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【獣医師・小林先生 & PET RESCUE・藤原さん対談】猫はどうして脱走するの? 猫の習性から学ぶ「猫捜しのコツ」 〈前編〉

【獣医師・小林先生 & PET RESCUE・藤原さん対談】猫はどうして脱走するの? 猫の習性から学ぶ「猫捜しのコツ」 〈前編〉

 
  • 小林 元郎
  • 藤原 博史
      

どんなに気をつけているつもりでも、ふとした瞬間に発生してしまう家猫の脱走。なぜ猫は、脱走してしまうのでしょうか。もし逃げ出してしまったら、どうやって捜せばよいのでしょうか。
猫オーナーの皆さんのそんな疑問にお答えするべく、今回は、成城こばやし動物病院代表であり、動物と人間が心地よく共存できる社会づくりにも尽力している獣医師の小林元郎先生と、動物専門のペット探偵社、PET RESCUE代表の藤原博史さんをお迎えし、猫の脱走についてお話をじっくりと伺っていきます。
前後編にわたって、猫の脱走の原因や猫捜しのコツ、脱走後のケアや予防策など、猫オーナーの皆さんにぜひ知っておいていただきたい内容満載でお届けしますので、ぜひお楽しみに。

ではさっそく前編では、お二人のプロフィールやペットに対する考えなどを聞かせていただきつつ、「猫の脱走の原因」についてクローズアップしていきます!

プロフィール

小林 元郎 先生

獣医師、成城こばやし動物病院代表。1959 年生まれ。北里大学獣医畜産学部獣医学科卒業後、1990年、NY州のアニマルメディカルセンターで研修を受ける中で「小動物の臨床を通じて、人の幸せに役立つこと」に喜びを見出し1993年に成城こばやし動物病院を開業。現在は、東京都獣医師会副会長や東京城南地域獣医療推進協会理事も務める傍ら、動物の治療だけでなく「ペットと暮らす未来社会」を実現化させるために、動物病院やペット商品のコンサルティング、ペット業界と他業種をつなぐ架け橋となる活動を行っている。
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プロフィール

藤原 博史 さん

PET RESCUE代表、ペット探偵。1969年兵庫県生まれ。幼少期から昆虫や動物に強い興味を抱き常に行動を共にしていた。中学時代には1年間家出をして放浪生活を送り野外で生活。野良猫と雨風をしのぎ食事を分け合った経験から、猫に近い視点を得た。20代半ば、「ペット探偵」になるというリアルな夢を見たことをきっかけに上京、ペット探偵としての活動を始める。1997年に動物専門の探偵社「PET RESCUE(ペットレスキュー)」を設立。発見率の高さが口コミで話題となり問い合わせが殺到、これまでに受けた捜索依頼は4,000件以上、発見率は約8割に上っている。
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目次

獣医師とペット探偵、お互い「本物だ」と感じた二人の出会い

まずは、お二人のお仕事について教えてください。

インタビューを受けている男性獣医師

小林先生

私は成城こばやし動物病院の代表で、獣医師です。獣医学科卒業後、動物病院に勤めていたものの、当時は「獣医師は男子一生の職業なのだろうか」という疑問を持っていました。悶々としていた30歳のときにアメリカで研修を受ける機会を得て、そこで「獣医師の使命」に気づいたんです。小動物の臨床を通じて人を幸せにできるじゃないかって。ちょっと遅いんですけどね(笑)。帰国後に当院を開院し、今は臨床を若手に任せ、獣医師の育成や「ペットと暮らす未来社会」実現化のために活動しています。動物病院やペットサービス、商品のコンサルなどを通じて、獣医師の仕事や業界そのものの改革を目指し、他業種との架け橋となるような活動にも積極的に取り組んでいます。

藤原さん

私はペット専門の探偵として毎日、迷子になった犬猫の捜索をしています。もう25年になりますね。全国各地から捜索依頼があり、現地に向かいます。そして、これまで培ってきた独自の捜索方法で実際に猫や犬を捜し出す仕事をしています。今ではたくさん依頼をいただくようになりましたが最初はうさんくさがられましたね、「ペット探偵って新手の詐欺か何かじゃないの?」って(笑)。

小林先生

僕もそう思いましたよ(笑)。ペット探偵なんてみんな知らないから、最初は大変だったでしょうね。

藤原さん

本当に(笑)。月に1件くらいしか依頼がなくて、あの頃はどうやって生活していたんだろう。3年くらいはきつかったですが、「飼い主さんと動物たちの役に立ちたい」と、ただその思いだけで続けてきました。口コミなどで少しずつ広がり、マスコミに取り上げられたり、ドキュメンタリードラマのモデルになったり。次第に依頼が増え、今はたくさん依頼をいただいても1割ほどしか受けられない状態です。

小林先生

すっかり売れっ子ですね。

インタビューを受けているペット探偵

なぜ藤原さんはペット探偵になったのですか?

