図解! 変化で理解する高齢猫の特徴と病気のサイン

図解! 変化で理解する高齢猫の特徴と病気のサイン

山本 宗伸
Tokyo Cat Specialists
450HugQ
      

本企画「図解! 変化で理解する高齢猫の特徴と病気のサイン」では、高齢猫の身体的特徴やケアのポイントにスポットをあててご紹介します。今回は高齢期と青年期との違いや病気の疾患率など、猫の年齢による変化について猫専門病院「Tokyo Cat Specialists」の山本宗伸先生にお伺いしました。高齢猫との安心安全で快適な生活のために、より良い付き合い方を教わりましょう。

プロフィール

山本 宗伸 先生

日本大学獣医学科外科学研究室卒。東京都出身。10歳の頃、授乳期の子猫を保護したことがきっかけで猫に魅了され、獣医学の道に進む。獣医学生時代から猫の扱いに定評があり、猫医学の知識習得に力を注ぐ。都内猫専門病院で副院長を務めた後、ニューヨークの猫専門病院 Manhattan Cat Specialistsで研修を積み、帰国後に猫専門病院「Tokyo Cat Specialists」を開院。国際猫医学会ISFM、日本猫医学会JSFM所属。プロフィールを詳しく見る→
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目次

猫の寿命が伸びたのは来院増加が要因?

まずは人間と猫のライフステージの違いを教えてください。

国際猫医学会(ISFM)&アメリカ猫医学会(AAFP)が2010年に発表した、人間と猫のライフステージでは、以下の表のようになっています。人間と猫では、年をとる早さが違うのであくまで目安として考えてください。よく高齢猫やシニア猫といいますが、表にあるとおり、人間の65歳に相当する12歳以上からと考えていいと思います。

その高齢猫の特徴ですが、実は人間とあまり変わりません。年をとれば、活動量が落ちて、寝ている時間も長くなり、食欲も落ちます。見た目では、毛がパサつき始めて、白髪も増えてきます。
高齢になるとかかりやすくなる特徴的な病気としては、高血圧、慢性腎臓病、甲状腺機能亢進症、糖尿病、歯科疾患、胃腸疾患、認知症やガンなどです。ですからほぼ人間と一緒ですが、猫ならではの特徴もあります。たとえば、心臓病の中でも、心筋梗塞はあまり起こしませんが、心筋症にはかかります。

猫の寿命も右肩上がりですが、何が理由として考えられますか?

まず、飼い主さんが、猫を病院へ連れて行くことが増えています。それによって、初期段階で病気を発見できるようになったことが大きな要因です。私の親世代では、猫は外飼いをしている人が多く、病院へもあまり連れて行きませんでしたからね。猫関連の商品を販売している企業が、来院を促すような啓蒙活動も功を奏していると思います。
もちろん、そればかりではなく、医療の進歩があり、効果的な薬が増えてきたことも一因です。個人的には、猫の寿命が伸びる余地はまだあると思っています。

気を付けたいのは急激な体重減少と行動量の変化

高齢になると、猫も体重が減ってしまいますよね。心配した方がよいのはどんな減り方をする時でしょうか?

猫は11歳になる頃から体重が減少傾向に転じます。気を付けたいのは急激な体重減少です。さまざまな健康上の要因が絡んでいる場合があります。短期間で5%以上の体重が減る場合は病気を疑った方がよいかもしれません。
体重減少を引き起こす病気には、糖尿病や甲状腺機能亢進症、腎臓病、ガンなどがあります。こうした病気になっているかは血液検査でしかわからないので、初期段階で発見するためにも、まずは自宅での体重チェックが重要です。

高齢になるとフードや、摂るべき水分量も変わってきますか?

必要な水分量は、体重1㎏に対して1日44~66㎖が目安になります。たとえば体重が4㎏の猫であれば、176~264㎖になりますが、これは飲み水だけでなく、フードに含まれる水分量、体内で作られる代謝水の合計ですので、健康体であれば、1日150㎖程度の水を飲んでいれば大丈夫です。飲む量が少ないのも問題ですが、逆に、飲み過ぎも多飲という症状になりますので注意が必要です。

高齢猫の行動量の変化についても教えてください。

高齢猫に関する有名な数値に「12歳以上の74%が変形性関節疾患を患っている」というものがあります。かなり高い確率なので、猫が痛みを感じているかを確認してみるといいかもしれません。

下記のチェックリストは、自宅でも簡単に確認できるものなので、猫の様子と照らし合わせてみてください。

いずれの項目も、猫が痛みを感じている場合は、通常と違って様子がおかしい、といった変化が見てとれるはずです。痛ければ、ジャンプが上手にできなくなったり、高いところから飛び降りたりできなくなりますよね。とくに、見落としがちなのが「④いつもどおりに爪とぎをしていますか」です。変形性関節疾患を患っていると、痛さで爪とぎができなくなるんです。変形性関節疾患は、重症にならない限り、見た目では判断できないので、もしも、チェックリストで気になる項目があって、1年以上健康診断を受けていないのであれば、病院で診てもらった方がいいでしょう。ただし、病院だとチェックリストにあるような症状を猫が見せてくれないことも多いので、普段の様子を伝えるようにしてください。気になる動きを動画で撮って見てもらう、というのもひとつの方法です。

おしっこについてはどうでしょうか。変化がありますか?

