家でも外でも、愛犬のSOSに早く気づいて!  犬の暑さ対策、決定版①「熱中症編」

家でも外でも、愛犬のSOSに早く気づいて! 犬の暑さ対策、決定版①「熱中症編」

蟹江 健
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毎日のお散歩や夏のレジャーシーンにおける、愛犬の暑さ対策は万全ですか?
散歩、お留守番、ドライブ、レジャーなど、暑い夏は犬にとって危険なシーンがたくさんあります。クールウェアを着ているから大丈夫。午前中に散歩に行っているから大丈夫。扇風機を回しているからお留守番も快適。本当にそうなのでしょうか?
そこで今回は、気温の上がる夏、犬にとってもっとも怖い「熱中症」や「夏の暑さ対策」について、獣医師の蟹江健先生(東京・杉並 エルム動物病院 院長)に徹底取材! 熱中症編・レジャー編の2回にわたって、たっぷりと「犬の暑さ対策」を解説していただきます。
室内および野外で熱中症にならないために気をつけることや、愛犬のための脱水具合のチェック法、快適ドライブのコツなど、オーナーにとって役立つ情報満載でお届けする、「犬の暑さ対策、決定版」。
「熱中症や火傷などのトラブルに見舞われることなく、オーナーと楽しい夏を過ごしたい!」というかわいい愛犬たちのために、ぜひ、ここから一緒に犬の暑さ対策について考えていきましょう。

プロフィール

蟹江 健先生

愛知県出身。幼少期から動物が好きで獣医を志す。日本獣医畜産大学(現・日本獣医生命科学大学)卒業後、大学病院、一般病院勤務を経て、2007年にエルム動物病院の勤務医へ。2011年、同病院院長に就任。東洋医学も学び、西洋医学と東洋医学の両アプローチで、オーナーとペットにとって安心納得の医療を提供している。また、杉並区の小中学校などで「いのちの授業」なども実施中。

夏の危険度NO.1 犬の熱中症に要注意!

初夏から秋口まで油断しないで。命を落とすこともある犬の熱中症

——熱中症には、いつ頃から気をつければ良いでしょうか。

気温が上がり始める初夏が、実はいちばん注意が必要なんです。人と同じでまだ体が暑さに慣れておらず、調整できないんですよね。毎年ゴールデンウイークくらいから熱中症で来院する犬たちがいますので、真夏以外も気をつけておきましょう。オーナーの皆さんも真夏はとても注意深くなるのですが、初夏や梅雨の時期、それから残暑の季節は油断しがち。涼しくなる秋口くらいまで、ぜひ気をつけてあげてください。

——熱中症になったとき、犬の体の中では何が起きているのでしょうか。

犬はほとんど汗をかかず、呼吸だけで熱を逃がしています。肉球から少し汗をかきますが、わずかな面積ですよね。人間のように体全体で汗をかいて熱を発散することができないので、熱を下げる効率がとても悪いんです。 さらに湿度が高いときは、口から熱い蒸気を吐き出して、また熱い蒸気を吸い込んでしまっている状態。これでは体の熱は下がるどころか、蒸気で水分を失い脱水してしまいます。この状態が続くと体内の臓器がオーバーヒートして、各臓器で代謝や消化などの役割を担っている酵素が失活。その役目を果たせなくなってしまいます。

——犬も熱中症で倒れてしまうことがあると聞きましたが。

ふらふらっと倒れたり、意識を失ってしまったりすることがあります。犬が熱中症で倒れるのは、先ほどお話ししたとおり、犬の体内で臓器のオーバーヒートが起こり、酵素が失活した状態。すでに多臓器不全に陥ってしまっている可能性大です。こうなると30分程度で手遅れになることもあり、すぐに処置をしなくては命に危険が及びます。体を冷やすなど応急処置をしつつ、早急に病院に連れてきてください。「暑くてハアハアしているのはいつものこと」とのんびり構えているうちに、犬の体の中で急激な変化が起こっている可能性があると、オーナーの皆さんには知っていてほしいと思います。

——犬種によって、熱中症に対する危険度の違いはありますか。

呼吸によって熱を交換するしかない犬は、どの犬種であっても熱中症に対して注意する必要があります。中でも特に柴犬など毛が密な犬種は熱を貯め込みやすく、ブルドッグやパグなど鼻の短い犬種は呼吸器の構造上、呼吸によって熱を逃がしにくいので、比較的危険度が高いと言えます。ほかにも背の低い犬種は、呼吸する位置が低いので、アスファルトからの熱をダイレクトに吸い込んでしまいがち。頭の高さの違いで、オーナーが感じている暑さと犬の感じる暑さに差が生じているため、オーナーが危険を感じていなくても、犬は熱中症になってしまうことがあります。
だからこそ、散歩の際は、必ず地面近くの空気の温度を確かめてあげるようにしてください。また犬種ではありませんが、持病を持つ子、肥満ぎみな子、高齢犬などは体温調節が難しかったり、脱水しやすかったりします。より注意深く様子を見てあげましょう。

ほんの短い時間でも、犬にとっては苦しい暑さに!

