LINE友だち募集中 LINE友だち募集中
犬の認知症とは? よく見られる症状と動物病院での対処、家庭でできるケアについて解説【獣医行動診療科認定医 監修】

犬の認知症とは? よく見られる症状と動物病院での対処、家庭でできるケアについて解説【獣医行動診療科認定医 監修】

 
小澤 真希子
日本大学動物病院 ANMEC
0ハグポイント
      

高齢期になると、犬も人と同様に身体機能に変化が訪れます。そして、老化現象のひとつとして起こる可能性があるのが、認知症。一緒に暮らす中で、いつもとはちがう現象が起こると、最初は戸惑いもあるかもしれません。どうしていいかわからず、気持ちが落ち込んでしまうこともあるでしょう。しかし、認知症そのものを知って、その対処法がわかれば、犬とともに暮らす日々を心地よくすることができます。今回は、動物の認知症について数多くの研究を重ね、獣医行動診療科認定医として臨床でも活躍する日本大学の小澤真希子先生に、認知症についての基本的なこと、動物病院での治療や予防対策について、お話をうかがいました。

監修者プロフィール
獣医師 小澤 真希子 先生

小澤 真希子 先生

日本大学 生物資源科学部 獣医保健看護学科 専任講師。東京大学大学院卒(獣医学博士)。同大学の獣医動物行動学研究室および獣医病理学研究室での研究及び動物病院勤務を経て、獣医行動診療科認定医を取得。現在は、大学で教鞭をとる傍ら、大学の附属動物病院にて、犬と猫の問題行動や老齢動物の認知症診療を担当している。「獣医学に基づく診断と治療を通して、ペットとご家族がお互いに幸せになれるようサポートしたい」という思いを胸に、専門的な知見から丁寧なカウンセリングと治療を行っている。

日本大学動物病院 ANMEC

目次

犬の認知症とは、どのような状態?

イメージ

認知症とは、どのような状態なのでしょうか?

獣医師 小澤 真希子 先生

認知症とは、高齢期の脳機能の低下によって、今までできていたことができなくなってしまっている状態のことを指します。脳腫瘍や脳梗塞など、老化以外の原因によって起こる症状については、本ページで扱う認知症とは区別して考えます。

目立つ症状は記憶や判断力の低下ですが、合わせて気持ちのコントロールができなくなる情動面の低下や、運動機能の低下にも繋がります。

年齢的には、13歳くらいから注意していただくのがいいと思います。

認知症の原因には、どのようなものが考えられますか?

獣医師 小澤 真希子 先生

認知症を引き起こす要因のひとつは、老化です。

加齢によって脳が萎縮することが、脳機能の低下に繋がっていると考えられます。

脳の萎縮は体内の刺激や情報をキャッチして全身へ伝達する神経細胞が異常に消失することで起こります。また、加齢によって、脳に異常なタンパク質がゴミとして蓄積することで、脳機能の低下に関わるさまざまな現象が起こります。ただし、これらの変化が認知症の直接的な原因かどうかは、まだ明らかになっていません。

犬の認知症は、研究途上の分野。研究自体は進んでいますが、自然現象なのか病気なのかすらも、まだはっきりと定義することはできていないのです。

認知症によく見られる症状とは?

イメージ

認知症になると、どのような症状が現れますか?

獣医師 小澤 真希子 先生

〈 DISHAA 〉と呼ばれる代表的な認知症の6つの徴候をご紹介します。

PointDISHAA:認知症の6つの徴候

  • 1.見当識障害:Disorientation
    ・自分が置かれている場所がどこだかわからなくなる
    ・間違えて狭い場所に入ってしまう
  • 2.人や動物との関わりの変化:Social Interaction
    ・甘えなくなる
    ・挨拶行動を繰り返す
  • 3.睡眠サイクルの変化:Sleep / wake cycle
    ・生活サイクルが昼夜逆転する
    ・夜鳴きする
  • 4.学習行動や習慣の変化:Housesoiling, learning and memory
    ・トイレを失敗する
    ・コマンドを忘れる
  • 5.活動性の変化:Activity
    ・無目的な徘徊をする
    ・無気力になる
  • 6.不安:Anxiety
    ・飼い主さんが離れるとパニックになる
    ・行き慣れたトリミングサロンなどでパニックになって鳴く

イメージ

認知症の初期症状として、わかりやすいサインはありますか?

