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獣医師が教える! 愛犬の“かわいいの作り方”【デンタルケア編】

獣医師が教える! 愛犬の“かわいいの作り方”【デンタルケア編】

 
與名本 輝
日本動物医療センター
350HugQ
      

いつまでも愛犬たちにかわいくいてもらうために、ペットオーナーが知っておきたいデンタルケアのポイントや注意点はどこにあるのか?愛犬の“かわいいの作り方”を、日本動物医療センター獣医師・與名本輝先生にご解説いただきます。

プロフィール

與名本 輝 先生

東京都出身。幼少期より生き物(特に虫や動物)に対する興味が人一倍強く、小学生時代は自他ともに認める「虫博士」であった。2006年、東京農工大学獣医学科を卒業後、埼玉および東京の動物病院に勤務。2012年、日本動物医療センターに就職。現在は日本動物医療センターグループ本院の他、グループ病院の麻布十番犬猫クリニック、原宿犬猫クリニックでも診療を担当。日本動物医療センターグループ執行役員。JAHA(日本動物病院協会)認定総合臨床医。日本小動物歯科研究会所属。
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目次

見た目はかわいさたっぷり!でも愛犬のほとんどは歯周病…!?

インタビューを受けている男性獣医師

歯の健康を考えるとき、はじめに知っておいていただきたいのは、ワンちゃんの口のトラブルの原因は歯周病がほとんどだということ。人間でも30歳以上の多くの人が歯周病予備軍と言われていますが、ワンちゃんの場合、最新の報告では1歳の犬の9割が歯周病の可能性があるとされています。つまり、愛犬のほとんどが歯周病になっているかもしれないのです。

人に比べて、歯周病の進行がとても速いワンちゃん。歯周病の原因は歯垢のなかの細菌で、この細菌が歯周組織に炎症を引き起こし歯周病が進行していきます。歯垢は次第に歯石へと変わりますが、この歯垢が歯石へと変わるまでの速さが犬は人間の約5倍から7倍。人間の場合は約3週間ですが、ワンちゃんの場合は最短3日ほどで歯石に変化します。つまり、それだけ速く歯周病が進行してしまうのです。

歯周病予防の基本は、1日1回の歯磨きから。

愛犬の歯石に気づいていないご家族様も多いようですが、ワンちゃんの診察をしていると、歯石がびっしり付着していることがよくあります。歯と歯肉の間の「歯周ポケット」が歯石で埋まってしまうと、歯ブラシが奥まで届かなくなり、十分なケアができなくなります。そうすると細菌が歯周ポケットの奥で増殖し、歯周病がどんどん進行してしまいます。

歯周病を進行させないために重要なのが、歯磨き。人は1日に少なくとも2回は磨きますが、ワンちゃんの場合はどうでしょう。週1回トリマーさんに磨いてもらう、月1回は自宅で磨くという方もいれば、一度も磨いてあげたことがない、という声も聞かれます。しかし、人の5倍以上速く歯周病が進行してしまうワンちゃんこそ、しっかり歯磨きをしてあげて!とはいえ、歯磨きの回数も人の5倍以上必要かというと、さすがにそれは難しいですよね。少なくとも「1日1回は磨いてあげる」ことをご家族様にはおすすめしています。

歯磨きしている犬

歯磨きも、子犬の頃からトレーニングするのがベスト。

インタビューを受けている男性獣医師

いざ歯磨きをしようとすると、口さえ触らせてくれないワンちゃんもいます。お手やお座りと同じように、歯磨きにもトレーニングが必要です。子犬の頃から歯磨きに慣らしておくのがベストですが、歳をとってからデンタルケアの大切さに気づくご家族様が多いはず。そんなときは、段階を経て少しずつ口に触れるようにしていきましょう。歳とともに進行した歯周病は痛みをともなうことも多いので、じっくり慣らしてあげてください。

