ハグわんがお届けする「プロペットオーナー」になるための講座、ペットオーナー大学。第5回(2026年1月28日実施)の様子をお届けします。文章にしきれなかったペットオーナー大学ならではの“こぼれ話”がたくさんありますのでフル動画もぜひご覧ください。
※プロペットオーナーとは日本全薬工業株式会社が定義した名称であり「ペットとより豊かな時間を過ごすためにペットのことを学んだペットオーナーのこと」を指します。
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目次
①犬ってそもそもどんな食性の動物?
MCまず最初にお聞きしたいんですが、犬ってそもそも、どんな食性の動物なんでしょうか?

左向先生犬の祖先はオオカミなんですよね。群れで狩りをしますが、狩りの成功率は高く、安定して食べられる環境では無いので、基本的には「食べられるときに一気に食べる」という溜め食いの性質があります。ゆっくり味わうというより「今のうちに食べておく」という感じです。犬は人に比べて唾液中のアミラーゼは少なく、飲み込んで主に胃や腸で消化します。丸呑みする傾向があります。出されたものは基本的に全部食べようとします。
森先生だから、犬のトラブルでは例えば「食べ過ぎちゃって太っちゃう」とか「誤食をしてしまう」などの食べすぎることによるトラブルが多いですね。
左向先生そうなんです。犬はもともと「いつ次に食べられるかわからない」環境で生きてきた動物なので、出されたものは基本的に全部食べようとします。ただ、最近は小型犬を連れて来られる方が増えていて、「食べが悪い」ということが心配でご相談を受けることはあります。
森先生(同じように)高齢犬になると食べっぷりが悪くなるなど、そういう悩みを抱えている飼い主さんも多いと思います。
②食べない時のチェックポイント
MC「あまり食べない」といった悩みについて伺いたいと思います。
森先生まず大事なのは、「わがまま(環境的要因)」なのか「病気」なのかを見極めることです。わがままの場合は毛艶も良く健康そうに見えますが、病気の場合は体重が落ちたり、下痢や嘔吐といった症状が出ます。

MC体重はこまめに測ったほうがいいですか?
左向先生毎日だと一喜一憂してしまうので、週に1回くらいの測定で十分です。
MCどれくらい変化したら獣医師さんに診てもらった方がいいのでしょう?
森先生体重が5%ぐらい変わったらやっぱりちょっと怖いですよね。10kgの子が1週間で5%(約500g)体重が落ちたらよくないサインだと思ってください。
左向先生(人間で)60kgの方が一週間で3kg痩せたらビックリするでしょ。
森先生100グラム、200グラムは、うんちやおしっこなどで変動しますので、そこまで気にしなくていいのですが、明らかに落ちてるっていう場合は気にしたほうがよいですね。
③食べ過ぎ問題の対処法
MCでは逆に、「食べ過ぎてしまう」という相談についてはいかがでしょうか。
森先生正直に言うと、食べ過ぎの原因の多くは飼い主さん側にあります。つい可愛くて、おやつをあげすぎてしまったり、吠えたら与えてしまったりすることが多いんです。犬好きの宿命なんです。(可愛いと思う気持ちと責任と)どう折り合いをつけるかというところはすごく難しいと思います。
左向先生食べ過ぎにしても、食べないにしても、食べる時間を決めて、その時間の中で食べさせる量を決めてやるっていうのが原則です。
森先生そうですね。落ち着いた状態のときにだけ与える、というルールを決めることが大切です。また、散歩の時から飼い主がリーダーシップを発揮することも重要です。飼い主がリーダーであれば、主導権を飼い主がもって食事をコントロールできるためです。
左向先生ちなみに今は1日2食が当たり前になっていますが、昔は1日1食ということを勧めている時期もあったんです。
MCそれは研究として変わってきたということですか?
左向先生というよりも、人間の暮らしに合わせご飯をあげるようになったのと、やっぱり動物側からの食べたいという要望に応えた結果ですね。人間が食事をしている時に、「あなたは一日一回だよ」って、自分たちはおいしそうに食べているのを見せるのはちょっと辛いですからね(笑)。
森先生本来は健康であれば、半日~1日くらい食べなくても大きな問題になることは少ないんですよね。
MC12時間くらい空けても別に大丈夫なんだって知っていれば、なんかちょっと厳しくなれるような気がします。
MC誤食のトラブルについてもよく聞きますが、そのあたりはいかがでしょう?ストッキングやビニール袋などを食べてしまうケースは、実際によくありますか?
左向先生空腹や管理不足が誤食の原因になることは多いですね。私の経験でもアルミホイルや卵パックを丸ごと飲み込んでしまったケースはありました。
森先生おむすびを丸ごと飲み込んでしまったという患者さんもいましたね。
左向先生海苔が喉に引っかかってつまってしまうんですよね。床に物を置かない、届く場所に置かないなど、環境を整えることが重要です。
森先生食べてしまうのは本能的な部分もありますので、お留守番中はケージに入っておいてもらうなどの対策を検討する必要もあります。
MCシニア期のわんちゃんの食事について伺います。食事の内容は変えたほうがいいのでしょうか。

