止めてあげたい、うちの子のかゆみ! 犬のかゆみの原因や治療法を知っておこう

止めてあげたい、うちの子のかゆみ! 犬のかゆみの原因や治療法を知っておこう

島崎 洋太郎
さいとう動物病院 富岡総合医療センター
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ふと見ると愛犬がいつも同じところをかいている、そんな経験はありませんか? 病気なのか、癖なのか、やがて自然に治るものなのか……。オーナーにとって、そんな悩ましい愛犬の「かゆみ」トラブルを徹底解剖。今回お話を伺ったのは、皮膚科の専門医師である島崎洋太郎先生(東京農工大学動物医療センター・皮膚科シニアレジデント)。普段から多くのかゆみトラブルを抱える犬たちに向き合ってきた島崎先生から、かゆみの原因や治療方法、かゆみ改善のために普段の生活の中でオーナーが気をつけるべきことなどを詳しく教えていただきます。

プロフィール

島崎 洋太郎先生

アジア獣医皮膚科専門医協会レジデント。酪農学園大学獣医学部を卒業後、東京農工大学動物医療センターで全科研修医を修了。西山動物病院やVet Derm Tokyoを経て、農工大動物医療センターで皮膚科レジデントとして勤務、現在はシニアレジデントとして経験を重ねている。皮膚科専門の獣医師として各地のクリニックや動物病院にも赴き、ペットの皮膚トラブルに丁寧に向き合い診療を行っている。2021年8月より、獣医師向け獣医皮膚科情報発信サイト「皮膚キャン(@hifucamp)」をオープン。獣医皮膚科に関する知識を深め合うための情報共有・発信にも力を注いでいる。

愛犬とオーナーを悩ます、かゆみとは?

犬のかゆみ症状、皮膚トラブルとは、どんなもの?

「かゆみ」を抱えて来院する犬は、実はとても多く、オーナーにとってこの問題は非常に身近なものだと言えます。犬は、かゆみや不快さを感じると、その部分の毛を引きちぎるため、まずは脱毛症状が現れます。遠くから見ても毛の濃さがまばらになってくるので、この脱毛によって、オーナーが愛犬の異変に気づくことが多いのではないでしょうか。さらにこのほかにも、しきりにかいている場所には、赤みや普段と違う臭い、ベタベタしたフケ、大量のフケなどの皮膚トラブルの症状が出てくることもあります。「すぐに治まるかな?」と様子を見ているうちに、真っ赤になったりジュクジュクしたりと進行してしまい、驚いて来院される例も少なくありません。かゆみが引き起こす症状や原因を知って、早めの治療につなげてあげましょう。

かゆみの原因を探る、3つの基本的な検査って?

かゆみ症状には、さまざまな原因がありますが、実は検査でわかることもたくさんあります。動物病院では、主に次の3つの検査を行い、それぞれの原因を探っていきます。

かゆみの原因を探る、3つの基本的な検査

  • 1. テープテスト

    テープで毛と皮膚に付いている物質を採取。その内容物を調べ、菌や炎症細胞の有無を確認する。

  • 2. 抜毛検査

    毛を抜いて毛の状態や構造などを確認。オーナーに隠れて毛を引きちぎっていることや、生まれつきの毛の構造異常が発見されることも。

  • 3. スクレーピング検査

    毛根部分の皮膚を削り取り、毛穴につく虫「ニキビダニ」の有無を確認する。

多くのかゆみの原因は、この3つの検査から診断できます。どの検査もそう高額になることなく実施可能な病院が多いのではないでしょうか。ぜひ、お近くの動物病院に相談し、実施していなければ皮膚科がある病院でこういった検査をしてみることをおすすめします。

実は、かゆみの原因の7割が感染症!

