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命に関わるがんを専門に診察。「家族が満足できる治療をめざして」日本小動物がんセンター・原田慶先生

命に関わるがんを専門に診察。「家族が満足できる治療をめざして」日本小動物がんセンター・原田慶先生

 
原田 慶
日本小動物がんセンター
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自由が丘動物医療センターの朴永泰(パク・ヨンテ)先生からバトンをつないでいただいたのは、日本小動物がんセンターの原田慶先生です。がんと診断された犬猫と飼い主さんに寄り添い、治療への道しるべをつくる役割を担っています。命に関わるがんを専門とする難しさや、早期発見のために必要なことをうかがいました。

自由が丘動物医療センター 朴永泰先生

プロフィール
原田 慶先生

原田 慶先生

日本小動物がんセンター・第二腫瘍科科長。2008年に北里大学獣医学部を卒業後、2012年まで一次診療の動物病院に勤務。2012年から最先端のがん治療を実践している同センターの現職。日本獣医がん学会をはじめ、獣医内科学アカデミーや日本獣医臨床学フォーラムなどで多数の講演を行い、腫瘍科の知見を広めている。

目次

腫瘍の診断から治療までの道しるべをつくる

原田 慶先生

獣医師をめざし、中でも腫瘍科を選んだ理由をうかがえますか。

動物を診る獣医師の仕事に興味をもって北里大学獣医学部に入学しました。動物はもちろん好きですが、将来を決めるようなドラマチックな出来事があったわけではないんです。在学中には病理学(細胞を顕微鏡などで見て病気の原因を追究する学問)に惹かれ、病理学研究室に所属。診断する病気は腫瘍が多かったこともあり、大学を卒業するころにはいろいろな病気を診る総合診療科ではなく、腫瘍科を選ぶつもりでした。自分の性格的に興味のある分野に絞ったほうが頑張れると思ったんです。

総合診療科と腫瘍科の違いについて教えてください。

総合診療科を含む多くの診療科では飼い主さんへの問診や動物の症状、血液検査の結果やレントゲンの所見などをもとに判断をつけますが、これらの情報だけでは診断が確定しない場合もあり、予測で診断するケースも少なくありません。一方で腫瘍科では、摘出した組織を顕微鏡で評価することで診断を確定できるため、その明確さに魅力を感じました。がん(悪性腫瘍)は治療に命がかかっている場合も多く、獣医師になってからは責任の大きさがやりがいにつながっています。ただ、治らないことを前提に治療を行う機会も多い。だからこそ飼い主さんと動物に向き合い、最期までより良い治療を行うことが求められるため、精神的に浮き沈みが少ない自分に向いていると感じています。

原田 慶先生

原田先生には飼い主さんも安心して相談できると思いました。勤務されている日本小動物がんセンターの腫瘍科では、どのような流れで診察を行うのでしょうか。

二次診療施設(専門診療科のある動物病院)である当院には、一次診療(かかりつけ・総合診療科の動物病院)で腫瘍が疑われたり診断されたりした犬猫が紹介されて来ます。腫瘍の分野では診断から治療まで1人の獣医師が担当する動物病院が多いのですが、当院は分業体制。腫瘍の三大治療の手術・放射線・抗がん剤はもちろん、レントゲンや超音波、CT、MRIなどの画像診断も専門とする獣医師が行います。

腫瘍科の中でも先生方で分業しているわけですね。原田先生はどのような役割を担っているのでしょうか。

自分は診断から治療までのコンサル的な役割です。腫瘍の犬猫を診察し、必要な検査をまとめて今後の道しるべをつくり、生検(組織や細胞を採取して顕微鏡などで見る検査)などを行って結果を回収し、各科の獣医師と相談して飼い主さんに治療を提案します。

がんはたとえ治せなくても治療の選択肢がある

原田 慶先生

さまざまな地域の動物病院で腫瘍科外来も行っているそうですね。

一次診療の動物病院は基本的に全科を診るので、獣医師が専門診療科の勉強をしにくい状況にあります。不調に対して治療をしても治らない、検査をしても診断が出ない、という場合には、専門的な知識や経験が必要になるので、自分がサポートできたらと思っています。このような難しい病気はがんであることが多いからです。実際に一次診療で原因がわからず、当院でも診断がつく病気でがんは多いです。

専門診療科をもたない動物病院では、がんの診断や治療が難しいということでしょうか。

動物病院は一次診療(かかりつけ)と二次診療(専門診療)の役割に分かれ、一次診療の病院がプライマリ・ケアを担い、治らない場合に二次診療の病院を紹介するシステムになっています。しかし、関東地方のように二次診療の病院が充実している地域ばかりではなく、医療格差が生まれているのが現状です。また、規模の大きな病院であっても、腫瘍を専門とする獣医師がいるとは限りません。

すべての動物病院の獣医師が専門的な知識をもつに越したことはありませんが、総合診療科とはいえあらゆる病気を診るのは極めて難しいでしょう。だからこそ、確実な診断と適切な治療を提案できるよう、自分は各地の動物病院で腫瘍科の診察や症例検討などの相談を受けています。

原田 慶先生

がんと診断された動物の治療を行うにあたって、心がけていることはありますか?