藤原さん

実は中学時代、家を飛び出して1年間、放浪していた時期があったんです。こっそり入れるホームセンターの展示小屋や犬小屋で暮らしていました。野良猫ってそういう快適な場所を見つけるのが上手で、集まってくるんですよね。いつの間にか同士みたいな感じになり、拾ってきたコンビニ弁当を分け合ったり雨風をしのいだりする中で、自分が「猫の視点」を得ていることに気がつきました。車の下から見える靴や人の大きさ、飢えた状態などをリアルに体験しているんです。
ペット探偵になろうと思ったのは20代半ば。突然、ペット探偵として働く夢を見て、「ああ、自分のやるべきことはこれだ」と思いました。野良猫と生活を共にした体験が、あんな夢を見させたんだろうと今では思います。

ペット探偵として猫を捜索中の藤原さんペット探偵として猫を捜索中の藤原さん

お二人には、どのような出会いがあったのですか?

小林先生

当時僕が担当していたFMラジオのコーナーに、ゲストとして来てもらったのが最初です。「ペット探偵?怪しくない?」と最初は思いましたよ(笑)。 でもすぐに「あ、この人ホンモノだ」と思いました。真剣に動物に向き合っている人独特の雰囲気があったんです。それ以降、動物にかかわるもの同士一緒に活動したり、ビジネス企画を練ったり、様々な相談をするようになりました。今や彼は、ペット業界改革のための大切な仲間の一人です。

藤原さん

私も第一印象で「この先生は、ほかの獣医師とは違う」と思いました。私の仕事への理解も深く、動物のプロフェッショナル。本当に頼りになる存在です。

インタビューを受けている男性獣医師

お二人が今、飼っている動物はいますか?

藤原さん

猫と一緒に暮らしています。普通の茶トラ(笑)。奈良県で捨てられていたので名前は「ナラ」。ナラ以外にも、道端でヘビを保護したり、血だらけのカラスを治療したり、何かとまわりには動物がいますね。ペットというと少し違う感じがしますが一緒に暮らしている動物たちです。

小林先生

うちにはヘビやカラスはいませんが、しょっちゅう猫がやってきます(笑)。飼い主さんが飼えなくなったり、お亡くなりになったりして引き取ることも少なくありません。今いる犬は、熊本県から来た保護犬のパピー。ペットを飼うというより、「常にそこにいる」「一緒に暮らしている」動物という感じですかね。正直に言うと、「ペット」という言葉にも違和感があります。動物は当たり前にいる存在、という点でも藤原さんにシンパシーを感じていますね。

小林先生の愛犬:シンバ(左)とリバティ(右)

藤原さんの愛猫:ナラ

なぜ猫は脱走するのか?

ではいよいよ猫の脱走についてお聞きします。まず、猫が脱走するのには、何か理由があるのでしょうか?

小林先生

猫は脱走しようと思って脱走しているわけではないんですよ。実は「ちょっと外に出てみたら、帰れなくなった」という子が少なくないんです。いわば、思いがけないトラブルですね。

藤原さん

そうなんです。犬や猫には帰巣本能があると思っている方が多いのですが、昔のような自由に動き回る外飼いの猫と、今の子たちは違っていて、「帰りたくても帰れない」子は多いんです。室内飼いの猫は特にそう。ドアが開いた瞬間や網戸の閉め忘れなど、突発的、偶発的な理由で飛び出し、家に戻りたいのに戻れないということも多々あります。

小林先生

ホテルや引っ越し先など、慣れない場所にいるときにストレスを感じて脱走を図ることもあります。動物病院でもストレスや恐怖からふいに飛び出してしまいがち。だからこそ、どの動物病院も扉が二重になっていたり、動物が容易に外に飛び出さない構造になっているんです。

藤原さん

コロナ禍で保護猫を飼う方も増えましたが、もともと外で暮らしていた猫たちなので、いきなり家に閉じ込められると、やっぱり居心地が悪いですよね。保護猫の迷子の相談は特に多く、彼らは常に脱走の機会をうかがっていると考えていいと思います。

Point家猫の脱走理由

  • 1. 来客でドアが開いていた、網戸の閉め忘れなど突発的、偶発的理由で外に出てみた。
  • 2. 何かに驚いて衝動的に家から飛び出してしまう。
  • 3. 何らかのストレス(病院やホテル、引っ越しなどで居心地が悪い、恐怖を感じたなど)で、能動的に脱走。

犬も脱走することがあると思うのですが、猫の動きの特徴などはありますか?

