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動物のための内視鏡手術を探究し、技術を磨き広めていく 自由が丘動物医療センター 朴永泰(パク・ヨンテ)先生

動物のための内視鏡手術を探究し、技術を磨き広めていく 自由が丘動物医療センター 朴永泰(パク・ヨンテ)先生

 
朴 永泰
ベックジャパン動物病院グループ 自由が丘動物医療センター
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東京動物皮膚科センター/神宮前動物病院の大隅先生からバトンをつないでいただいたのは、東京都自由が丘にある「自由が丘動物医療センター」の朴永泰先生です。動物の腹腔鏡・胸腔鏡の領域を極めている朴先生に、これまでの歩みや大切にされていること、内視鏡手術の魅力についてお話をうかがいました。

東京動物皮膚科センター/神宮前動物病院 大隅尊史先生

プロフィール
朴 永泰先生

朴 永泰先生

Ve.C.動物病院グループ総院長/自由が丘動物医療センター院長。ESVPS公認小動物外科学認定医、博士(獣医学)。北里大学卒業後、大阪の動物病院や救急動物病院での勤務を経て、北里大学大学院で腹腔鏡手術の研究に取り組み2018年に博士号を取得。2015年よりVe.C.動物病院グループに参加し、自由が丘動物医療センターを拠点に犬猫の腹腔鏡・胸腔鏡手術の普及と指導に力を注ぐ。

目次

大学時代に偶然出会い、これだ!と確信した内視鏡外科

朴 永泰先生

まずは、朴先生が獣医を目指したきっかけを教えてください。

小学生のときに、親がうさぎをプレゼントしてくれて、兄と私で1羽ずつ世話していました。私が世話していたうさぎは少し病弱で、なんとか診てもらえる動物病院を探して隣町まで足を運んだのですが、最終的には回復することなく亡くなってしまいました。

その時に担当してくださった先生には感謝しているのですが、「うさぎの医療はまだ発展途上だからね」と言われたのが、小学校3年生の私にはとてもショックで。それなら、うさぎを診ることができる、うさぎの病気も治すことができる獣医になろう、と心に決めました。

その後、いくつものハードルを突破して、北里大学獣医学部に入学したんです。倍率も高かったので、合格できたよろこびは大きかったです。それと同時に、学ぶための切符を手にしたからには、ただの獣医で終わるわけにはいかないという気持ちも芽生えました。

子どもの頃の目標をまっすぐに叶えたのですね! 朴先生は、獣医学の中でも特に内視鏡外科がご専門かと思いますが、その分野にご興味を持ったのには、どんなきっかけがあったのでしょうか?

内視鏡外科との出会いは、大学4年生の頃。2006年くらいのことですが、夕方のニュースで最先端の医療技術として人の内視鏡手術が取り上げられていました。ビデオモニターを見ながら手術をする手法で、開腹手術よりも傷が小さく、患者への負担も少ないので回復も早いという特徴が紹介されていて、興味深く思っていました。

手術の手法に加えて、医師が語っていたのは、トレーニングの難しさ。テレビゲーム世代じゃないから、コントローラーなどに触り慣れていないことを課題として挙げていたんです。その点で私は、バリバリのゲーマー。子どもの頃から当時人気のゲームに没頭していたので、私には内視鏡が向いているに違いない、私のためにある手術ではないかと安易に思ってしまったんです。

それで、5年生で研究室に入った時に、卒業論文のテーマは内視鏡外科でいきたい、と強い意志を教授に伝えました。当時、内視鏡手術は人の医療では少しずつ増えてきた頃でしたが、動物医療ではごくごく一部。お世話になっていた教授も内視鏡外科の経験はありませんでしたが、興味はお持ちだったので私の研究テーマを受け入れてくださいました。
そして、幸運が重なり、獣医学の内視鏡外科の第一人者として活躍されていた先生と知り合って、指導を受けることができたことで腹腔鏡手術の研究を進めることができたんです。環境にも運にも、本当に恵まれていたと思います!

質問に答える朴 永泰先生

卒業後は、内視鏡手術をやっている病院に?

卒業後は大学時代に指導を受けていた先述の第一人者の先生の病院に就職したのですが、私と同じように学びたい研修医が他にもたくさんいたので、経験を積むのが難しい環境でした。いろいろと考え直した結果、一度内視鏡外科を離れる決断をしました。そこで改めて、一般臨床の経験を積むことを決意したのです。その中で、開腹手術や救急医療など、さまざまな症例を経験することができました。今振り返っても、この選択は本当に良かったと思っています。

一般臨床の経験を積むと決意したタイミングで、大学時代にお世話になった教授からありがたいお声がけをいただきました。臨床医は続けつつ、研究員として大学に籍を置くことにしたのです。そこで論文を発表し、博士号を目指すという新たな目標ができました。教授からのアドバイスで、まずは日々の診療の中で出会った症例を論文にまとめることから始めました。すると奇遇なことに、記念すべき最初の論文となったのは、私が獣医師を志す原点でもある『うさぎ』の治療法についての報告だったのです。

名医による小児の腹腔鏡手術に学び、動物医療に生かす

内視鏡手術の様子を見せる朴先生内視鏡手術の様子を見せる朴先生

そこからまた、内視鏡外科の世界に戻ってくるタイミングが訪れるんですよね?