まず前提としては動物の治療に関しては全力を尽くすことです。ただし自分が意識しているのは、患者である犬猫の飼い主さんに満足してもらうことです。獣医師によって考え方は違うと思いますが、究極的には治療が上手くいくか、正しいかはやってみないとわからないところがあるため、ご家族が満足できるかどうかが重要です。飼い主さんにいろいろな治療法を挙げたうえで、より良いと考える治療方針をフラットに話すように心がけています。

ただ、当院には根治を期待して来院される飼い主さんが多く、「可能性に賭けてとことん治療をしたい」という方もいるんですね。希望をかなえたいものの、根治の可能性が極めて低く、手術中に高確率で亡くなる恐れがある場合にはおすすめしないこともあります。

飼い主さんの気持ちを踏まえ、犬猫にとってより良い治療を選びたいですね。

「原田先生ならどうしますか?」とよく聞かれるんですよ。自分は必ず伝えることが2つあります。1つは治療のコンセプト。「こういう理由で選ぶ・あるいは選ばない」と説明します。もう1つは、自分の考えは愛犬・愛猫と暮らしてきた飼い主さんとは前提が違うこと。獣医師として手術のリスクや抗がん剤の副作用を理解しているから、治療中に亡くなったとしてもやむを得ないと割り切れますが、飼い主さんが同じように思えるかどうか。命を天秤にかける治療の選択は簡単ではありません。治らないことを受け入れ、より良い終わりを考えることも大切です。

健康診断で腫瘍を早期発見できれば根治をめざせる

原田 慶先生

腫瘍診療の最前線に立つ原田先生の立場から、健康診断の重要性をお聞かせください。

犬猫の腫瘍は人の腫瘍より発見が遅いことが多いです。飼い主さんが症状(兆候)に気づいた段階でようやく診察につながるため、根治をめざす治療が間に合わないんです。健康診断によって早い段階で腫瘍を見つけ、早めに治療を始められれば、手術で根治をめざせることも事実。犬猫の健康診断に価値があると思っているんですね。少なくとも腫瘍が進行して体調が悪くなった状態よりも、治療の選択肢が増えることは間違いありません。

人では健康診断が病気の早期発見に役立っていないという報告もありますが、犬猫の場合は症状に気づく前に早期発見ができるのがメリットでしょう。自分が当院で働き始めた14年前と比べて、健康診断で異常が見つかって来院する犬猫は明らかに増えました。

腫瘍の早期発見のためには、健康診断をどのくらいの頻度で受けるのが理想でしょうか。

一般的に犬猫の健康診断は1年に1回といわれています。犬猫の腫瘍は人よりも成長速度が速いので、年を重ねたら半年に1回をおすすめしたい。ただし、3ヶ月前になかった腫瘍が破裂するほど大きくなるケースもあります。

がんを見つけるためには、レントゲンや超音波検査も行わなければわかりません。血液検査だけでは発見できない病気はたくさんあります。人の健康診断や人間ドックだって、いろいろな検査を行いますよね。

原田 慶先生

最後に、飼い主さんへのメッセージをお願いします。

愛犬・愛猫ががんと診断されたとき、どのように向き合っていくかは、ご家族によってさまざまな考え方があります。かかりつけの先生とよく相談し、納得したうえで決めていただければと思います。そして腫瘍は早く見つかるほど治療の選択肢が増えます。まずは健康診断から始めてみてください。

日本小動物がんセンター・原田慶先生のバトンの回答

質問をする朴先生朴先生

Q. 健康面への対策をしていますか?

質問に答える原田先生原田先生

あまりしてないです(笑)。朴先生は体を鍛え始めたと聞いていますが、自分はがんばっていないとしか答えようがないですね。つい暴飲暴食もしちゃいますし……。健康診断の結果が去年より悪くならないようにするのが目標です。

質問をする朴先生朴先生

Q. ここから先の自分のキャリアの目標は何かありますか?

質問に答える原田先生原田先生

当院では2年前に建物を新しくし、新薬の治験や研究もできるようになりました。腫瘍を専門とする獣医師は少ないので、正しい知識を啓発し、治療の選択肢を増やせる施設にしていきたいと考えてます。がんで困っている飼い主さんに、われわれだからこそできる正確な診断や適切な治療を届けるのが目標です。

質問をする朴先生朴先生

Q. 腫瘍科の原田先生から見て、内視鏡外科をどう思いますか?

質問に答える原田先生原田先生

実は腫瘍の分野では内視鏡外科の出番が少ないんです。内視鏡の機材と技術がなければ手術ができず、低侵襲(体への負担が少ない手術や検査)より治ることが最優先にされているからではないでしょうか。症例は少しずつ増えているとはいえ、腫瘍科も内視鏡外科も発展段階。朴先生にはがんばっていただきたい。

佐久平マール動物病院 土屋先生へのバトン

Q1.土屋先生の現在の最も興味があるもしくは力を入れていることは何ですか?(仕事以外含め)
Q2.土屋先生の今ハマっているリフレッシュ方法は何ですか?
Q3.もし獣医師以外の職業に就くとしたら、やってみたい仕事はありますか?

日本小動物がんセンター

日本小動物がんセンターの外観

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