獣医師 小澤 真希子 先生

認知症の初期症状に決まったパターンはありません。どんな症状からはじまるかはその子によって異なる、という研究報告もあります。

飼い主さんからお聞きする話で、比較的多いと感じているのは、「日中によく歩いている」という症例です。徘徊というほどでもなく、なんとなくよく歩いている、普段よりも歩くことが増えたということから、気づく方もいます。

初期はわかりにくいので、気づけない方がほとんど。もう一歩進んだときに表れる、夜鳴きやトイレの時の様子の変化などで異変を感じる方が多いと思います。

認知症のための検査や治療とは?

イメージ

動物病院では、どのような検査が行われますか?

獣医師 小澤 真希子 先生

まずは「問診」に時間をかけ、日頃の様子や変わった行動について、詳しくお聞きします。

飼い主さんにご協力いただいて、約1ヶ月にわたってトイレや睡眠、よく鳴くなど、行動のタイミングを専門の用紙に記録してもらい、それを元に診断をすることもあります。

また、身体の不調によって行動が変化することもあるので、「これではない」ということを確認する除外診断を行うため、ホルモンを含めた血液検査、レントゲンやエコーなどの画像診断、尿検査、必要があればMRIも撮って、一通り身体の検診をします。

検査のボリュームが多いと、それだけで「大変」という印象を持たれてしまうかもしれません。しかし、病気が隠れている場合、その病気を治療することで症状が落ち着いた、という例は少なくないのです。

認知症は、見極めていくのも難しい病気です。判断も一筋縄ではいかないですし、治療も一筋縄ではいきません。だからこそ、「それではない」というのを一つずつ明確にしていくことが、非常に重要です。

行動の異変→認知症=しょうがない、で片付けずに、きちんと身体を診てみるというプロセスを大切にしていただけたらと思います。

行動を記録する専門の用紙

行動を記録する専門の用紙

認知症と診断された場合、どのような治療が行われますか?

獣医師 小澤 真希子 先生

認知症は、薬などでパッとよくなるというものではありませんし、完全に治ることは難しいとされています。しかし、環境や習慣を整え、健康を維持できれば、毎晩夜鳴きをしていた犬が一晩しっかり眠れるようになるなど、症状は落ち着いてくることが多いです。

治療としては、生活習慣の改善、生活環境の調整、栄養面の見直しを行い、その時に困っている症状が落ち着くように軌道修正をしていきます。薬物療法を行うこともあります。こういったアプローチは今ある症状を改善させるためだけでなく、認知症の進行をできるだけ緩やかにするという目的もあります。

それぞれの例を、ご紹介しましょう。

1.生活習慣の改善:食事やトイレのタイミングを整える

規則正しい生活習慣作りが大切です。寝る前にトイレに行く習慣づけをすると、夜中にトイレに行きたくなることもなくなります。夜中に起きることがなくなれば、夜鳴くことも減ることがあります。

食事のタイミングや散歩の習慣も、この時間にこれをする、というのを決めて整えることで、夜中に空腹や水分を欲して起きることもなくなり、犬も飼い主さんもちゃんと眠れるようになることがあります。

2.生活環境の調整:暮らしの環境を見直す

高齢犬にとって過ごしやすい環境を整えると、毎日の活動量が増え、世話の負担は減ります。床がフローリングの場合、滑って歩きにくいことで、トイレに思うようなスピードで着けず、失敗してしまうということがあります。床材を滑りにくい素材にしてあげることでトイレの失敗が軽減します。

また、自分がどこにいるのかわからなくなってしまうようであれば、リビングなどに、犬を留めていられるようなサークルを作ってあげると、隙間に入り込むなどを防げますし、犬自身も安心できると思います。

3.栄養面の見直し:脳だけでなく、身体全体の健康維持を考える

まずは、カロリーが適正かどうかの確認を行います。また、高齢犬の体に合ったフードかどうかも重要です。若い頃とは必要な栄養素が異なりますから、年齢や体調に合った(疾患などがあればそれも考慮した)フードを選ぶことが大切です。

脳の健康維持に良い成分は、抗酸化物質とオメガ3脂肪酸です。

Point脳の健康維持に良い成分

  • 抗酸化物質
    ・ビタミンE、ビタミンC、ポリフェノールなど
  • オメガ3脂肪酸
    ・DHA、EPAなど

サプリメントや食事へのトッピングは、飼い主さんの判断でトライせずに、獣医師など専門家のアドバイスを受けるのがおすすめです。動物病院では、このような細かい食事のアドバイスもしていきます。

予防や心づもりなど、発症前に家庭でやるべきこととは?