2015年に縁あって、今勤めているベックジャパン動物病院グループに移りました。当時はまだ一般臨床のみだったのですが、「頑張って盛り上げるので、売り上げが立ったら腹腔鏡手術ができる環境を作ってください」とお願いして、数年後に約束通り作ってもらったのが、この自由が丘動物医療センターです。

とはいえ、設備だけで内視鏡手術ができるわけではありません。そこから本格的に技術を磨くターンに入りました。動物を使わないトレーニングはもちろんですが、休日には人の病院に学びに行き、その流れで人の腹腔鏡手術のアシスタントをしていた時期があります。

そのタイミングで、これまた運良く小児外科の名医とのご縁に恵まれました。私は、赤ちゃんと小さな動物の手術には通じるものがあると思っていたので、手術を学びたい旨を直接お伝えさせていただき、快諾いただけたことがきっかけとなりました。

質問に答える朴 永泰先生

朴先生の本気を、運が後押ししているようなエピソードですね。

小児外科の名医の手術を見せていただいて、金槌で殴られたような衝撃を受け、それまでの自分のあり方すべてを反省しました。というのも、先生の手術は、組織を掴む、針に糸を通す、糸を縛る力加減など、その一つひとつに「目の前の命のその先80年がかかっている」という重みがありました。

プロフェッショナルの仕事を目にして、技術はもちろんですが、患者さんとの向き合い方や医療への取り組み方も含めて色んなことを見直す機会になりました。加えて、動物医療はもっと厳しくあるべきだとも思いました。

そうやって先生から学んだことを持ち帰り、動物への手術に落とし込みながらひとつ一つ実現するということをやり続けていた数年。気が付いたら、獣医学の中で内視鏡外科の獣医師になっていた、という感じです。今でも、なにか壁にぶつかったり立ち止まったりすると、小児外科の名医である先生ならどうするだろう、と考えます。

動物医療における、内視鏡外科の認知度と魅力

朴先生が大学時代に内視鏡外科と出会った頃に比べると、世の中での認知度も高まってきたと思いますが、いかがですか?

そうですね。人の内視鏡手術は当たり前になりつつあって、ご家族や友人知人の中に腹腔鏡手術を受けたという人がいる、というくらい一般的になっています。実体験として傷口の小ささや回復の速さを耳にする機会が増えたことで、動物にも腹腔鏡手術ができないか、とお問い合わせをいただくことが多くなりました。

獣医学の領域ではまだまだ発展途上ですが、それでも内視鏡手術の方が動物にとってもメリットが多いということは明らかになっています。

具体的に内視鏡手術は開腹手術と比べると、どのようなメリットがあるのでしょうか?

内視鏡を用いた外科手術の最大のメリットは、動物への身体的ダメージが最小限で済むことです。例えば開腹手術では大きくお腹を開く必要がありますが、内視鏡であれば5mm程度の穴を数個開けるだけで済みます。局所麻酔を併用することで、手術当日に自分で歩いて帰ることができるほど負担が少ないのです。また、熟練すれば開腹手術と同等以上のクオリティの手術を、より短時間で終えることが可能です。これからますます、動物病院でも必要性が高まっていくと思います。

入院なしで日帰り手術ができるのは、わんちゃん・ねこちゃんの負担軽減はもちろんペットオーナーの心理的負担も軽減しそうですね。ちなみに、内視鏡手術には向き不向きがあるのでしょうか?

内視鏡手術は、小さいものや奥深くにあるものを取り出すのに向いています。4Kなどの高画質モニターで、お腹の奥深くにある小さな病変を大きく綺麗に拡大して見ることができるため、非常に繊細で精密な手術が可能なのです。特に、初期段階や無症状の状態で早期発見できると、傷を最小限に抑えた手術で治療を行うことができ、身体のダメージを最小限に抑えることができます。取り出す部分が小さければ、胆嚢や副腎、腎臓、尿管、膀胱など、お腹や胸のほとんどの臓器の手術において内視鏡の技術を活かすことができます。
そのため、健康診断との相性が抜群です。健康診断で病気が見つかっても、本人はまだ無症状で元気という場合、内視鏡であれば負担を最小限にして治療を終えられる可能性も出てきます。ぜひ、定期的な受診をしていただけるといいなと思います。

早期発見・早期治療がやはり重要ですね。病気以外でも内視鏡手術が活用されるケースはありますか?

