愛嬌たっぷりの顔や長い毛、ころんとしたフォルムなど愛らしい部分が盛りだくさんのペキニーズ。落ち着いていて利発な性格もあり、インドア派向けの犬種とも言われますが、飼育する上では注意したい点もあります。今回はそんなペキニーズの特徴やかかりやすい病気、飼育のポイントなどをみていきましょう。
目次
ペキニーズの歴史

ペキニーズは中国原産の犬種です。「北京」にちなんでペキニーズと名付けられました。中国ではペキニーズはライオンと猿が結婚して誕生したという伝説がありますが、実際にはラサ・アプソをルーツとしています。
始皇帝の時代に存在していたという説があり、近年DNAの分析でもはるか昔から続く古い犬種であることが判明しました。パグやシーズー、チンと関わりのある存在でもあります。
ペキニーズの特徴

ペキニーズの体高は平均20cm前後です。体重は平均3~6kgほどで、小型犬に分類されます。鼻先が短く愛嬌のある顔をしています。耳は垂れていて、足は太くて短めです。
被毛は硬くて真っすぐな長毛のダブルコートで、オーバーコートとアンダーコートともに毛量が豊富です。毛色の種類はホワイト・フォーン・ブラック・レッド・クリームなどあらゆるカラーが見られます。
まとめると、多毛、潰れた顔、短い足からなる”横から見たシルエットが「ティッシュペーパーの箱」に見える”ことがペキニーズの特徴です。
ペキニーズの性格

ペキニーズは落ち着きがあってマイペースな性格です。勇敢で自立心も強く、頑固な一面があります。吠えにくく、飼い主の言うことをよく聞く賢さを持っています。しつけがしやすいので、犬の飼育初心者でも飼いやすい犬種と言えるでしょう。オスは甘えん坊、メスはマイペースな傾向にあるとされます。
ペキニーズのかかりやすい病気

ペキニーズは体のつくりにより、かかりやすい病気が複数あります。注意が必要な病気を知り、日頃から体調の変化に気を配りましょう。気になる症状があれば、早めに動物病院へ相談することが大切です。
軟口蓋過長症(なんこうがいかちょうしょう)
軟口蓋とは、上あごの一番奥にあるやわらかい部分です。通常、軟口蓋からは粘膜が軽度に垂れていますが、それが過剰に垂れるのが軟口蓋過長症です。軟口蓋が長く伸びて、息を吸う時に喉頭蓋にかぶって気道をふさいでしまう病気です。
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●症状
夜間のいびきが最も特徴的です。鼻を鳴らすような呼吸、開口呼吸、食べ物を飲み込めなくなる嚥下困難などが生じます。興奮時に症状が悪化する傾向も。重症になると呼吸困難やチアノーゼ(粘膜が紫色になる)を起こします。 -
●診断
症状と一般身体検査の結果により診断します。気管虚脱や鼻孔狭窄、喉頭虚脱といった上部気道疾患との鑑別が必要です。また、これらの病気を併発している例も多くあります。咽頭部を直接見ることが最良の確定診断法ですが、そのためには鎮静させるか麻酔をかける必要があります。 -
●治療
急性の呼吸困難を起こしている場合は、まず早急な酸素吸入や冷却、ステロイド製剤の投与などの治療を行います。完全な治癒のためには、レーザーメスや超音波メスを使用して軟口蓋を切除する手術が必要。手術後の経過はおおむね良好です。
椎間板ヘルニア(ついかんばんへるにあ)
椎間板は、頸椎から尾椎の椎骨と椎骨の間に存在し、互いに連結しています。椎間板の中心にはゼリーに例えられる髄核(ずいかく)があり、その周囲を同心円状に線維組織でできた線維輪(せんいりん)という構造が取り巻いています。髄核はショックアブソーバー(クッションの役割)として働き、外部から力が加わった場合に線維輪と協調してその圧力を支えているものです。
椎間板ヘルニアとは椎間板の髄核が線維輪内に漏出する現象で、脊髄神経を圧迫することにより発症します。ペキニーズは椎間板の髄核がもともとやわらかいため、若齢時から変性を起こしやすく、かつ外力に対してもろいという特徴をもっています。
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●症状
背筋に沿って激しい痛みがある、動きたがらずじっとしている、後肢がふらついてすぐに座り込むなどが生じます。重症になると両後肢が完全に麻痺して、前肢のみで歩くようになります。 -
●診断
身体検査をし、病変の存在を推測した部位に合わせてX線検査を行います。 -
●治療
比較的軽度であれば、安静を保ち、ステロイド製剤の投与やレーザー治療などを行います。内科的治療法で改善しない場合や重度の症例では、外科手術を検討し、術後はリハビリテーションを開始します。リハビリテーションの効果があがらず、後肢の神経の疎通ができず、排尿、排便障害が残った場合は、車いすを使用することになるでしょう。
椎間板ヘルニアについて詳しく解説した記事も参考にしてください。
犬のヘルニアの症状とは?治療や予防法も解説【獣医師監修】
睫毛乱生(しょうもうらんせい)
睫毛の生える方向が角膜に向いていることで、角膜を刺激してしまう病気です。
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●症状
角膜が刺激されて涙眼になったり、角膜が傷ついたり、角膜潰瘍を起こすことがあります。 -
●診断
眼科検査で、睫毛の方向を直接確認します。またフルオレセイン染色試験で角膜に傷がないかを確認します。 -
●治療
外科的に異常な睫毛を切除したり、毛根を電気で焼いたりします。
チェリーアイ(ちぇりーあい)
眼の内側には第三眼瞼という薄い膜があり、その中に涙をつくる腺(第三眼瞼腺)があります。チェリーアイは、第三眼瞼腺が眼の外に飛び出して赤く腫れる病気です。飛び出した部分は米粒か小豆大になり、赤色をしているためチェリーアイと呼ばれます。ペキニーズなど一部の犬種は、第三眼瞼腺を支える組織が弱く、突出しやすいです。
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●症状
多くは両目に生じますが、片眼だけに生じることもあります。刺激によって流涙症や結膜炎が見られる場合もあります。 -
●診断
視診により診断します。 -
●治療
第三眼瞼腺(だいさんがんけんせん)を元の位置に戻して縫合します。
こちらの記事も参考にしてください。
犬の目の病気|早期発見につなげるポイントや予防方法を獣医師が解説
色素性角膜炎(しきそせいかくまくえん)
何らかの原因によって角膜に炎症が起き、血管新生と色素沈着が発生する病気です。ペキニーズは角膜表面の過度の露出や涙液減少、眼瞼内反(がんけんないはん)などが原因として考えられます。犬の眼が見えなくなるまで症状に気づかないことが多いです。
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●症状
角膜の色が茶色や黒っぽくなります。ドライアイなどの基礎疾患があった場合、眼をこする、しょぼしょぼする、涙の量が増えるなどの症状が見られます。 -
●診断
視診、スリットランプ検査やフルオレセイン染色試験によって角膜の状態を確認します。 -
●治療
抗炎症薬の点眼や、眼瞼内反の矯正と角膜露出の低減を目的とする手術などの外科治療を行います。原因が除去されれば経過は良好ですが、除去されない限り完治することはありません。
肩関節の脱臼・亜脱臼(だっきゅう・あだっきゅう)
肩関節が正常な位置から外れる脱臼、少しずれる亜脱臼は、一般的に激しい外傷や打撲によって起こります。しかしペキニーズなどの超小型犬では、発育不良の関節に生じやすいのが特徴です。
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●症状
前肢を使わず歩く、体に触れると痛みで鳴く、肩に触られるのを嫌がるなどの行動を示します。 -
●診断
触診やレントゲン検査を行います。 -
●治療
サポーターなどで固定することで多くの場合は回復しますが、再脱臼を繰り返す場合は手術で関節を安定させます。
ペキニーズの飼い方