オーナーのみなさんの中には、愛犬にかゆみ症状が出ると「アレルギーかな?」と心配される方が多いのですが、実は、かゆみの原因の約7割は細菌による感染症なんです。ブドウ球菌による「膿皮症(のうひしょう)」と酵母菌(カビの一種)による「マラセチア皮膚炎」がその代表。図のように、感染症が7割、その他の3割程度が食物アレルギーやアトピーのかゆみになります。

犬のかゆみを引き起こす原因

ちなみにアレルギーの場合、ほとんどの確率で外耳炎も併発します。耳をかゆがるなど、外耳炎の疑いがある子はアレルギーの可能性が高いと言えるでしょう。来院される方の中には、フードの器による金属アレルギーを気にされる方も多いのですが、その可能性はかなり低いですね。愛犬のかゆみ行動を「ストレスや癖が原因かな?」とも思いがちですが、これもとても少ないと考えられています。

ミニ知識

犬の食物アレルギーとは?

気になる食物アレルギーですが、犬の場合、牛肉や牛乳など「牛」に対するアレルギーが最多です。ほかにも小麦や鶏肉、ラムなどに対してもありますね。アナフィラキシーショックのリスクは少ないですが、残念ながら人のように大人になれば良くなる、ということはありません。どの品目にアレルギーがありそうかを探り、その原因を取り除くことで症状の改善を図りましょう。

皮膚科治療が目指すのは、健康な皮膚を維持することです

投薬によって、愛犬のかゆみや赤みなどの症状を一時的に抑えることはできます。しかし、皮膚科治療で目指していきたいのは、その子の「健康的な皮膚の状態を維持する」こと。そのためにはオーナーの協力が欠かせず、食事や生活環境をはじめ、毎日のスキンケアなど、長期にわたって一緒に治療に取り組んでいくことが必要です。

皮膚科治療の内容は?

  • 1. 感染症の治療は・・・

    検査で感染症と判明したら、まずはその原因である細菌やカビを取り除く治療を行います。抗菌シャンプーや抗菌剤(飲み薬・塗り薬)を使用して原因を排除すると、ぐっと症状が治まります。それでも、まだかゆみがある場合には食物アレルギーやアトピーを疑い、次の治療に進みます。

  • 2. アレルギーの治療(食物、ノミ・ダニによる接触性アレルギーふくむ)・・・

    アレルギーの場合には、まずはアレルゲン物質の特定から。食物アレルギーなら除去、負荷試験を行います。ノミやダニなどの寄生虫によるアレルギーであれば、駆除薬を使用し、その後は継続的に予防に取り組みます。

  • 3. アトピーの治療は・・・

    感染症や食物アレルギーに対する治療を行っても、まだかゆみが残っている場合には、遺伝的な要素が原因のアトピーが考えられます。アトピーはドライスキンが大きく関係しており、慢性的な症状があるため根治は難しいのですが、保湿剤をしっかり使うなどして、その子の生活の質を上げていくことを目指します。

皮膚科治療のポイントって?

皮膚科の治療法は、その子によってオーダーメイドです。それぞれの症状や体質が異なるのはもちろん、原因がいくつか重なっていることが少なくありません。薬や保湿剤などその子に合わせたものを処方します。
また、日々のシャンプーや塗り薬などのケアには、オーナーの協力が欠かせません。そのためオーナーのライフスタイルに合わせた、実現可能な治療方法を探っていきます。
犬の体への負担や副作用を考慮し、できるだけ飲み薬は避けたいと考えつつも、シャンプーや塗り薬のためのお時間が十分に取れない忙しい飼い主の方には、飲み薬を主体にしたり、ときには「入院させて、ぐっと症状を抑えましょうか」という提案をしたりすることもあります。

愛犬のかゆみ症状は、「とりあえず薬でかゆみを止める」というその場限りの対症療法では、根本的な解決に至らず、何度も症状をぶり返すことになってしまいます。皮膚の治療は、継続的なケアが必要。ぜひそれを知っていてください。

ミニ知識

皮膚トラブルに、特に気をつけてあげたい犬種とは?