左向先生一般的には、中高齢期(おおよそ7歳前後)から代謝が少しずつ変わってきます。消化能力や運動量が落ちてくるため、若い頃と同じ量を与えているとカロリー過多になり、太りやすくなります。
MCシニア用フードに変えたほうがいいのでしょうか。
左向先生消化がしやすく、脂肪控えめ・タンパク質多めに設計されているシニア用フードを選ぶのも一つの方法です。ただし、現在のフードで体調が安定していれば、無理に変える必要はありません。
MC無理に変えなくてもいい、というのは安心します。
左向先生ただ、歳をとると運動量が減って消化能力が落ちますので、若い頃と同じ量を食べたら太ってしまいます。消化機能の変化により脂肪に対する耐性が低下する場合があります。高齢になり下痢をしやすくなった場合は、シニア用フードにすることも選択肢の一つということです。
MC食べられない原因には「脂っぽさ」もあると思いますが、そのほかにも原因はありますか?
森先生歯ですね。歯や口のトラブルが原因になっていることが多いですね。
MC歯ですか?
左向先生犬は虫歯はあまりできないんですが歯周病になります。見つけるポイントとしては、今まで両方で噛んでたのが片方の歯でしか噛まなくなるなどの変化がありますので見逃さないようにしてください。
森先生あとは、ご飯の前まで行って食べたそうにしてるのに「食べない」時。痛いからやめようってなってしまう様子があればぜひその様子を録画して獣医師に伝えてください。喉の奥の腫瘍が原因のこともあります。飼い主さんの観察がヒントになることがありますので。
MC歯周病はどう防いだらいいのでしょうか?
森先生歯ブラシですね。若いうちから口を触られることに慣れさせ、毎日の歯磨きの習慣をつけておくことが非常に大切です。大変ですが毎日やるのがいいと思います。
左向先生家庭で日々することが大切ですが、半年に1回くらい動物病院で定期的にチェックを受けると安心です。
森先生でも獣医師によるスケーリング(歯石取り)は、全身麻酔になるためリスクも伴います。だからこそ日頃の口腔ケアをがんばりましょう。
MCフードの話に戻るのですが「生涯ずっと同じフードがいいのか、いろんな味を楽しませてあげたほうがいいのか」という論争が常にあると思うのですが、その辺についてはいかがでしょう?
左向先生基本的には、体調が安定していれば、同じフードを続けていてもよいと思います。
森先生僕はちょっと普通の獣医師さんと言うことが違うかもしれないですが、本当に色んなフード食べさせちゃいます。愛犬にはドッグフードを4種類ほど混ぜていますしウェットフードもあげます。アレルギーがない子であれば、そういうご飯でもいいかもしれないと思っています。人間の研究ではありますが、「小さいころから腸から摂取したものはアレルギーになりにくい」という研究結果が出ています。
MC獣医師さんでも色んな考え方があるのですね。
森先生もちろん同じものを食べ続けた方がいいというお考えの方もいらっしゃると思います。色んな方がいていいと思っています。最終的には飼い主さんが決めたらいいんです。
左向先生本当に偏ったフードでなければいいと思います。
④うちの子にあったフード実践編
MC実際にフードを選ぶときは、どこを見ればいいのでしょうか。

左向先生まず基本として、パッケージに「総合栄養食」と表示されているものを選んでください。これ一つで必要な栄養が取れるように設計されています。 迷ったときほど、まずは基本に戻ることが大事ですね。
MCパッケージの原材料や成分表示はどう見ればいいですか?

左向先生日本の基準ではタンパク質は18%以上と定められていますのでこのフードはまずそれを満たしていますね。ただ、だからといってタンパク質が多ければいいのではなく、タンパク質の成分を見る必要があります。それを知れるのが原材料の表示です。原材料は「含有量が多い順」に書かれています。一番最初に「ちゃんとしたお肉」の名前が書かれているかを確認すると良いでしょう。このフードは最初に「鶏肉」がきていますので、その点もよいフードだと思います。あとは、タンパク質の量だけでなく、カルシウムやリンとのバランスが適切に設計されていることが重要です。
MC「グルテンフリー(小麦に含まれるたんぱく質成分)」や「グレインフリー」の表示もよく見かけますが、気にしたほうがいいのでしょうか。
左向先生「グレインつまり穀物が絶対ダメ」という科学的証拠はないんです。
森先生そもそも「グレインフリー」が何か分かっていない方も結構いらっしゃるかもしれませんのでご説明しますと、グレインフリーとは「小麦」「トウモロコシ」「お米」が入ってないことを指します。「芋」は入っているんですね。
左向先生穀物の代わりにタピオカやポテトなど吸収の良い炭水化物を使用しており、製品によってはエネルギー密度が高くなる場合があるため、給与量には注意が必要です。
森先生飼い主の嗜好、好みに合わせてそういったフードが選ばれるっていうところはあるかもしれませんが、基本的には小麦にアレルギーがある子はグルテンフリー、グレインフリーは正解です。アレルギーの子は避けたほうがいいというところですね。
MCあと添加物が心配で「手作り食」にしたいという声もよく聞きますがそのあたりは先生方はどう考えますか?
森先生僕の研究室で総合栄養食基準のフードを目指して手作りしてみたことがあるのでわかるのですが、総合栄養食の基準(ミネラルのバランスなど)を満たすのは非常に困難です。手作り食を与えたい場合は、食事全体の20%以内にとどめ、基本は総合栄養食を与えることをおすすめします。
左向先生手作り食というのは「愛情を与えたい」という飼い主の想いがあると思うんです。その気持ちは大変素晴らしいものですが、森先生がおっしゃるように「一般的にはトッピング程度にとどめること」が推奨されます。手作り食だけで全部をカバーしようとすると、愛情には溢れますが栄養バランスが壊れてしまいます。お気をつけください。
森先生わんちゃんに必要な1日のカロリーは、以下の計算式で求められます。 おとなしい犬というのはほとんどケージで動かないわんちゃんを指します。