イメージ

認知症の予防として、家庭でできることはありますか?

獣医師 小澤 真希子 先生

規則正しく年齢に合った食事をあげる、お散歩で十分に運動をさせるなど、できる範囲で生活習慣を整えてあげることは、予防として効果があると思います。

脳への刺激も効果的と言われています。知育トイを使って遊ぶのもいいと思いますし、お外が好きな子は長めにお散歩をするなど、その子の好きな遊びをちゃんとさせてあげるのが良いと思います。

高齢期に入ったら、一度床材など生活環境を見直してみるのもいいですね。

そして、高齢期は、特に不調がなかったとしても1~2ヶ月に1回はかかりつけの動物病院で健康状態をチェックしてもらうのがおすすめです。健康な状態を知っていれば、担当医も小さな異変に気づきやすいと思います。なにか異変を感じたときにメモしておいて伝えれば、より診察がしやすくなると思います。

日頃から、外耳炎や目やになどを動物病院でこまめにケアしておくことも大切です。不快さをできるだけ早く解消してあげることで、認知症になっていたとしても、夜鳴きなどの症状が出にくくなります。

心づもりとして、やっておくべきことはありますか?

獣医師 小澤 真希子 先生

飼い主さんが、高齢期に起こることや認知症の症状を正しく知っておくことは、とても重要です。そのために、動物病院や老犬ホームなど外部の専門家と繋がりを持って、セミナーなどで情報をもらうこともいいと思います。

どういう状態になるのかがわからないと、どうしても不安になってしまいます。今後はこういう症状が出てくる可能性があるとか、こういう症状が出たらこうすればいいなど、情報を持っていれば見通しが立つので、出口のない不安は軽減するのではないでしょうか。

認知症は、まだまだ知られていない部分が多い分野です。行動診療や認知症外来を実施している動物病院が専門的診療をすることができるので、行きやすい動物病院を調べておくのもいいかもしれません。生活環境や生活習慣、食生活についても細かいアドバイスをしてくれるはずです。

小澤先生からのメッセージ

「認知症=しょうがない」で片付ける前に、できることはまだあります

愛犬の認知症を、家族だけで抱えるのはとても大変なことです。 ぜひ、動物病院や外部のサービスなどの専門家の力を借りて、日々の不安を聞いてもらったり、アドバイスをもらったりしていただけたらと思います。 「認知症=しょうがない」で片付ける前に、できることはまだあります。 自立した生活ができなくなっても、身体の不調や不快感がなければ、心地よく暮らすことはできますし、人を困らせるようなことも少なくなります。 愛する小さな家族と、できるだけ長く幸せな時間を過ごすために、暮らしの見直しや定期的な健康診断の受診など、日頃のケアを大切にしてみてください。

獣医師 小澤 真希子 先生

取材にご協力いただいた病院

神奈川県 藤沢市
小澤 真希子
日本大学動物病院 ANMEC
0ハグポイント

日本大学 生物資源科学部 獣医保健看護学科 専任講師。東京大学大学院卒(獣医学博士)。同大学の獣医動物行動学研究室および獣医病理学研究室での研究・動物病院勤務を経て、獣医行動診療科認定医を取得。現在は、大学で教鞭をとる傍ら、大学の附属動物病院にて、犬と猫の問題行動や老齢動物の認知症診療を担当している。「獣医学に基づく診断と治療を通して、ペットとご家族がお互いに幸せになれるようサポートしたい」という思いを胸に、専門的な知見から丁寧なカウンセリングと治療を行っている。

  • twitter
  • facebook
  • LINE

記事制作にご協力頂いた方

「いいね♡」を押すとブログを書いた動物病院にHugQポイントが贈られます。
会員登録をしてあなたの「いいね♡」を動物病院に届けてください!

「ブックマーク」機能の利用には会員登録が必要です。