口を触らせてくれない場合、まずは膝の上に乗せてリラックスさせましょう。やさしく頭を撫でながら、次第に鼻先へ手を移動させて、マズルの上から歯をマッサージ。それも嫌がるワンちゃんは、少し触ったら褒める・おやつをあげるなど、ご褒美を与えることを何度も何度も繰り返します。ここで大事なのはタイミング。やりがちな間違いは、イヤイヤしながら時間をかけて磨いて、全部終わってから「頑張ったね!おやつをどうぞ!」とやってしまうこと。これではうまく関連づけができず、嫌がって暴れまくったらご褒美がもらえた!とワンちゃんが勘違いしてしまいます。「触れせてくれたら“嫌がる前にすぐ”ご褒美」と関連づけるのがポイントです。口を触れるようになったら、歯肉を触る、歯を触る、とワンステップずつ進めましょう。最終的には先細の歯ブラシを使って歯周ポケットの歯垢を除去することが目標ですが、毎日シートなどで磨くだけでも、ある程度の歯周病予防効果が期待できます。時間はかかりますが、歯磨きができるようになるケースもあるので、根気よく続けることが大切です。歯磨きを通したワンちゃんとのコミュニケーションが、ご家族様との絆をより深めてくれるはずです。

硬いガムや骨で歯が折れるトラブルも!程よい硬さのものを。

デンタルケアのために、ガムや骨をかじらせている方もいらっしゃるかと思います。しかし実は、「骨を噛んで歯が折れた」という事例は少なくありません。意外かもしれませんが、犬の歯のエナメル質(歯の一番外側の組織)は人間のものより弱く、硬いものをかじると、割と簡単に歯が折れてしまいます。折れやすいのは、上顎の奥歯(第四前臼歯)。折れても気づきにくい位置にある上に、ワンちゃんは口の痛みに強いため、痛みを訴えないことがほとんどです。

インタビューを受けている男性獣医師

前提として、ワンちゃんに硬いものを与えないように。ガムを選ぶ場合も、“指で押すとある程度かたちが変化する”くらいの硬さのものを選びましょう。様々な商品があると思いますが、『オーラベット』など動物病院専用のガムはおすすめのひとつ。また、万が一歯が折れたことに気づくためにも、日常的な歯の観察やデンタルケアは不可欠です。ワンちゃんは痛みを感じていても訴えられない、という認識をいつも忘れずに!

ボールを加えている犬

獣医師による定期的な歯石除去も、ケアの要。

犬のデンタル構造を説明している図

家でのケアに加えて、獣医師による歯石除去も積極的に行ってください。歯肉からの出血が見られた場合や口臭を感じた場合は、動物病院で診てもらうことをおすすめします。健康な口腔内環境では口臭はほぼありませんから、ワンちゃんの顔が近づいたときに「うっ」と感じたら、歯周病が進行している可能性が高いでしょう。

具体的な症状があらわれていなくても、1歳になったら一度、歯科検診を受けていただきたいですね。AAHA(アメリカ動物病院協会)のガイドラインによると、2歳で全身麻酔をかけて最初の歯周病治療を行い、その後は半年に1回、少なくとも1年に1回は麻酔下治療を続けることが推奨されています。無麻酔で歯石除去をしているケースも聞きますが、無麻酔では目に見える歯冠部(歯肉から出ている部分)の歯石しか除去できず、歯周病の原因となる肝心な歯周ポケットの歯垢・歯石の除去ができません。嫌がるワンちゃんを無理やりおさえて処置すると思わぬ事故を引き起こす恐れもありますし、それがトラウマになっておうちでのケアが余計に難しくなるケースもあります。何より動物福祉の観点からもおススメはしていません。嫌がらずに処置させてくれるワンちゃんもいると思いますが、そういう子は絶対におうちでのケアができるようになるはずです。前述の内容を参考に、ぜひおうちでのケアを始めてみてください!