日本の柴犬は皮膚が弱いと言われており、アトピーの子がとても多いですね。目の周りが黒ずんでいたり、脚先の毛がちぎれていたり、たくさんの柴犬がかゆみを抱えて来院しています。ゴールデン・レトリーバーにも皮膚トラブルが多く、膿皮症や外耳炎を発症しやすいので、これらの犬種は特に注意してあげましょう。

オーナーができる、日々のかゆみ対策とは?

愛犬の皮膚を守るために、毎日の生活の中でオーナーのみなさんに注意してほしいポイントを、5つあげてみました。それぞれの生活に当てはめ、挑戦できることがあれば、ぜひ実行してみてください。

日々の暮らしで気をつける5つのポイント

  • 1. シャンプーの選び方と頻度

    感染症に有効な抗菌などの薬用シャンプーが処方されていれば、必ずそれを指定された回数で使用しましょう。健康な子であれば、シャンプーの頻度は犬の皮膚のターンオーバーに合わせて3、4週間に1度が理想。普通の市販シャンプーは、1ヶ月に1度程度の使用を前提にそれなりの洗浄力を保ちながらも、犬の薄い皮膚への刺激対策も研究されているので、「普通のもの」を安心して使ってください。自然乾燥はNG。ドライヤーのあたたかい風を使ってスピーディーかつしっかり乾かしてあげましょう。

  • 2. 散歩の後にもきちんとケア

    散歩の後は、外から持ち込んだ汚れやアレルゲン物質を取り除いてあげましょう。全身を濡れタオルで拭いたら、乾いたタオルで水気を拭き取るのがベスト。

  • 3. おうちを清潔に

    ハウスダストやノミ・ダニなどのアレルギー対策のために、家の中を清潔にしてあげましょう。空気清浄機の使用もおすすめ。

  • 4. 元気な子なら、生活習慣を変えない

    同じ食事、同じ散歩コースで、元気で問題ナシなら、その日常を維持しましょう。急な変化は避けてあげるべきです。

  • 5. 医療用商品を正しく使う

    医療用のシャンプーや食物に抵抗感を持っている方もいますが、感染症の治療やアレルギーを判定するのには欠かせないものもあります。用法用量を守って、正しく使うことが大切です。

病院に行くか迷ったら、「名前」を呼んでみて

かゆみ症状の場合、愛犬の「名前」を呼んでみても、その子がかくのをやめないときには病院に行くことをおすすめします。人の手でカバーしても、その上からガジガジしたり、なでたら余計にかき始めたり。これらはかなり強い反射的なかゆみが出ていると考えられるので、早めに病院で原因を突き止めてあげましょう。

Message for Pet Owner

島崎 洋太郎 先生からのメッセージ

インターネット情報を過信しないで。また、西洋医学への偏見を持たず、ぜひ、動物病院にかゆみの相談にきてください

オーナーのみなさんの中には、愛犬への注射や投薬に抵抗感がある方も少なくありません。でも獣医師としては、おすすめしたいものがたくさんあります。例えば、遺伝的なアトピー肌(ドライスキン)において大幅な改善は難しいのですが、そのあとに起こる免疫異常には、「インターフェロン注射」というものが有効です。ダニに対する「減感作療法」(原因物質を少しずつ体に慣らしていく方法)で使用する「アレルミューン」も、根本的なアレルギーのレベルを下げる効果が報告されています。偏見を持たずに、ぜひ獣医師の話に耳を傾けてみてください。
また、ネット上にあふれるペット情報の過信には十分注意を。皮膚科治療では、治療薬や医療用商品を正しく使ってあげることがとても大切です。大切な愛犬の皮膚を守るためにも、ネット情報に惑わされず、正しい知識を身につけて、獣医師と一緒に治療にのぞみましょう。
近年、全国的にペットの皮膚科は増えてきました。同じ薬を使った場合でも、専門医による適切な使い方指導で治癒につながった、ということも少なくありません。皮膚トラブルに悩んだら、ぜひ皮膚科の診療を受けてほしいと思います。

 
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