手術の中でも最も多い避妊手術は、内視鏡手術の初歩として非常に適しています。最小限の傷で行える手術であることから、動物への身体的負担が少なく、術後の回復が早いなどの利点があるため、私は「世の中の避妊手術がすべて内視鏡になればいい」と願っているほどです。

さらなる動物医療の進化のために、楽しみながら探究・伝授していく

質問に答える朴 永泰先生

朴先生は、動物の内視鏡手術を教える活動にも力を入れていらっしゃいますよね。

内視鏡手術が可能な動物病院はどうしても都心に多く、地方での普及が伸び悩んでいるのですが、その理由は技術を教える人や当たり前にする人がいないからではないかと思っています。動物にとっていい技術は、普及すべきです。だから、学びたいと思ってくださる方がいれば、休日は全国各地、時に韓国など国外にも足を運んで、内視鏡手術を指導しています。

これまで、リアルだけでなくオンラインでの指導や個別指導、ディスカッションの機会など、さまざまなメニューを開催しています。そこで出会った仲間たちとは、その後も学術論文を一緒に書いたり、症例を共有したりと活動の幅を広げています。

これからもこういう活動を続けていって、できるだけ多くの動物病院で手術が対応できるようになるといいなと願っています。

質問に答える朴 永泰先生

臨床で多くの患者さんを診察し、技術指導も積極的に行いながら、今も論文を発表し続けていらっしゃいますよね。

動物の内視鏡手術は、広く受け入れられるようになってきたとはいえ、まだまだ。症例数を重ねている獣医師もまだ少ないので、ありがたくもその機会を多くいただいている者としては、積み重ねた結果何が見えたのかを披露する必要はあると思っています。また、今までは方法も器具も人の手術で使うものをベースとしていましたが、そろそろ動物医療独自の道を歩むタイミングに差し掛かっているとも感じています。

私たち獣医師は、科学者です。仮説を立てて、実証して、わかったことを共有する。その繰り返しが動物医療を進化させていきます。そうやって努力を重ねた先で、次なる挑戦を許されるとも思っています。そして、飼い主さんにいただいた「ありがとう」が最大の原動力となって、「やってきてよかった」、「また頑張ろう」と奮い立たせてくれるんです。仲間たちと議論するのも楽しくて、飽きないんですよ。もっと知りたいし、もっとやりたいと常に思っています。

質問に答える朴 永泰先生

最後に、飼い主の皆さんにメッセージをお願いします。

ここまでお話ししてきたように、内視鏡手術は動物たちの体への負担を最小限に抑えられる、本当に素晴らしい治療の選択肢です。そして、この『小さな傷・負担で済む』という内視鏡のメリットを最大限に活かすには、病気を初期段階や無症状のうちに見つけることが何より重要になります。だからこそ、内視鏡手術は定期的な健康診断との相性が抜群なのです。大切な家族を守るために、ぜひ日頃の受診を心がけてみてください。

あとは、動物はひとりの主治医に診てもらうケースが多いと思います。信頼できる主治医がいるのはとてもいいことなのですが、獣医師も大抵の場合、それぞれに専門性や得意分野があります。ひとつの病院で解決しようとせず、セカンドオピニオンとして専門的な施設や獣医師に相談に行くのもアリだと思います。診療にも治療方法にも選択肢があるということを、知っていただけたら嬉しいです。

今はちょっとした心配事はAIアプリで聞く人も多いと思いますが、まだまだそこに知見のすべてがあるわけではありません。医療は常に進化していますから、ぜひリアルな診療を受けにきていただけたらと思います。開腹手術、開胸手術が必要だと言われた場合も、内容によっては内視鏡手術が可能な場合があります。ぜひ、お気軽に相談してくださいね。

自由が丘動物医療センター・朴永泰先生のバトンの回答

質問をする大隅先生大隅先生

Q. オトスコープと腹腔鏡・胸腔鏡との共通項や相乗効果はあると思いますか?

質問に答える朴 永泰先生朴先生

どちらも内視鏡手術ですが、テクニックの共有はあまり行われてないですね。空間がない耳の中で行われることは、腹腔鏡・胸腔鏡にも活かせることがあるような気がします。逆もあるかもしれませんよね。一度、そのあたりを話してみたいですね!

質問をする大隅先生大隅先生

Q. ラパロ(腹腔鏡)以外の趣味はありますか?

質問に答える朴 永泰先生朴先生

非常に難しい質問ですね(笑)。趣味、動物医療! なので。仕事と趣味の境界線がないんだと思います。もちろん、リフレッシュでゲームをやったり、体づくりのためにジムで運動したりすることはあるのですが、それもあくまで医療のためなので。答え、「ない!」ですね。

日本小動物ガンセンター 原田先生へのバトン

Q1.健康面への対策を何かしてますか?
Q2.ここから先の自分のキャリアの目標とか、ありますか?
Q3.内視鏡外科って腫瘍科の人からみてどう見えますか?

ベックジャパン動物病院グループ 自由が丘動物医療センター

自由が丘動物医療センターの外観

東京都 目黒区
朴 永泰
ベックジャパン動物病院グループ 自由が丘動物医療センター
0ハグポイント

Ve.C.動物病院グループ総院長/自由が丘動物医療センター院長。ESVPS公認小動物外科学認定医、博士(獣医学)。北里大学卒業後、大阪の動物病院や救急動物病院での勤務を経て、北里大学大学院で腹腔鏡手術の研究に取り組み2018年に博士号を取得。2015年よりVe.C.動物病院グループに参加し、自由が丘動物医療センターを拠点に犬猫の腹腔鏡・胸腔鏡手術の普及と指導に力を注ぐ。

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