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犬の白内障とは? 発症パターンやリスク、治療法について解説【獣眼科医 監修】

犬の白内障とは? 発症パターンやリスク、治療法について解説【獣眼科医 監修】

 
梅田 裕祥 先生
横浜どうぶつ眼科
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犬の白内障は、多様な発症パターンがあります。進行すると視覚が障害されるほか、さまざまなリスクもある病気です。今回は、「横浜どうぶつ眼科」の梅田裕祥院長に、犬の白内障について、その症状や治療法についてお話をうかがいました。

プロフィール
梅田 裕祥 先生

梅田 裕祥 先生

横浜どうぶつ眼科 院長。獣医眼科学専門医(比較眼科学会)。酪農学園大学獣医学科を卒業後、都内の眼科専門動物病院で経験を積む。ACVO(アメリカ獣医眼科学専門医会)主催のBasic Science Course修了、順天堂大学大学院医学研究科を修了し、医学博士(医学)を取得。卒業後、都内眼科専門動物病院に勤務しながら、比較眼科学会理事、日本獣医眼科カンファランス(JVOC)役員、順天堂大学医学部眼科学講座の非常勤講師としても活動中。 動物とご家族の気持ちに寄り添いながら、高度な専門医療を提供することを大切にしている。自宅では4歳のミディアムプードルと、5歳・6歳の雑種猫2匹と暮らし、動物たちとの日々も大切にしている。
横浜どうぶつ眼科

目次

「白内障」とは、どのような病気?

白内障とは、どのような病気ですか?

イメージカット

獣医師 梅田 裕祥 先生

眼の水晶体という部分が濁ってしまう病気です。白内障は、進行していく病気で、混濁の程度によっては視覚に影響を及ぼします。最終的には黒目の部分が白くなってしまいますが、ここまで進行すると視覚が障害されていることが多いです。

目の構造

病気は、どのように進行していきますか?

獣医師 梅田 裕祥 先生

水晶体の濁りの程度によって、「初発白内障」→「未熟白内障」→「成熟白内障」→「過熟白内障」の4段階で進行していきます。初発白内障は、水晶体の白濁15%以下の状態を指しますが、ここまではまだ視覚があります。そこから進行すると、混濁が水晶体全体に広がり、成熟白内障と呼ばれる状態になります。成熟白内障の段階では、視覚が障害されていきます。(明るさは感じている状態)

白内障と似ている症状の病気、間違いやすい病気はありますか?

目の構造を説明する梅田先生

獣医師 梅田 裕祥 先生

水晶体の真ん中には核という部分があります。ゆで卵の黄身の部分を想像していただけると近いと思います。その核が、6、7歳くらいになると老化によって硬くなってビー玉のように見えることがあります。これを「核硬化」と言います。この状態になると、眼の真ん中が青白く見えるので、白内障を疑う方がいらっしゃいます。しかし、核硬化の場合は光を通しているので視覚が障害されているわけではありませんので、特別な治療をする必要はありません。

注意が必要なケースと視覚以外のリスクとは?

白内障の発症には、どのようなケースがあるのでしょうか?

インタビューカット

獣医師 梅田 裕祥 先生

白内障の状態で生まれてくる「先天性」と、それ以外の後発的に発症する「後天性」の大きく2つに区分されます。「後天性」には、老齢化によって発症する「老齢性」、若齢で発症することが多い「遺伝性」、そして糖尿病を罹患していることによる「糖尿病性」のケースに分かれます。
犬の場合は、遺伝性でなることが最も多いと言われています。また、老齢性によるものは進行がゆるやかなケースが多いのに対して、遺伝性(特に若い犬)と糖尿病性はわずか数週間で初発白内障から成熟白内障の状態になってしまうほど進行が非常に早いので、特に注意が必要です。

白内障は進行すると、視覚が障害される以外に、どのようなリスクがあるのでしょうか?

獣医師 梅田 裕祥 先生

白内障は、進行すると眼の中で炎症を起こしてしまいます。
水晶体はビニールのような膜で覆われていますが、病気が進行すると、水晶体の中の水分が膨張し、膜からその水分が滲み出してしまいます。水晶体内の水分は、生まれた時から膜に覆われていて、水晶体の外に出ることがないので、病気をきっかけに水晶体の外に出ることで、体が水晶体中の水分を異物だと認識して、免疫反応で攻撃してしまうのです。この炎症によって、緑内障や網膜剥離を引き起こすリスクが高くなります。白内障だけではなく、そこから合併症に繋がる危険性があるところが、この病気の注意すべき点です。

Point特に重要な合併症

①緑内障

視神経が圧迫・障害されることで、視野の一部が欠けたり狭くなったりする病気。進行すると、視覚が障害されることもある。

②網膜剥離

眼球の内側にある網膜が、本来の位置から剥がれてしまうことによって、視覚異常を引き起こす病気。進行すると、視覚を障害されることもある。

犬の目の病気|早期発見につなげるポイントや予防方法を獣医師が解説

白内障を治す方法とそのベストなタイミングは?