自宅でできる、犬の熱中症チェック法を知っておこう!

まずは、過度な呼吸になっていないか呼吸回数を確かめてみましょう。よだれがたくさん垂れている際は要注意。もちろん、体温もチェックしてください。犬の体温は、耳のつけ根のところが確認しやすいので、普段から触っておくと良いですよ。いつもより熱いと感じたら、熱中症を疑いましょう。
歯茎で脱水具合のチェックをするのもおすすめです。唇をベロッとめくって、歯茎をぐっと押してみてください。おさえて白くなった部分が1秒以内に元の赤みのある色に戻れば、心配ありません。1秒以上かかる場合には熱中症による脱水が始まっている危険性大。涼しい場所に移動させたり体を冷やしたりするなどの対応をして、様子を見てあげましょう。
水が飲めない、意識がない、という状況にある子は、すぐに病院に行くべきです。体内で急激な変化が起こっています。病院では点滴をしたり、酸素を吸入させたり、早急に治療にあたります。意識が朦朧をしている場合などは様子を見たりせず、すぐにかかりつけ医に連絡しましょう。

CHECK POINT

愛犬の熱中症チェックリスト

  • 1. 息が荒いかどうか。
  • 2. よだれがたくさん出ているかどうか。
  • 3. 体の温度がいつもより高いかどうか。
  • 4. 脱水が進んでいるかどうか。
  • 5. 水が飲めるかどうか。
  • 6. 意識はあるかどうか。

愛犬の脱水具合チェック法

① 唇をベロリとめくり、歯茎を出し、色を確かめる。
② 片手で口を掴み、ぐっと親指で歯茎を押す。
③ 押して白くなった部分が1秒ほどで元の赤みのある色に戻るかどうか確認する。

※オーナーも自分の爪を同じようにぐっと押すと、色が戻るスピードをチェックできます。自分と比べてみるのも〇です。
※慣れてもらうために、歯茎を押えることを普段からやっておくといいでしょう。

口でのチェックが難しい場合の対処法
歯茎を押えるのが難しい場合には、肉球がピンク系の色であれば、肉球でチェックすることも可能です。

オーナーが自分できる「熱中症の応急処置」を覚えよう!

正しい応急処置は、まずは涼しい場所に移動させてあげることです。室内ならエアコンで、野外なら日陰に移動させてあげましょう。水で濡らしたタオルや霧吹きなどで水を吹きかけ、両手で毛の中に水分をなじませたのち、風を当てて熱を放出させてあげましょう。この時大事なのは皮膚にまでしっかりと水分をなじませることです。毛の表面だけが濡れた状態は冷却効果が落ちます。保冷剤で太い血管が通っている首や脇の下、後ろ足のつけ根の部分を冷やすのも〇。ただ、保冷剤を使うときは噛みきって誤飲しないように注意しておきましょう。

毛に水分を含ませて風を当てれば、体もひんやり。
脇下や鼠径部を冷やし、水は少量ずつ口に含ませてあげよう。

浴槽やバケツに水をはってドボンと犬をつけるのはNGです! 循環が悪くなっている血管がさらに締まってしまい、ショック状態に陥る危険があります。
また、水分補給には水を与えます。しかし一気に飲ませるのはNG。逆に吐き戻して水分を失ってしまいます。飲めるようなら少しずつ、無理せず口の中を湿らせてあげる程度にしておきましょう。人間の場合は塩分を含んだ水を飲むこともありますが、体内の塩分濃度が上がり過ぎる危険があるので、犬の場合は水道水でOKです。
飲まない場合は、はちみつやガムシロップなどを少しだけ水に混ぜてあげると飲んでくれることもあるので、試してみてください。

体を冷やそうと水につけるのはとっても危険!

【海、山、川にも危険がいっぱい! 犬の暑さ対策 決定版②「レジャー編」】も合わせてチェック!

