セント・バーナードは、アルプスの雪山で遭難者を救助してきた歴史を持つ大型犬です。がっしりとした体格と穏やかな性格で知られ、日本ではアニメの影響もあり親しまれてきました。本記事ではセント・バーナードの歴史や特徴、性格、かかりやすい病気に加え、飼育に向いている人や生活で気を付けたいポイントまでわかりやすく解説します。
目次
セント・バーナードの歴史

セント・バーナードは、チベタン・マスティフを祖先に持つとされ、17世紀頃にはスイスで飼育されていたといわれています。アルプス山中のサン・ベルナール僧院では、雪山で遭難した旅人を捜索・救助する使役犬として活躍してきました。
なかでも有名なのが救助犬のバリーで、生涯に40人もの遭難者を救ったと伝えられています。日本では、アルプスの少女ハイジに登場する“ヨーゼフ”の影響により、親しみのある犬種として広く知られるようになりました。
セント・バーナードの特徴

セント・バーナードは、大きな体と穏やかな表情が印象的な大型犬です。幅広い胸板や太い骨格を持つがっしりした体格に、垂れ耳やゆとりのある皮膚など、特徴的な外見をしています。体格や顔立ち、被毛の種類など、セント・バーナードの主な特徴を紹介します。
がっしりした大型の体格
セント・バーナードは、大型犬のなかでも特に体重が重い部類に入り、大きな頭と厚い胸板、幅広い背中を持つがっしりとした体格をしています。体高と体長のバランスはおよそ9:10が理想とされ、全体的に安定感のある体つきをしています。太い骨と十分な筋肉を備え、大きな体を支えるために足も非常に太いのが特徴です。
垂れ耳とたるみのある表情
セント・バーナードの体高は約65~90cm、体重は54~91kgほどです。頭部は体高の約3分の1をやや上回る大きさで、三角形で先が丸い耳が頬に沿って垂れ、口角まで垂れ下がった唇が印象的です。皮膚にはゆとりがあり、個体によっては下まぶたが垂れて「あっかんべー」のように見えることもあります。
被毛の種類と毛色
被毛は短毛の「ショートヘアード」と長毛の「ロングヘアード」の2種類があり、いずれもダブルコートです。毛色は白を基調に、赤みがかったブラウンやブリンドル(虎のような縞模様)が入るのが一般的。
胸や足、尾の先端、マズル周辺は白くなる個体が多く、コントラストのある配色が特徴です。頭の中央に白い線状の模様「ブレーズ」が見られることもあります。
セント・バーナードの性格

セント・バーナードは大型犬のため動きや反応は比較的ゆったりしており、その点がおっとりとした印象をより強めています。基本的には穏やかで落ち着いた性格ですが、警戒心もしっかり備えています。
表情の変化が大きくないため、警戒しているのか威嚇しているのか、あるいは単に注目しているだけなのかは、体全体の様子から読み取ることが大切です。
もともと遭難者救助などの使役犬として活躍してきた歴史があり、責任感が強く、与えられた役割に対して自分で考えて行動する知能を持っています。その一方で、おっとりとした性格であるものの警戒心をあわせ持つため、子犬の頃からさまざまな人や環境に慣れさせる社会化を早めに進めることが重要です。
セント・バーナードのかかりやすい病気