インタビューカット

白内障は、どのように治療するのでしょうか?

人口レンズの説明をする梅田先生

基本的には、適切な時期に手術をするしか治療法はありません。 手術の内容も使う機材も、人の白内障手術と変わりません。水晶体の真ん中を切り抜いて中身を取り除き、代わりに犬用の眼内レンズ(人工レンズ)を入れて、内側から固定します。

インタビューカット

手術以外の治療方法はないのでしょうか?

質問に答える梅田先生

年齢的に手術に耐えられない場合や、全身麻酔をかけることができないケースの場合は、手術をしない内科治療も検討します。しかし、その場合は白内障の進行を抑えるための治療ではありません。合併症のリスクを下げるために、眼の炎症をできるだけ抑えるという観点から、抗炎症薬の目薬を処方して、継続的に使っていただきます。

白内障のための目薬は存在しますが、これは進行が遅い老齢性白内障の初期にのみ適用されます。進行を遅らせることができるという確実なものではないので、サプリメントのような感覚で使っていただくようにご説明しています。

目薬を使っていることで安心してしまって、手術のタイミングを逃してしまうこともあるので、使用する場合は、目薬の役割と手術の重要性をきちんと理解しておくことが大切です。

手術室の様子

手術をするのにベストなタイミングはいつでしょうか?

質問に答える梅田先生

視覚障害が出始めた成熟白内障初期の段階で、且つ、炎症がまだ起きていないタイミングが望ましいです。手術をしても5%~10%の合併症のリスクは残りますが、手術をしたほうが眼を守る確率が高いという結果が出ているので、未熟白内障までの段階で病状を把握し、進行を観察しながら適切な時期に手術をするのがベターです。
人の白内障では、眼が見えている状態で早めに手術する傾向にありますが、犬の場合は視覚がある状態で合併症のリスクを背負わせるよりも、視覚障害が出て手術をする流れのほうが良いと思います。

予防や早期発見のために、家庭でできることはある?

インタビューカット

白内障を予防するための対策はありますか?

質問に答える梅田先生

残念ながら、白内障には予防策がありません。 老齢性白内障の場合、進行をゆるやかにするために白内障用の目薬を使うのはよいと思いますが、それによって治るわけではないことと、目薬が予防にはならないことをご理解いただけたらと思います。

子どもの頃にアルギニンが欠乏すると白内障になりやすいことが報告されているので、ミルクはきちんと栄養のあるものを選ぶとよいと思います。また、高齢犬の健康維持という意味では、抗酸化作用があるサプリメントを選ぶとよいと思います。

早期発見のためにできることはありますか?

質問に答える梅田先生

白内障は水晶体の奥の方でなることが多いので、初期段階にご家庭で気づくことは難しいと思います。ひとつのシグナルとしては、眼をよく瞑っていたり、しょぼしょぼさせていたりする場合、眼の中で炎症が起きている可能性が高いでしょう。その場合は、早めに病院で診てもらってください。動物病院でも、眼科が得意な先生ならより詳しく診てもらえると思います。

また、眼科が得意な先生でしたら、眼の病気のリスクをよく知っていると思うので、ドッグドックの中に眼科項目を入れているケースも多いと思います。検診内容を確認したり選ぶときの基準のひとつにしたりするのも良いのではないでしょうか。

犬の白内障について
梅田先生からのメッセージ

クオリティ・オブ・ビジョン(視覚の質)を守りたい

動物は視覚だけではなく聴覚や嗅覚などあらゆる感覚を使って行動しているので、片目に視覚障害が起こっても、わかりやすい変化がほとんど見られません。行動に異常を感じて来院した時には、両目の視覚がないこともしばしばです。

もちろん、視覚に異常が起こる原因は白内障だけではありませんが、緑内障や網膜剥離も白内障がきっかけとなって発症する可能性があることを理解しておくことは大切です。

そして、白内障になってしまったら、しかるべきタイミングで手術をするのが、今の最善の治療法であることを知っておいていただけたらと思います。

獣医師 梅田 裕祥 先生

取材にご協力いただいた病院

神奈川県 横浜市磯子区
梅田 裕祥 先生
横浜どうぶつ眼科
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横浜どうぶつ眼科 院長。獣医眼科学専門医(比較眼科学会)。酪農学園大学獣医学科を卒業後、都内の眼科専門動物病院で経験を積む。ACVO(アメリカ獣医眼科学専門医会)主催のBasic Science Course修了、順天堂大学大学院医学研究科を修了し、医学博士(医学)を取得。卒業後、都内眼科専門動物病院に勤務しながら、比較眼科学会理事、日本獣医眼科カンファランス(JVOC)役員、順天堂大学医学部眼科学講座の非常勤講師としても活動中。動物とご家族の気持ちに寄り添いながら、高度な専門医療を提供することを大切にしている。自宅では4歳のミディアムプードルと、5歳・6歳の雑種猫2匹と暮らし、動物たちとの日々も大切にしている。

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