森先生避妊・去勢済み:1.6を掛けてください。未避妊・未去勢:1.8を掛けます。高齢犬(シニア)は1.4を掛けると計算できます。
※現在の体重ではなく、理想体重で計算することがポイントです。

⑤質問コーナー
講義の最後は参加者からの質問コーナー。お二人の先生が丁寧に教えてくれました。
参加者うちの犬はとても早食いで、喉を詰めてしまわないか心配しています。早食い防止用の食器を使ってみましたが、あまり改善されません。適切な食事量や与え方について、アドバイスをいただけますでしょうか。
左向先生犬はもともと一度にまとめて食べる性質を持っています。食器を変えても改善しない場合は、1回の食事量を減らし、回数を分ける「分食」にするか、消化に問題がない範囲で茹でたキャベツなどでかさ増しする方法を試してみてください。
森先生左向先生と同じ意見ですが、つけ加えると知育玩具にフードを詰めて取り出しにくいようにして与えるのも効果的です。
参加者膵炎を発症しましたが、完治したので現在は療法食を食べています。ずっと同じ療法食ですが、たまには違うメーカーのものに変えたほうがいいでしょうか?
左向先生膵炎は脂肪分によって悪化するリスクがあります。現在の療法食で体調が安定しているなら、違うメーカーのものに変えて再発のリスクを冒す必要はありません。おやつも療法食を出しているメーカーのものにするのが安心です。
参加者食事にムラがあり、食べてくれないことがあります。
森先生健康状態に問題がなければ、12時間ほど待つなど、飼い主さんが「根負けしない」ことが大切です。
左向先生「15~20分経ったらお皿を下げる」と時間を決めることで、犬も「出された時に食べなければいけない」と理解し、食べムラが改善することがあります。
参加者手作り食を与えていますが痩せ気味です。お肉を増やしてカロリーを上げたほうがいいですか?
左向先生手作り食でお肉や脂肪だけを増やしてカロリーを上げようとするとカルシウムとリンのミネラルバランスが崩れてしまいます。総合栄養食をベースにして、手作り食をトッピングとして与える方法が最も安心です。
参加者犬に「生食」を与える方法について関心があります。健康面への影響や注意点を含めて、生食はおすすめできる方法なのでしょうか。
左向先生生食は、適切に管理された場合でも注意が必要であり、サルモネラ菌やカンピロバクターなどの細菌が付着している可能性があります。また、カルシウムやリンなどの栄養バランスが崩れてしまうリスクもあります。
森先生生食を肯定する研究もありますが、近年は細菌リスクを指摘する報告が多くなっています。現時点では、安全面を考えると、積極的におすすめできる方法ではないと考えています。
参加者水頭症の診断を受けている犬を飼っています。このような場合、食材の選び方や食事の内容について、気をつけるべき点や参考になるレシピがあれば教えてください。
森先生水頭症と一言で言っても、症状や進行の程度には個体差があります。こちらの質問については不確実なことは申し上げられませんのでお答えを控えさせていただきますね。申し訳ございません。
MCこのようなケースでは、必ずかかりつけの獣医師と相談していただくことが大切ですね。
⑥先生からのメッセージ
左向先生
メッセージ
食事は、飼い主さんとわんちゃんをつなぐ大切なコミュニケーションでもあります。栄養を満たすだけでなく、楽しく、安心して食べられる環境を作ってあげてください。毎日の観察を大切にしながら、わんちゃんとの生活を満喫していただければと思います。



メッセージ
犬や猫の栄養についての論文が今増えています。生食に関しても「良い」という論文もあれば「あまり良くない」という論文もあったりします。僕らも引き続き勉強していきます。それを皆さんにも共有していきたいと思っていますので、今日はこのような場を設けていただき本当にありがとうございました。