愛犬と暮らしていたら、病気やケガ、加齢などでの投薬は避けては通れないこと。犬の投薬ガイドでは、獣医師の守下 由美子先生に実践を交えて解説していただきました。①基本と飲み薬、②点眼・点耳薬、③塗り薬・予防薬の全3回でお届けします。今回は特に扱いが難しく悩むペットオーナーさんが多い、②点眼・点耳薬のポイントや気をつけるべきことについてご紹介します!
基本と飲み薬は こちら

守下 由美子先生
船橋どうぶつ病院
目次
まずは犬の点眼薬の基本とコツについて解説していただきます!
続いて、犬に点眼薬をさす方法について、守下先生に伺いました。
犬に点眼薬を使うときのポイントは?

点眼薬は、さまざまな眼疾患、身近なものですと結膜炎・角膜潰瘍・ドライアイなどの治療に使用されます。ただし、犬は顔を触られるのを嫌がる子が多いので、できるだけリラックスした状態で、素早く点眼することが重要です。
犬に点眼薬をさす方法を教えてください

犬の点眼薬をスムーズにさすためには、次のステップを意識しましょう。
<点眼薬の正しい使い方>
1. おやつをあげたり、優しく声をかけたりして犬をリラックスさせる
2. 目の周りの汚れを軽く拭いて取り除く
3. まぶたを優しく持ち上げ、後ろから点眼する
4. 点眼後は目をこすらせないようにする
正面から点眼しようとすると犬が怖がるため、できるだけ後ろからそっとさしてあげるのがコツです。もし2種類以上ある場合は、1つ1つの間隔を5分以上開けて投与してください。
点眼薬を嫌がる場合の対策は?

犬が点眼薬を嫌がる場合は、事前におやつを見せて安心させる、冷蔵保存の目薬は30分ほど室温に戻してから使うなどの工夫をすると良いでしょう。点眼薬の蓋を開ける音で気がつく子もいるので、同時に蓋も開けておくのがおすすめです。また、点眼後すぐにご褒美をあげると、少しずつ慣れてくることが多いです。
点眼薬は液状タイプ以外にもあるのでしょうか?

一般的に想像するのは液体のものだと思いますが、眼軟膏もあります。難易度はそこまで液体タイプと変わりませんが、犬にとっては違和感が残る子もいると思います。カーペットに擦り付けたり、引っ掻いたりして、本来の治療以外の傷がついてしまうこともあるので、心配な場合はかかりつけの動物病院に相談してください。ただ液体タイプよりも投与回数は減るので、そういった意味では管理がラクになると思います。
どうしても嫌がる場合はどのように対策すれば良いですか?

嫌がってしまう子には場合によって口輪を使うこともあります。 ですが極力ストレスをかけずに行うことが最適なのでご家族がいらっしゃるかたは協力して一人が抱っこしてあやしたり、顔を押さえずに点眼薬をたらすなどその子の負担にならない方法を模索する必要があります。
パグのような短頭種は口輪も使えないと思いますが、どのように対応しますか?

そうですね、短頭種の場合は目まで隠れてしまうこともあるので、口輪が使えないことがほとんどです。抱っこしながら、ゼリー状のおやつを与えつつおやつの時間と思わせた隙に、サッと行うといいと思います。目が大きいので、点眼は比較的しやすい犬種ではあります。
犬の点耳薬の基本と注意点についても解説していただきました!
次に、犬の耳の病気やケアに使う点耳薬。について、守下先生に聞いてみました。
犬に点耳薬を使うシチュエーションは?

点耳薬は、外耳炎の治療などに使用されます。特に耳のトラブルは繰り返しやすく、1年に何回もなって痛い思いをしている子もいるため、嫌な思い出になっている子も多いと思います。正しくケアすることが大切です。
犬に点耳薬をさす方法を教えてください

点耳薬をしっかり効かせるには、耳の構造を理解し、適切に薬を入れることがポイントです。
<点耳薬の正しい使い方>
1. 耳の中の汚れを軽く拭く
2. 耳をめくり、耳の穴が見えるようにする
3. 薬を適量入れ、薬が浸透するように優しくマッサージする
4. 薬が飛び散らないよう、少し落ち着かせる
耳の奥にしっかり薬を届けるため、薬を入れた後に優しくマッサージすることが大切です。注意点として、投薬後に水に触れるようなことはなるべくしないでください。例えばシャンプーをしたり、水遊びをしたりなどです。湿った状態になると悪化しやすいので、絶対にダメなわけではないですが、特別な理由がない限りは避けるのが良いでしょう。
点耳薬を嫌がる場合の対処法は?

耳を触られるのを嫌がる犬は多いので、普段から耳を優しく触る習慣をつけておくとスムーズです。また、点耳薬をさした後はすぐにおやつをあげて、ご褒美の時間にするのもおすすめです。
どうしても、耳を触られるのを嫌がる場合はどうしたらいいでしょうか?

どうしても点耳薬を投与できない場合は、かかりつけの動物病院に行ってみてください。持続作用型の点耳薬を投与できることもあります。嫌なことが毎日起きるより1回のみ病院で済ませたほうが、その子にとってもストレスがかからなくて良いはずです。
相談するときは、耳を触られるのが苦手と伝えれば、いくつか対処方法を提示してくれると思いますよ。
犬の点眼や点耳は「気を紛らわせながら素早く」がポイント!
今回は点眼・点耳薬のポイントや、使用する上でのコツや注意点についてご紹介しました。嫌な思い出にならないように、優しく声がけをしながら、美味しいもしくは楽しい思いをして投与するのがポイントでした。どうしても解決できないときには、かかりつけの獣医師に相談してみましょう。
取材にご協力いただいた病院
次回は「犬の投薬ガイド|③塗り薬・予防薬のポイント」です!軟膏や予防薬のポイントや気をつけることについて、守下先生に解説していただきます。
犬の投薬ガイド|③塗り薬・予防薬もチェック!
麻布大学獣医学部獣医学科卒業後、東京都内の動物病院に勤務し、内科・外科診療に従事。2010年から2011年にかけて日本獣医生命科学大学外科学教室にて眼科研究生として学び、専門的な知識を深める。<br /> 幼い頃から犬や猫がそばにいることが当たり前の環境で育ち、獣医師としてだけでなく、ペットオーナーとしての視点も大切にしている。ペットオーナーの気持ちに寄り添いながら、病気の治療や予防はもちろん、日々のケアや生活の悩みなども気軽に相談できる存在を目指す。どんな些細なことでも安心して相談できる先生。