愛犬と暮らしていたら、病気やケガ、加齢などでの投薬は避けては通れないこと。犬の投薬ガイドでは、獣医師の守下 由美子先生に実践を交えて解説していただきました。①基本と飲み薬、②点眼・点耳薬、③塗り薬・予防薬の全3回でお届けします。今回は①基本と飲み薬のポイントや気をつけるべきことについてご紹介します!

守下 由美子先生
船橋どうぶつ病院
目次
まずは犬に投薬するときの基本的なポイントを聞いていきましょう!
まずは基本的な投薬のポイントを守下先生に聞いてみました。
投薬が必要になるシチュエーションはいつですか?

犬に投薬が必要となるタイミングは、病気の予防や治療、手術後のケアなどがあります。
・病気の治療(感染症・アレルギー・内臓疾患など)
・予防薬の投与(フィラリア・ノミダニ予防)
・術後のケア(痛み止め・抗生物質)
犬にとって薬を飲むという行為自体が不快なものなので、できるだけ負担を減らし、楽しく投薬できる工夫が大切です。
薬の種類と特徴を教えてください

内服薬、つまり飲み薬としてカプセルや錠剤、粉剤、液体薬があり、外用薬として軟膏や点眼、点耳薬があります。注射薬もありますが、基本的に病院内で使用します。
投薬時にペットオーナーが気をつけることも聞いていきましょう!
投薬するときに気をつけることはありますか?

犬はペットオーナーの雰囲気を敏感に察知します。ペットオーナーが焦ると愛犬も警戒するので、緊張した様子を見せないことが大切です。明るく美味しいものだよ!。楽しいことだよ!。と声かけをすると、楽しいことと認識できるようになります。なるべく日常の動作に紛れ込ませることがポイントです。
ペットオーナーの態度も気をつけなければいけないんですね。その他にできる工夫はありますか?

投薬が終わったらご褒美におやつをあげる、ご飯の時間に合わせて投薬する、好きな遊びを取り入れて気を紛らわせるなど、楽しいこととセットにすることで、愛犬の負担を減らせます。
投薬後、何か違和感があった際に動物病院へ相談するタイミングはいつが良いでしょうか?

愛犬が嘔吐や下痢、食欲不振になるなどして、ちょっとでもいつもと違うな?。って思ったら、できるだけ早めに相談してもらうのが一番です。お薬を出した場合でも、3日続けて飲んでも効果がなければ、一度診せてもらうのが安心ですね。
わんちゃんはお散歩のついでに病院に寄ることもできるので、比較的気軽に連れてこられるかもしれません。ただ、やっぱり診察や治療のときはよく頑張ったね!。って褒めながら、楽しく通院できるようにしてあげてくださいね。
続いては飲み薬編。
まずは飲み薬の基本と投薬のコツについて解説していただきます!
投薬方法やオーナーさんが気をつけることを聞いてみましょう!
はじめに、犬の飲み薬の種類を教えてください

・カプセル
・錠剤
・粉剤
・液剤
上記が主に飲み薬として処方する種類です。
犬に飲み薬を投薬するときの方法を教えてください

投薬補助グッズやおやつを使うのがスムーズです。犬は食欲旺盛な子が多く、好きな食べ物にかけ寄ってくる特性を活かすといいと思います。
<おすすめの投薬補助グッズ>
・お薬を包めるおやつ
・投薬用のペースト状おやつ
・直接口の奥に押し込む 投薬器(ピルガン)など
<おすすめの食材>
・チーズ
・ヨーグルト
・さつまいも
・ウェットフード
薬を混ぜたり、食材に埋め込める食材がおすすめ。ただし、食物アレルギーには注意してあげてくださいね。
犬の食物アレルギーとは?原因や症状に加えて具体的な治療法や対策も解説【獣医師監修】
特にフレンチブルやパグなど、鼻の短い犬種は口の中に直接入れるのが難しいので、おやつと一緒に与えるのが安全です。
粉剤や液剤の与え方を教えてください

粉剤はお水で溶いて、液剤はそのままスポイトで与えることが一般的です。あとは必要に応じて投薬用にシリンジを病院で渡すことがあるので、それを使ってもらうこともあります。
次に飲み薬を投薬する際の、悩みの対処法を解説していただきます!
なるべく投薬時にストレスをかけない方法はありますか?

犬がストレスを感じるときは、匂いが気に入らない、味が苦いなどがほとんど。ペットオーナーさんが、いつもと違ってそわそわするのもストレスになり得ます。あとは薬の袋を開けるあけるときのカサカサ音がするだけで、ダダダッと逃げる子もいますね。極力、犬が察しないように投薬してあげてください。
気をつけていても嫌な思い出になってしまったら?

犬の場合はしつけの一環で、克服できます。おやつでご褒美をあげたり、褒めたりすることで、投薬の時間に対して良いイメージを持ってもらうことがポイント。あとは、やっぱりなるべく早く済ませてあげるのが一番ですね。
またパピー期から口周りを触ってお口をあけたり、耳をめくったりなどの触るトレーニングをしておくと、投薬がやりやすくなります。シニア期に入ってから急に変えるのは難しいこともあるので、なるべくパピーのときからトレーニングをしておくこともポイントです。
どんなに工夫をしてもどうしても飲まないときは、どうしたらいいですか?

おやつに包んでも錠剤だけ出してしまう場合は、一度かかりつけの獣医師さんに相談してみてください。粉剤や液剤に変更できる場合もあります。またピルクラッシャーといって錠剤をすりつぶせる器具を使用して粉剤状にもできます。ただし、薬によっては潰してはいけないものもありますので、いずれにしてもかかりつけの獣医師に相談してみてください。
犬の投薬の基本は楽しくて美味しいもの。としつけること
今回は投薬の基本と飲み薬の与え方について、守下先生に解説していただきました。愛犬に楽しくて美味しいイメージを持って、素早く終えることがストレスなく安全に投薬するポイントでした。どうしても解決できないときには、かかりつけの獣医師に相談してみましょう。 次回は「犬の投薬ガイド②点眼・点耳薬のポイント」です!点眼、点耳薬の投薬方法のポイントや気をつけることについて、守下先生に解説していただきます。
取材にご協力いただいた病院
犬の投薬ガイド②点眼・点耳薬のポイントもチェック!
麻布大学獣医学部獣医学科卒業後、東京都内の動物病院に勤務し、内科・外科診療に従事。2010年から2011年にかけて日本獣医生命科学大学外科学教室にて眼科研究生として学び、専門的な知識を深める。幼い頃から犬や猫がそばにいることが当たり前の環境で育ち、獣医師としてだけでなく、ペットオーナーとしての視点も大切にしている。ペットオーナーの気持ちに寄り添いながら、病気の治療や予防はもちろん、日々のケアや生活の悩みなども気軽に相談できる存在を目指す。どんな些細なことでも安心して相談できる先生。