愛犬と暮らしていたら、病気やケガ、加齢などでの投薬は避けては通れないこと。犬の投薬ガイドでは、獣医師の守下 由美子先生に実践を交えて解説していただきました。①基本と飲み薬、②点眼・点耳薬、③塗り薬・予防薬の全3回でお届けします。今回は最終回の③塗り薬・予防薬のポイントや気をつけるべきことについて解説した後、最後には守下 由美子先生からのメッセージもご紹介します!
①基本と飲み薬は こちら
②点眼・点耳薬は こちら

守下 由美子先生
船橋どうぶつ病院
目次
まずは犬の塗り薬の基本と正しい塗り方を教えてください。
まずは、皮膚病や傷のケアに使う塗り薬。について、獣医師の守下先生に聞いてみました。
塗り薬はどんなときに使いますか?

塗り薬は、皮膚のトラブルや術後のケア、炎症の治療などに使用します。主に以下のようなケースで処方されます。
・皮膚炎:アレルギー性皮膚炎
・傷の治療:外傷、手術後のケア
・皮膚感染の治療:細菌感染(膿皮症)、真菌感染(マラセチア皮膚炎)
特に、犬はかゆみを感じると舐めたり引っ掻いたりしてしまうため、薬を適切に塗り、保護することが大切です。
塗り薬の正しい使い方を教えてください

塗り薬を効果的に使うには、薬をしっかり患部に届かせることがポイントです。
<塗り薬を塗る際のステップ>
1. 塗布の邪魔にならないよう、患部の毛を分ける
2. 清潔な手で薬を少量とる
3. 皮膚に優しくなじませるように塗る
4. 舐めないようにエリザベスカラーや皮膚保護服で保護する
薬を塗った後、犬が気にして舐めてしまうと、効果が薄れるだけでなく、副作用のリスクもあるので、しばらくは気を逸らせる工夫をすると良いでしょう。
塗り薬を塗った後に注意すべきことは?

舐めさせないことが何より大切です。以下のような方法で対策をしましょう。
・散歩の前に塗る:歩いている間に薬が浸透する
・ご飯やおやつの時間に塗る:食べている間に気を紛らわせる
・エリザベスカラーや服を着せる:舐めるのを防止する
塗った後30分ほどは特に注意し、しっかり浸透させることが大切です。
しつけでできることはありますか?

口や耳を触れるようにするのと同様に、ごろんとさせるトレーニングをパピー期からしてあげるのが良いと思います。やっぱりシニア期から突然慣れさせるのは難しいので、地道に慣れさせてあげてください。
続いては予防薬の使い方について解説していただきます!
犬のフィラリア予防はいつからいつまでの間するのが良いのでしょうか?

フィラリア症は蚊から感染しますので、蚊が出始める4月から5月頃に予防を始めて、寒くなる12月まで続けるのがおすすめです。
これは毎月一回の投与ですか?

そうです。一般的に、家で使う予防薬は毎月投与するタイプです。ただ、メーカーさんによっては、3ヶ月や4ヶ月に1回で良いものもあります。飲み薬タイプもあるので、愛犬に合わせて選んでいただくのが良いですね。
ノミ・ダニの予防は、どのように行うのが良いですか?

ノミやダニは季節に関わらず存在しますので、犬猫共通で1年中の予防が推奨されます。特に外で遊ぶ機会が多い犬は注意が必要です。
予防薬の種類にはどんなタイプがありますか?

ワンちゃん用の予防薬には、首に塗布して皮膚から吸収させるスポット剤と、おやつ感覚で食べられるチュアブルタイプ、錠剤の飲み薬タイプがあります。スポット剤は、犬の首の後ろから肩にかけての届きにくい場所に塗布します。
具体的には、首の後ろ、肩甲骨と肩甲骨の間などが推奨される箇所です。
最後に、ペットオーナーの皆さんへメッセージをお願いします
私たち獣医師の仕事は診察して、診断して、治療して、ペットが元気になってくれること。そして、それを通じて飼い主さんも安心して、笑顔になってもらえたらと思っています。
ただ、それってこうしなきゃダメ!みたいな決まった形があるわけじゃなくて、その子の性格や、おうちでの生活スタイルに合わせたケアが大事なんですよね。だから、ペットオーナーさんにはこんなこと聞いていいのかな?。って遠慮せずに、どんなことでも気軽に聞いてほしいです。
私たちは、飼い主さんが安心してペットと過ごせるように、一緒に考えていきたいなと思っています。愛犬も、ペットオーナーも、みんなが楽しく健康に過ごせるように、いつでも気軽に相談してくださいね!
お薬問題は悩むこともあるけれど、愛犬と一緒に最適解を見つけていきましょう。
全3回にわたって、犬の投薬ガイドを守下 由美子先生に解説していただきました。ペットオーナーさんと愛犬にとって、投薬は切っても切り離せないこと。だからこそ少しずつ慣らして、お互いにストレスがなく投薬できるようになることが何よりです。少しでも不安なことがあれば、かかりつけの獣医師に相談してみましょう。
取材にご協力いただいた病院
麻布大学獣医学部獣医学科卒業後、東京都内の動物病院に勤務し、内科・外科診療に従事。2010年から2011年にかけて日本獣医生命科学大学外科学教室にて眼科研究生として学び、専門的な知識を深める。幼い頃から犬や猫がそばにいることが当たり前の環境で育ち、獣医師としてだけでなく、ペットオーナーとしての視点も大切にしている。ペットオーナーの気持ちに寄り添いながら、病気の治療や予防はもちろん、日々のケアや生活の悩みなども気軽に相談できる存在を目指す。どんな些細なことでも安心して相談できる先生。