適切な歯周病治療が、様々な全身疾患を防ぐ一助に。

歯石除去のために全身麻酔をかけることに抵抗を感じるご家族様もいらっしゃるでしょう。しかし、歯周病を適切に治療しないことが、全身の疾患につながる可能性もあります。例えば、歯周病が、腎臓病や心臓病、肺炎などの原因になりうると考えられています。実際、高齢で肺炎を患うワンちゃんの口腔環境が非常に悪い、というケースは頻繁に遭遇します。

インタビューを受けている男性獣医師

前述のAAHAガイドラインによると歯周病を放置するリスクよりも、半年ごとに麻酔をかけるリスクの方が低いとも言われています。麻酔の技術や安全性は年々向上していて、持病の悪化など命の危険につながる可能性はかなり低いので、どうぞ、過度に心配をしないでいただければと思います。しかし重い持病のあるワンちゃんなどは麻酔のリスクは大きくなりますので、当院ではすべてのケースで安全面・リスク面の可能性などを出来る限り詳細にお伝えした上で、最終的な選択はご家族様にお任せしています。仮に麻酔下での治療が出来なくても、他にもケアの方法はたくさんありますので、安心してご相談ください。

定期受診で、歯周病以外のトラブルも早期発見を。

赤外線レーザーをあてている男性獣医師

歯周病以外で超小型犬に多いのが、「乳歯遺残」。本来、生後6ヶ月程度で永久歯に生え変わりますが、乳歯遺残とは乳歯が抜けずに残ってしまう状態です。乳歯遺残による問題のひとつは、永久歯の生え方に影響を与えること。酷いケースでは、犬歯が内側に押されて成長し上顎に穴が開いてしまうこともあります。もうひとつは、歯が密集して生えてしまうために歯垢が溜まりやすく、早期に歯周病を引き起こしてしまうことです。

生後6、7ヶ月くらいまでに乳歯が抜けていない場合、専門家による抜歯が必要です。とはいえ、乳歯と永久歯を見分けることはご家族様には難しい…。だからこそ、定期的に動物病院を受診することは、乳歯遺残の早期発見にもつながります。頻繁に動物病院に通う生後3、4ヶ月を過ぎても、月1回程度は歯のチェックのために足を運んでいただきたいですね。
最後に、子犬の頃から歯の健康を守るために、フードについて少しお伝えさせてください。一般的には、ウェットよりもドライの方が歯垢はつきづらいとされています。また、歯垢の原因になりやすい炭水化物を多く含むもの、特に人の食べ物は様々な調味料・添加物が使われているので、あげすぎるのは禁物です。いつまでも愛犬に元気でいてもらうために、ぜひ気をつけてください。


與名本輝先生からのメッセージ

インタビューを受けている男性獣医師

愛犬を心から「かわいい!」と思うためには、駆け寄ってきて顔をペロペロ舐めてきたときに「うっ…」となるのは避けたいもの。「うちの子は、お花の香りがする!」くらいの気持ちでいたいですよね(笑)。そのためには、歯の健康に普段から気をつかうことが大切です。愛犬が実は、長年歯周病による痛みを感じながら生活しているとしたら、いたたまれないでしょう。でも、そんな状況はご家族様の意識次第で防ぐことができますし、むしろ歯磨きがワンちゃんとの絆をより深いものにし、お互いの生活を一層輝かせてくれるはずです。かわいい子が毎日を快適に過ごせるよう、正しい知識を持ち、適切なデンタルケアを心がけていただきたいです。そのためにも、普段から獣医師と積極的にコミュニケーションをとることをおすすめします。

日本動物医療センター

日本動物医療センターグループ

日本動物医療センターグループ本院は24時間365日対応の総合動物医療施設。24時間体制での完全看護・治療を提供し、救急救命を含む病気や怪我から、予防医療や各種健康診断まで幅広い医療に対応する。グループ病院の「麻布十番犬猫クリニック」「原宿犬猫クリニック」とも連携を取り、各地域に合わせた医療を行う。

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