小林先生

犬と猫では基本的な動き方がまず違いますね。犬は平地で暮らしていますが、猫は上下左右に動くことができます。瞳孔を見るとその動物の行動の軸がわかると言われているのですが、猫の瞳孔は縦長ですよね。縦長の瞳孔を持つ動物は、障害物の多いところでの生活や、獲物との距離を測るのに有利だといいます。猫は上下左右、自由に動き回る動物なんです。

藤原さん

おっしゃるとおり、猫は立体的な動きをします。さらに言えば、そもそも猫は人がコントロールできる動物ではないんです。瞬間的な動きに、人の予想が追いつかない。

小林先生

まさに。犬なら「おすわり」「待て」など、人の言うことをある程度は聞いてくれますが、猫はそうはいかない。狭いところに入り込んでいたり、ドアを開けた瞬間にほかの部屋に逃げてしまったり。思いがけない行動をするのが猫だと知っておいてください。

お座りしている犬と棚の上にいる猫

家猫は脱走中、どのように過ごしているのでしょうか。

藤原さん

性格や個体差もありますが、臆病な子は数日間、じっと隠れています。同じ場所に2週間ほど潜んでいることもあります。動き出すタイミングは、おなかがすいたときですね。

小林先生

ほかの猫とケンカして、思いのほか遠くまで移動してしまっている子もいます。時間が経てば経つほど、遠くまで行ってしまう。

藤原さん

ほかの猫に追われて、雨風をしのげる場所やエサを探しているうちに、戻れなくなってしまうんです。あとは行政機関に保護されたり、誰かの飼い猫になっていたり。事故などに巻き込まれていることも、残念ながらあります。

迷子の間に、懸念されることは?

インタビューを受けている男性獣医師

小林先生

まず怖いのは藤原さんも言っていたように交通事故ですね。それから他の猫とのケンカによる怪我も心配です。持病のある子だと迷子という強いストレスの中で、病態を悪化させてしまうこともあります。さらに猫は飢餓に弱いので、飢餓も甘く見てはいけません。迷子になり潜んでいる間、何も食べずにいると、自分のタンパク質を消費させてしまう。その結果だんだん衰弱して最悪のケースでは餓死してしまうこともあります。

藤原さん

飼い猫にとっては、餌がないこと、ほかの知らない猫がいること、隠れる自分の場所がないこと、すべてが恐怖ですよね。

小林先生

短い間に体に急激な変化が起こる可能性もあるので、なるべく早く見つけてあげる必要があります。

ペットがいなくなる悲しみについて

ペットを捜しているとき、飼い主さんはどのような状態にありますか?

藤原さん

感情が高ぶって相談に来られる方が多いです。自分を責めて、心が乱れています。興奮して電話をしてきたり、泣いたり攻撃的になったり。

小林先生

脱走・迷子による「生き別れ」は、死別とは違う悲しみなんですよね。亡骸がないから、飼い主さんはどう受け止めていいのかわからない。亡骸のない別れは何よりも深いものです。先にも述べましたが、動物病院も猫にとってストレスとなる場所。だからこそ、私はスタッフに「逃がさないことの重要さ」をいつも伝えています。動物を逃がして危険にさらしてしまうこと、飼い主さんに消えることのない喪失感を味あわせてしまうことは動物病院のタブーですから。

藤原さん

ある日、突然、愛するペットが目の前から消えて、生死さえわからない状態では、心の折り合いがつかないですよね。

インタビューを受けているペット探偵

小林先生

飼い主さんにとって大きな喪失感と不安がいつまでも残る大事件だからこそ、藤原さんのような存在が必要とされているんです。心配している飼い主さんにとってはもちろん、猫ちゃんにとってもPET RESCUEの果たす役割は大きいですね。

藤原さん

現在はコロナ禍で飼い主さんの在宅時間が長くなっているため、ドアの開閉が増えたり、「飼い主が家にずっといる」という環境の変化がストレスとなったりして、脱走する犬猫が増えているようです。相談も増加していて、多くのご依頼をお断りせざるを得ない状況……。だからこそ、やみくもに探すのではなく、効果的に捜索することができる大事なポイントを、ここではどんどんお伝えしたいと考えています。それが飼い主さんと猫ちゃんの役に立てれば、何よりです。

今回は、猫オーナーを悩ます家猫の脱走について、獣医師の小林先生とペット探偵の藤原さんにお話を伺いました。驚いたのは、実はふとした拍子に飛び出してしまい、自力で帰れない猫も多いということ。猫ちゃんのためにも飼い主さんのためにも、できるだけ早く見つけてあげたいですね。

後編では、具体的な猫の捜索方法や猫の脱走時に飼い主さんのやるべきことなどをまとめてお届けします。藤原さん直伝の捜索のコツや、そして戻ってきた後にやるべきことなども徹底解説。小林先生の言葉どおり、猫の脱走は飼い主さんにとって大事件です。万一のトラブルに備え、ぜひ後編もチェックしてみてください。

具体的な捜索方法については、後編へ!猫が脱走してしまったら?ペット探偵に聞く「猫捜しのコツ」〈後編〉

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