尿量が多い、というのは病気のサインになります。猫がトイレに行くのは、1日に2回から5回と幅がありますが、チェックすることはできますよね。シートを敷くタイプのトイレであれば、交換頻度が早くなっているとか、猫砂を利用しているならば、塊が顕著に大きくなるとか。
ただし、尿量の変化も数年かけて現れる場合もあります。毎日ケアをしていると気が付きにくいかもしれませんが、そういうケースもあることを頭の片隅に留めておいてください。

高齢になるとグルーミングもしなくなるのでしょうか?

グルーミングは、体調がよくないと減る傾向があります。たとえば、歯科疾患があると、歯が痛いのでしなくなるし、関節疾患を患っていても痛いのでしなくなります。ですから、高齢猫には、代わりにブラッシングをしてあげてください。
もし、ふけのようなものが見えたら、たいていはブラッシングでとれますが、 量が多い場合はムース状のドライシャンプーでふき取ってあげてみてください。

態度の変化に気をつけながら、爪・歯・毛並みもチェックしましょう

運動量の他にも、見た目でわかる変化はありますか?

たとえば、態度そのものにも変化が現れる場合があります。高齢猫のための、自宅でできるチェック項目がありますから確認してみてください。

これらの項目も、変形性関節疾患などの痛みを伴う病気が影響を及ぼしている場合があります。特に気を付けたいのは爪です。爪が伸びているのは変形性関節疾患以外でも、甲状腺機能亢進症なども疑われます。爪が伸びた状態に、気が付かないオーナーも多いので、高齢猫の場合は特に気をかけてください。

爪は重要なポイントですね。

高齢になると、爪は厚くなりやすく、巻き爪にもなりやすいんです。その場合は、切りにくいので、病院で処置してもらってください。再発防止のためにも、その後は、伸びすぎないうちに切るようにしましょう。

歯のチェックもした方がいいでしょうか?

猫は虫歯にはならないのですが、歯科疾患にかかりやすい動物で、2歳までに軽度の歯肉炎も含めて、70%の猫が何らかの歯科疾患を経験するといわれているくらいです。チェックはこまめにしたいところですが、難しく思う人が多いかもしれません。
ちょっとしたコツをお教えします。猫を抱っこして、右手で体を押さえながら、後ろから、左の親指で、猫のほっぺたを持ち上げると、口の中が見えます。歯石がついていないか、歯茎が赤くなっていないかを確認できます。
もしも、口に触るのが難しければ、口臭からもわかることがあります。口臭があると、歯肉炎や口腔内に腫瘍がある可能性もあります。

見た目でいうと、変化がわかりやすいのは毛並みでしょうか?

年をとると毛根が細くなり、角質も過剰になって、結果として部分的な脱毛ができることもあります。毛のメラノサイトが減ることで、白髪が増えて、毛の色も薄くなります。グルーミングが減れば、乾燥したり、逆にべたついたり、光沢がなくなります。

高齢猫こそ重要になる定期的な健康診断

お話を伺うにつれて、自宅ではなかなか気づきにくい病気にかかっている場合もあるとわかりました。定期的に健康診断に連れて行って、先生に見てもらうと安心ですね。

若いうちであれば年に1回で大丈夫です。しかし、高齢猫は、10歳から15歳までは6か月に1回、15歳以上は4ヶ月に1回が理想ですが、難しいですよね。できれば半年に1回は連れて行って、そのうち1回は血液検査も含めた全体的なチェック、もう1回はミニマムなチェックでもかまいません。
慢性腎臓病、甲状腺機能亢進症など、健康診断でしか発見できない病気も多いので、ぜひおすすめしたいです。

高齢猫の生活の質を上げるためにも、健康面はどこまで気にかけておけばいいでしょうか?あまり気にしすぎても、普段の生活が窮屈になってしまうような懸念があります。

高齢猫のオーナーさんであれば、まずは、飼育環境の見直しから始めるといいと思います。高いところへのアクセスには段差やスロープを設けたり、水飲み場所を複数用意して、トイレを近くにして移動距離を少なくしてあげたり。フードボウルやウォーターボウルは高さをつけると飲みやすくなります。グルーミングもサポートしてあげましょう。ふだん好んで休んでいる場所は温かくしておいてください。そして、できれば、引っ越しを頻繁にして環境を変えないことも大切です。たとえ、何らかの病気や症状があるとしても、良い環境で治療にあたった方が長生きにつながりますから。

そして、可能であれば、自宅で簡単に健康診断をする、ということをおすすめしたいです。月に1回、体重を測る日を設けてはいかがでしょうか。抱っこして体重計に乗って、ご自分の体重を引けば、猫の体重はわかりますから、難しくはありません。その時一緒に、歯や爪に変化がないか、おしっこや便などもチェックしてあげてください。病気の早期発見につながりますし、家族全員で行えば、一緒に猫の生活の質向上を追求するという意識を共有できますよね。

※図解作成にあたっては、以下の文献を参照しております。
Journal of Feline Medicine and Surgery (2021) 23, 613–638 ,「2021 AAFP Feline Senior Care Guidelines」
https://journals.sagepub.com/doi/pdf/10.1177/1098612X211021538

 
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