。
十分な運動ができないとストレスがたまり、問題行動につながることがあるため、都会で飼育する場合は運動不足にならないよう配慮が必要です。
ボーダー・コリーのかかりやすい病気

ボーダー・コリーは、遺伝的要因や体質に関連した病気がみられることがあります。特に眼や耳に関わる病気は、早期発見と適切な対応が重要です。ここでは、ボーダー・コリーがかかりやすい代表的な病気について解説します。
コリーアイ症候群(こりーあいしょうこうぐん)
コリーアイ症候群は、遺伝性の先天性眼疾患です。ボーダー・コリーを含むコリー系犬種では罹患率が40~75%と非常に高いことで知られています。
症状の程度には個体差があり、ほとんど現れない軽症例から、視力低下や失明につながる重症例までさまざまです。コリーアイ症候群では、強膜(きょうまく:眼の外側を覆う膜)に欠損が起こることがあります。
強膜欠損症は「強膜コロボーマ」とも呼ばれ、強膜が正常に形成されない病気です。
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●症状
視力が低下すると、物にぶつかりやすくなったり、暗い場所で行動しにくくなったりすることがあります。また、眼内出血や網膜剥離などが起こる場合もあります。軽症では症状がほとんどみられませんが、病状が進行すると失明することもあります。 -
●診断
眼科検査や眼底検査によって診断します。必要に応じて、遺伝子検査を行うこともあります。 -
●治療
コリーアイ症候群を完治させる治療方法は確立されていません。症状が軽い場合は経過観察となることが多く、網膜剥離や眼内出血などの合併症が生じた場合は、症状に応じた治療を行います。
水晶体脱臼(すいしょうたいだっきゅう)
水晶体脱臼とは、眼の中でレンズの役割をする水晶体が、本来ある位置からずれてしまう病気です。外傷や緑内障、白内障、眼内腫瘍、遺伝的な素因などが原因で起こります。
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●症状
白目の充血や激しい痛みが見られることがあります。また、ぶどう膜炎や緑内障など、別の眼の病気を発症しやすくなります。水晶体が脱臼していても、緑内障や眼の中の炎症(ぶどう膜炎)が起こっていなければ無症状の場合が多く、気づかないこともあります。 -
●診断
診断では、眼内にスポット光を照射して水晶体の状態を確認します。 -
●治療
水晶体が脱臼していても、ぶどう膜炎や緑内障が起こっていなければ、治療を行わず経過観察となる場合があります。水晶体が眼の前方にずれてしまった場合は、視力を守るために水晶体を摘出する手術を行うことがあります。
CL病(しーえるびょう)
CL病は、現在ではNCL(Neuronal Ceroid Lipofuscinosis)と呼ばれることが多い、遺伝性の神経変性疾患です。ボーダー・コリーでは、CLN5遺伝子の変異が原因として知られています。
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●症状
発症は通常1歳半~2歳頃で、徐々に症状が進行します。行動の変化(落ち着きがなくなる、不安や恐怖心の増加)、攻撃性の増加、視力低下や失明、ふらつき(運動失調)、階段を嫌がる、発作(てんかん様症状)、学習能力や認知機能の低下などがみられます。 -
●遺伝形式
CL病は常染色体劣性遺伝の病気で、父母双方から異常な遺伝子を受け継いだ場合に発症します。DNA検査によって、キャリア・クリア・発症リスクの判定が可能です。繁殖に用いるボーダー・コリーでは、検査が推奨されています。 -
●治療
残念ながら、根本的な治療法は確立されておらず、症状を和らげる対症療法が中心となります。進行性の病気で、多くの場合は若いうちに重篤な神経症状を示します。
難聴(なんちょう)
難聴とは、音が聞こえにくくなったり、聞こえなくなったりする状態です。ボーダー・コリーでは、遺伝的な要因による先天性難聴がみられることがあります。また、加齢や中耳炎・内耳炎などによって後天的に発症することもあります。
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●症状
先天性難聴は、出生時または出生後数週間で明らかになり、生涯にわたって続きます。難聴は通常、両側の耳に起こりますが、左右どちらか一方の耳だけが障害を受けることもあります。
聴覚経路に病変が生じることによって、聴覚が低下します。先天性難聴の場合は、出生後数週間で明らかになり、生涯にわたり症状が続きます。 -
●診断
問診や耳鏡検査を行い、外耳道や鼓膜に異常や炎症がないかを調べます。さらに、X線検査やCT検査、MRI検査を実施することもあります。 -
●治療
先天性難聴の場合、治療法はありません。後天性難聴の場合は、原因に対する治療を行います。原因によって、完治するかどうかや治療に必要な期間は異なります。
ボーダー・コリーの飼い方

ボーダー・コリーは運動能力と知能が高い犬種です。十分な運動やトレーニングを行い、適切なお手入れをすることが大切です。ボーダー・コリーの特性に合わせて、快適に暮らせる環境を整えましょう。
毎日十分な運動と遊びの時間を確保する
毎日、朝晩それぞれ30分~1時間程度の散歩が理想的です。ただし、散歩だけでは体力を発散しきれない場合もあります。
ドッグランで走らせたり、アジリティやフライングディスクなどのドッグスポーツを取り入れたりするのもおすすめです。ボールやおもちゃを使った「持ってこい遊び」は、運動不足の解消だけではなく、飼い主とのコミュニケーションにも役立ちます。
子犬の頃からトレーニングを行う
牧羊犬の性質から、走る子どもや自転車、バイクなどを追いかけることがあります。子犬の頃から基本的なトレーニングを行い、飼い主の指示に従って行動できるよう習慣づけましょう。
熱中症対策を行う
夏場はエアコンを活用し、快適な環境を整えることが大切です。散歩は暑い時間帯を避け、早朝や夕方以降に行うようにしましょう。
こまめにブラッシングをする
スムース、ラフどちらの被毛も定期的なブラッシングが必要です。週2回程度を目安に抜け毛を取り除き、換毛期はブラッシングやシャンプーの回数を増やすのがおすすめです。シャンプー後は被毛をしっかり乾かしましょう。
食事管理にも気を配る
食欲旺盛なため、早食いする場合は食器を工夫する方法もあります。肥満になると関節を痛めやすくなるため、運動とあわせて予防しましょう。関節をサポートする成分を配合したフードを選ぶのも一案です。
ボーダー・コリーの特徴や性格を理解し、適切な環境で迎えよう

ボーダー・コリーは、非常に高い知能と運動能力を持つ一方で、十分な運動や一貫したしつけが欠かせない犬種です。かかりやすい病気や体の特徴を理解し、日常的なケアを行いながら生活環境を整えることで、健康的で安定した暮らしにつながります。ボーダー・コリーの特性をよく理解したうえで、適切な飼育環境を準備してお迎えしましょう。
福山 貴昭 博士