室内も野外も、どちらも危険! 熱中症対策を徹底しよう

室内編

室内では、エアコンを使って上手に温度と湿度をキープすることが重要です。外出するならばつけっぱなしにすることがおすすめ。さらに、エアコンの風が直接当たらないように、扇風機やサーキュレーターを回してあげると良いですね。病院内は25、26℃をキープするようにしていますが、家ならば26℃から28℃くらいで調整するといいでしょう。また見逃しがちなのは湿度! 先にもお話ししたとおり、湿度が高いと呼吸でまた高温の水蒸気を吸い込むことになり、体温が下がりにくくなります。温度だけでなく、湿度も下げておきましょう。

室内おすすめ熱中症対策グッズ

  • ・エアコン
  • ・扇風機
  • ・サーキュレーター
  • ・除湿器
  • ・冷感マット ※

※冷感マットについての注意事項:①室温が高い場合には冷感マットも高温になるので熱放散効果が落ちます。(アルミ素材のものも同様)②ジェルなどが入っているタイプのものは嚙みつきや誤飲などに注意を。③お腹など毛の薄い部分がしっかり収まり、体が触れていない部分もあるような大き目サイズでないと熱の放射が十分行われず、効果が薄れてしまいます。マットを敷いているからといって油断は禁物です。

野外編

野外では、散歩をする時間帯に注意が必要です。触ってみると分かりますが、夏のアスファルトは50、60℃の高温。肉球が火傷してしまうだけでなく、照り返しや、あたたまった地面近くの気温の中での散歩は、犬には酷と言えるでしょう。
お散歩をするなら、早朝(朝7時ごろまで)や夜間に。最近では夜も気温が下がらず、熱帯夜という日も少なくありませんよね。どうしても暑い日には、「無理してお散歩に行かない」という選択肢も検討しておきましょう。

早朝、涼しい時間のお散歩なら、犬も快適に。

木陰があり地面が草で覆われている公園での散歩は、犬にもうれしいですね。ただ日陰だから大丈夫と立ち話に花を咲かせていると、あっという間に時間がたってしまうのでご注意を。こまめな水分補給も忘れないであげてください。 夏はサマーカットで、毛足を短くすることもあるかと思いますが、短くし過ぎるのはNG。肌に直接日光が当たり、日焼けをする可能性大になります。犬の皮膚は人間よりも繊細なので、日焼けすると赤みが出てかゆくなり、愛犬にとってつらい状態に。適度な長さを残してカットする、クールウェアを着せるなどの日焼け対策も考えましょう。

野外のおすすめ熱中症対策グッズ

  • ・水で湿らせて着せるクールウェア※
  • ・バンダナなどに保冷剤を入れて首に巻いてあげる即席冷感グッズ
  • ・火傷防止のフットウェア
  • ・霧吹き(体やウェアを湿らせる用)
  • ・飲用水

※クールウェアについての注意事項:①乾いていたら意味がないので途中で霧吹きで濡らすことを忘れずに。②濡らしたまま長時間着用すると皮膚炎を起こす可能性が出てくるので、着用時間に注意を。

熱中症対策でもっとも大切なのは、油断をしないこと

ここでは、熱中症について詳しくお伝えしてきましたが、蟹江先生曰く「犬は自分の不調を訴えることができないからこそ、オーナーの気づきがとても重要」とのことでした。「オーナーの皆さんには、よく、“私はこの子の二番目の主治医。一番目の主治医は飼い主さんですよ” と伝えます。どのような病気や怪我も、日常の中の変化にオーナーが気づくことがとても重要です。そこから病院に連れてきてもらわないと私たち獣医師は診ることができません。だから私達は二番目なんですよ」
真夏になると熱中症で来院する犬の数は少し減るそうです。それはオーナーの皆さんがいつにも増して注意をしているからこそ。今日は涼しいから、夜なら大丈夫など、ちょっとした気の緩みが愛犬の不調を招く原因になってしまうこともあります。
「暑い夏は、油断禁物!」ぜひ、一緒に愛犬の暑さ対策を徹底し、楽しい夏を過ごしましょう。

決定版②「レジャー編」では「海、山、川にも危険がいっぱい! 犬の暑さ対策、決定版」と題して、夏のレジャーシーンでの愛犬のトラブル予防策をたっぷりお届けします。ぜひ、チェックしてみてください。

エルム動物病院 東京都杉並区桃井1-26-20

 
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