【あの人の犬ぐらし vol.2】ありのままの君が好き。Note出身の人気作家 岸田奈美さんの「犬ぐらし奮闘記」1

【あの人の犬ぐらし vol.2】ありのままの君が好き。Note出身の人気作家 岸田奈美さんの「犬ぐらし奮闘記」1

#HugQ編集部
      

「あの人の犬ぐらし」は、SNSやブログで見かけるかわいいワンちゃんとオーナーさんに会いに行こう!という企画。第二回は、著書のエッセイ「傘のさし方がわからない」(小学館/2021年10月発売)が大ヒット中の作家、岸田奈美さんと、愛犬の梅吉くんをたずねました。岸田奈美さんといえば、2019年に文章や写真などを自由に公開できるメディアプラットフォームnoteに掲載したエッセイが注目を集め、デビューを叶えた新進気鋭の作家です。

岸田さんのエッセイは、いつも家族のことを中心に綴られています。車いすで生活をしている母 ひろ実さん、ダウン症で知的障害のある弟 良太さん、近頃急激に認知症が進みつつある祖母。そして、トイプードルの梅吉くん。
岸田さんが描くのは、そんな家族とともに一筋縄ではいかない毎日を笑い飛ばしながら生きていく姿です。

「笑えて、泣けて、明日もがんばろうかな」と思わせてくれるエッセイ。今日は、その中にも時折登場する愛犬の梅吉くんについてお話を伺います。「これまでたくさん取材を受けたけれど、梅吉の取材は初めてです!」
そう笑顔で迎えてくれた岸田さんの犬ぐらしを、ここからたっぷりお届けします。

プロフィール

岸田奈美さん

1991年生まれ、兵庫県神戸市出身、関西学院大学人間福祉学部社会起業学科2014年卒。在学中に株式会社ミライロの創業メンバーとして加入、10年にわたり広報部長を務めたのち、作家として独立。2019年、noteに発表した家族のエッセイをまとめた『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』(小学館/2020年9月)を初出版。多数文芸誌でエッセイの連載を担いつつ、2021年には『もうあかんわ日記』(ライツ社)、『傘のさし方がわからない』(小学館)を立て続けに出版。糸井重里さんや矢野顕子さんが帯にコピーを寄せるなど幅広い層に支持され、活躍する新人作家。note人気記事は100万PV、約2600いいね獲得。世界経済フォーラム(ダボス会議)グローバルシェイパーズ。 Forbes 「30 UNDER 30 JAPAN 2020」選出。
公式HP「キナリ」  https://kishidanami.com/
note https://note.kishidanami.com/
Twitter https://twitter.com/namikishida

岸田さんの愛犬

梅吉くん
トイプードルの男の子、7歳。人懐っこい性格で人にも犬にもフレンドリーだが、「遊ぼう!」とテンション高く吠え続けてしまうため、怖がられることも多い。とにかく岸田さんのことが大好きで、実家では常に後をついてまわっている。注目を集めることが好き、留守番と岸田家のおばあちゃんは苦手。現在は岸田さんの実家ぐらし。

はじめに……

中学2年の時に父親を急性心筋梗塞で亡くして以降、岸田さんは母親のひろ実さんとダウン症で知的障害のある弟の良太さんと3人で暮らしていました。しかし岸田さんが高校1年生の時に、今度はひろ実さんが大動脈解離に。ひろ実さんは、その後遺症で下半身不随となり、車いすで生活をするようになりました。
梅吉くんが岸田家の一員になったのは、岸田さんが社会人になってすぐの頃。以降、岸田家では、別居していた祖母が一緒に暮らすようになったり、祖母の認知症が進んだり、岸田さんが一人暮らしをするため家を出たり、とさまざまな環境の変化がありました。その中で、梅吉くんはどんなふうに過ごしてきたのでしょうか。

たくさんの犬と暮らした経験はあるけれど、私に懐いてくれたのは梅吉だけだった

——まずは、梅吉くんとの出会いについて教えてください。

梅吉と出会ったのは、私が就職をしたばかりの頃です。母と偶然入った大阪のホームセンターにある、ペットコーナーの片隅に梅吉はいました。他の子たちより明らかに大きく、すでに1歳。よく吠えて落ち着きがなく、自分のしっぽばかり追いかけている梅吉は、いかにも売れ残ってしまったという感じで、いたたまれない気持ちになったのを覚えています。

実は、私が中二の時に父が亡くなってから、岸田家にはずっと犬がいました。父が犬を飼うことに反対だったので、犬好きの母はずっと我慢をしていたんでしょうね。父の命日に生まれた子を含めて2匹のヨークシャー・テリアをまず飼い始め、その後も、ご近所から「飼えなくなった」と相談を受けては、行き場をなくした子たちを預かったりしていたんです。ヨーキーのミシェル、ルル、トイプードルのあずき、武蔵、クーちゃんなど、いろいろな子と一緒に暮らしましたね。ただ、悲しいことに誰一人私には懐いてくれませんでしたけど(苦笑)。

——梅吉くんを連れて帰ろうと、決心したきっかけは?