最後にペキニーズを飼う上で押さえておきたいポイントを紹介します。ペキニーズの特徴・性格・かかりやすい病気などを踏まえて、過ごしやすい環境やライフスタイルを整えることが大切です。
滑りやすい床や大きな段差は対策を行う
ペキニーズは椎間板ヘルニアになりやすいので、足腰への大きな衝撃は避ける必要があります。また、激しい運動は厳禁です。全力疾走や階段の上り下りなどはできる限り防ぎましょう。
フローリングは滑ってダメージにつながりやすいので、滑りにくいマットを敷くといった対策をするのがおすすめ。段差が多いと上り下りで足腰に負担がかかるため、大きな段差をできる限り減らす工夫も有効です。
太り過ぎないよう調整する
ペキニーズは運動量が少なく太りやすい傾向にあるため、体重管理にも注意しなくてはいけません。激しい運動は避けるべきですが、全く運動をしなくて良いわけではなく、適度に体を動かすことは大切です。
フードは体重管理用も検討しましょう。早食いは肥満を招き、誤嚥などの事故にもつながりかねないので、早食いをさせない工夫も重要です。
温度管理を徹底して暑さ対策をする
ペキニーズは暑さに弱いので、過ごす環境の温度管理も徹底しましょう。高温多湿の環境は避けてください。特に夏場の散歩は熱中症に要注意。早朝・夜など比較的涼しい時間帯に行うのがおすすめです。
毛や顔のお手入れをこまめに行う
ペキニーズは毛量が多く毛玉ができやすいので、日ごろの丁寧なブラッシングが不可欠です。ピンブラシとコームを使い、できれば毎日ブラッシングを行いたいものです。また、顔のシワが多く汚れが溜まりやすいため、こまめに拭いてあげましょう。
しつけは根気強く行う
ペキニーズは賢く飼い主の言うことを忠実に守る犬種です。しかし、強情な面もあるため、しつけがスムーズに進むとは限りません。子犬期から褒めて教えるようなしつけを行い、できないことがあっても諦めず、根気強く向き合いましょう。
ペキニーズを家族に迎えようと考えている方へのメッセージ
ペキニーズについて深く知り、家族にお迎えする計画を立てよう

ペキニーズは可愛らしい見た目だけではなく、室内飼いしやすく育てやすい点も魅力の犬種です。ただし頑固なところもあるのでしつけは根気良く。またかかりやすい病気にも注意しながら健康管理を丁寧に行うことも大切です。ペキニーズを飼うことについていろいろな知識を身につけて、家族にお迎えする計画を立ててみてください。
福山 貴昭 博士