セント・バーナードは体が大きく皮膚や関節に特徴のある犬種のため、特有のかかりやすい病気がいくつか知られています。特に目の病気や関節のトラブルなどは比較的見られることがあり、日頃から体調の変化に気づくことが大切です。セント・バーナードに見られやすい病気について確認しておきましょう。
眼瞼外反症(がんけんがいはんしょう)
まぶた(眼瞼)が外側にめくれ、結膜が露出してしまう病気です。結膜炎や角膜炎が起こることがあります。セント・バーナードやブルドッグなどの犬種では、遺伝的に起こりやすいとされています。
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●症状
まぶたが外側に垂れ下がり、赤い結膜が見えます。涙や目やにが増えるようになります。 -
●診断
視診により、眼瞼の形状や結膜の露出状態を確認します。 -
●治療
発生部位や重症度によって異なりますが、基本的には手術で余分な眼瞼を切除します。
チェリーアイ(第三眼瞼腺脱出)
目頭に赤く腫れた組織が見えることから、「チェリーアイ」と呼ばれる病気です。正式名称は「第三眼瞼腺脱出(だいさんがんけんせんだっしゅつ)」といいます。第三眼瞼とは、目頭の内側にある膜状の組織で、まぶたの一部にあたります。眼球の保護や涙の分泌に関わる役割を担っていますが、その裏側にある涙腺(第三眼瞼腺)が本来の位置から外れて突出することで発症します。
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●症状
目頭に赤い腫れ(しこり状)が現れます。 -
●診断
視診により、特徴的な腫脹の有無を確認して診断します。 -
●治療
逸脱した第三眼瞼腺を元の位置に戻して縫合する手術が一般的です。
類皮腫(るいひしゅ)
本来は毛が生えない部位に、毛嚢(もうのう)や皮脂腺を含む皮膚のような組織が発生する病気です。角膜や結膜、強膜、第三眼瞼に生じることがあり、多くの場合は毛の生えた腫瘤ができるのが特徴です。
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●症状
類皮腫から生えた毛によって角膜や結膜が傷つき、涙が増えたり角膜炎が起きたりします。 -
●診断
視診により、特徴的な病変の有無を確認して診断します。 -
●治療
外科的切除が基本となります。完全に切除できれば再発は少ないとされていますが、切除が不完全な場合は再発することがあります。
小角膜症(しょうかくまくしょう)
角膜が正常よりも小さい状態で生まれる先天性の発育異常です。片眼のみに現れる場合と両眼に見られる場合があり、多くは小眼球などほかの眼の異常を伴います。
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●治療
角膜の大きさを正常に戻すことは難しく、根本的な治療法はありません。
股関節形成不全(こかんせつけいせいふぜん)
股関節の発育不良により、成長とともに関節の変形や炎症が進行する病気です。股関節の緩みから脱臼や亜脱臼が起こることがあります。
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●症状
通常は生後4~12カ月頃に症状が見られますが、2~3歳になるまで気づかれないこともあります。腰を振るように歩く、走るときにうさぎ跳びのように後肢を同時に動かす、坂道の途中で座り込む、階段の昇降や運動を嫌がる、後肢を痛がる、起き上がるのが難しくなるといった様子が見られます。 -
●診断
触診を含む身体検査やX線検査により診断します。 -
●治療
症状の程度や年齢、検査結果、費用、飼い主の希望などを踏まえて総合的に判断されます。運動制限や鎮痛剤による痛みの管理、体重管理などで関節の維持を目指す保存的治療と、手術による外科的治療があります。
顎関節の脱臼・亜脱臼(がくかんせつのだっきゅう・あだっきゅう)
顎関節が正常な位置からずれることで起こる外傷性の病気です。セント・バーナードのような大型犬では、外傷に加えて、まれに顎関節の形成異常(側頭下顎骨の発育異常)が関与することもあります。
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●症状
口が開いたまま閉じられない、または閉じにくい状態になります。顎に触れると痛がったり、鳴き声を上げたりすることがあります。 -
●診断
視診や触診で顎の位置や動きを確認し、口の開閉状態や左右差を評価します。必要に応じてX線検査を行い、関節のずれや骨の異常の有無を確認します。 -
●治療
多くの場合、鎮静または麻酔下で関節を元の位置に整復します。再脱臼を防ぐため、一時的に口の開閉を制限する処置が行われることもあります。
横紋筋肉腫(おうもんきんにくしゅ)
横紋筋という骨格筋由来の細胞が腫瘍化して発生する悪性腫瘍の一種です。若齢犬の膀胱に発生することが多く、セント・バーナードなど大型犬の雌に多い傾向があります。
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●症状
膀胱に発生した場合は、血尿や排尿困難などが見られます。周囲への浸潤性が高く、肺や肝臓、脾臓、腎臓などへ転移することもあります。 -
●治療
外科的切除が基本となりますが、発生部位や進行度によっては完全切除が難しい場合もあります。必要に応じて放射線療法や抗がん剤治療を併用することがあります。
セント・バーナードを飼うのに向いている人

セント・バーナードは体が大きく力が強いため、小型犬に比べると飼うのが難しい面もあります。以下の条件を満たせる人が向いているでしょう。
- ・大型犬を制御できる体力がある
- ・食費や医療費、シニア期の介護費など大型犬特有の負担に対応できる
- ・散歩や運動の時間をしっかり確保できる
- ・室内に広い飼育スペースを用意できる
- ・急な通院や介護に備え、大きめの車を用意できる
- ・暑さ対策の温度管理をきちんと行える
- ・抜け毛の多い被毛のお手入れを苦に感じず続けられる
セント・バーナードの飼い方

セント・バーナードは穏やかな性格で知られていますが、体が大きく力も強いため、飼育にはいくつか気をつけたいポイントがあります。特に、食事管理や運動量、被毛のお手入れ、住環境の整備などは健康や安全に大きく関わります。セント・バーナードと暮らすうえで押さえておきたい飼い方のポイントをチェックしましょう。
肥満にならないよう気をつける
セント・バーナードは成長速度が速く、子犬の頃からよく食べる傾向があります。ただし、食べさせすぎると成犬になってから肥満になりやすく、大型犬の場合は関節への負担が大きくなるため注意が必要です。食事量と運動量のバランスを意識し、適切な体型を維持することが大切です。
毎日しっかりと散歩をさせる
セント・バーナードの運動は、1日1時間程度の散歩を目安に行うのがおすすめです。また、散歩に加えて自由運動も取り入れることで、ストレスを発散させるのもポイントです。
運動時は足腰への負担を軽減するため、滑りにくく硬すぎない地面を選びましょう。暑い時間帯は避け、無理のない範囲で行うことが重要です。関節に痛みがある場合や肥満が見られる場合は、獣医師に相談しながら運動内容を調整しましょう。
毎日のブラッシングやお手入れは欠かせない
セント・バーナードは抜け毛が多いため、ブラッシングは毎日行うことが基本です。特に春や夏は下毛をしっかり取り除き、通気性を確保することで皮膚トラブルの予防につながります。
よだれが多い犬種のため、胸元などはこまめに拭き取り、必要に応じてよだれ掛けを使用すると良いでしょう。垂れ耳で耳の中に汚れがたまりやすいため、定期的にチェックして清潔を保つことが大切です。お尻まわりの汚れも見落とさず、こまめに確認・ケアを行いましょう。
ドアや柵は丈夫なものを用意する
セント・バーナードは大型犬で力が強いため、壊れにくいドアや柵などの設備を用意してください。網戸などは飛びつくと破損することもあります。
イタズラされると困るものは鍵付きの場所や高い位置に保管するのがおすすめです。静かに落ち着ける専用スペースを用意してあげましょう。
特徴やかかりやすい病気を理解し、お迎えを検討しよう

セント・バーナードは穏やかで頼もしい性格の大型犬ですが、体が大きい分、運動量や食事管理、住環境の整備などに注意が必要です。また、犬種特有のかかりやすい病気についても理解しておくことが大切です。
特徴や性格、飼育のポイントをよく知り、十分な準備と環境を整えたうえで、セント・バーナードとの生活を検討しましょう。
福山 貴昭 博士