抱っこするためにケージを開けた瞬間、梅吉が私の腕の中にダッシュで飛び込んできたんです。最初はびっくりしましたが、そんなふうに私に懐いてくれる子は初めてで、とにかくうれしかったんですよ。「このまま店にいたらこの子はどうなっちゃうんだろう」という気持ちもあって、一緒にいた母と顔を見合わせ、「私たちが連れて帰ろう」と心を決めました。また、家を出て一人暮らしをする予定になっていたことも決心した理由のひとつです。当時の岸田家のメンバーは、母と弟の良太と、「お世話が大変で飼えない」という知人から預かっていたクーちゃん。ただ、クーちゃんは怖がりでめったにみんなの前に顔を出さない性格なので、このままでは母がさみしくなってしまうのではと思ったんです。よく吠えるけど、人懐っこくてにぎやかなこの子なら、きっと家を明るくしてくれるに違いない、と考えていました。そううまくことが運ぶわけは、なかったんですけどね……。

犬の相性って本当に難しい! どうなる? 岸田家のペットライフ

——梅吉くんとの生活が始まってみて、どうでしたか?

いやあ、もう大変ですよ。まず「まいったな……」と思ったのは、梅吉が先住犬のクーちゃんと恐ろしく相性が悪かったことです。梅吉はぐいぐい相手に迫っていくタイプなので、人見知りで大人しいクーちゃんはそれが怖かったんでしょうね。前にもましてお気に入りのソファーの下に引きこもるようになり、ごはんのときしか姿を見せなくなってしまいました。しかも出てきたクーちゃんを、梅吉が吠えて噛みつきにいくようになってしまい、「これはまずいぞ」と。

そうこうしていると、母の実家で暮らしていた祖母がうちに引っ越してきて、一緒に住むようになったことで状況はさらに悪化……。認知症が進んできた祖母が大きな音で犬を脅かしてしまい、犬たちはそれに抵抗して吠え、「なんだこれは……」と目を覆いたくなるような戦いが繰りひろげられることもあったんです。

平和を維持するためにそれぞれ別々の部屋で過ごそう、という結論に至ったのですが、思い描いていたペットライフとはずいぶん違う形になってしまっていましたね……。

岸田さんが抱っこしていたぬいぐるみに噛みつく梅吉くん

——梅吉くんとクーちゃんは、その後仲良くなれたのでしょうか?

いいえ、やっぱり最初の関係性のままでしたね。梅吉がいないときは、クーちゃんも家の中を歩き回ることがあったのですが、祖母の登場でクーちゃんは一層引きこもり犬になってしまいました。

でも、「このままではあまりにクーちゃんが不憫だ」と周囲に相談していたら、あるとき、クーちゃんを引き取りたいという人が現れたんです。クーちゃんが幸せになれるならと少しの期間お試しで預けてみることにしたんですが、これが大成功で。新しい飼い主候補さんの広くて大きな家で先住犬とも仲良くなったクーちゃんは、見違えるように元気になったんです。数日後に会いに行くと、「やっほー来たの~?」と陽気に私にしっぽを振って抱っこをせがんできたので、別人ならぬ別犬かと思いました(笑)。

やっぱり、梅吉が怖かったんでしょうね……。クーちゃんは今もそのおうちで幸せに暮らしているので、安心しています。犬の相性ってやっぱりあるんでしょうか。それぞれが幸せになるためには、最初の出会わせ方などをもっと勉強して工夫してあげればよかったな、と今は思っています。

——1匹になった梅吉くんは、落ち着いて過ごせるようになりましたか?

梅吉は、呼べばちゃんと私のところに走ってくる賢い一面もありましたが、やはりよく吠える落ち着きのない子でしたね。留守番が苦手で、私と母が外出している間ずっと吠え続けて、ご近所からクレームが来たこともありました。散歩のときも、人や犬に会うとテンション高く吠えてしまうので、口輪をさせて散歩したり、誰もいない夜中に散歩したりしたことも。

よく「4、5歳くらいになれば落ち着くよ」と犬を飼っている人に言われるのですが、そんなことは全くない(笑)。7歳になった今も、人や犬に突進していく落ち着きのなさは1歳の頃のままです。

とはいえ、母や弟にはたくさんかわいがられていて、実家ではいつも車いすに座る母の膝に乗って、くつろいでいます。弟も仕事に行く前には必ず、「梅ちゃん行ってくるね」と挨拶して撫でてから出発しますし、元気で人懐っこい梅吉は岸田家のムードメーカーなんです。まあ、問題は次々に発生していくんですけどね……。

 
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