マダニがウイルスを媒介する「SFTS(重症熱性血小板減少症候群)」。ペットだけでなく私たち人間にも命の危険を及ぼす人と動物の共通感染症です。致死率の高さが注目される怖い病気ですが、正しい知識で対策すればペットも家族も守れます。東京都獣医師会副会長の中川清志先生に、SFTSの感染経路や治療、飼い主さんができる対策を解説していただきました。
中川 清志 先生
目次
SFTS(重症熱性血小板減少症候群)を正しく知る
SFTSとはどのような病気ですか?


SFTSウイルスを保有するマダニ(国内では主にフタトゲチマダニ)に刺されることでうつる感染症です。犬猫などの家庭動物、シカやアライグマなどの野生動物、さらには人にも感染する「人と動物の共通感染症(ズーノーシス)」です。西日本を中心に発症例が増え、現在は全国に広まっています。どこに住んでいてもSFTSに感染するリスクがあると思っておいたほうがいいでしょう。
マダニに刺されなければSFTSに感染しませんか?


SFTSは発症している動物との接触によって他の動物や人に感染することもある「人と動物の共通感染症」です。発症したペットの体液や排泄物に触れることで、飼い主さんも感染する可能性があります。病気の動物と接することが多い獣医師をはじめとする獣医療関係者も、感染する可能性が高いと言えるでしょう。また、2024年3月には国内で初めて人から人への感染も報告されました。
【SFTSの主な感染経路】
- マダニ→動物
- 動物→動物
- 動物→人
- マダニ→人
- 人→人

血を吸った後のマダニ

SFTSの症状と治療
マダニがついているのに気づいたらどうすればいいですか?


犬猫の場合はすぐに動物病院を受診してください。マダニに触れない(※)ようにキャリーバッグなどに入れたうえで、飼い主さんについていたら医療機関(皮膚科など)を受診します。
(※)マダニのお腹を押すと、マダニの中にいる病原体を犬猫に移すことになるのでマダニに触れないように注意する必要があります。
犬猫がSFTSウイルスに感染した場合の症状を教えてください。


SFTSの症状はさまざまな病気の症状と似ているため、飼い主さんが判断するのは非常に難しいと思います。SFTSに当てはまる症状があり、さらにマダニの寄生が疑われる場合は、来院前に獣医師に電話してください。院内感染を防ぐために来院時間を調節する必要があります。
【SFTSの症状】
- ・飼い主が気づける:発熱・食欲の低下・元気の消失など急速(※)に進行する
(※人間のインフルエンザ発症時のイメージに近い) - ・動物病院の検査でわかる:血液検査(白血球や血小板の減少、炎症反応など)・PCR検査(※)(その他の感染症の除外)など
(※SFTSがわかる充分な精度のPCR検査は、外部の検査機関にて実施されております)
これらの症状に加え、以下の要素がある場合は要注意です。
【マダニの寄生を疑う要素】
- ・急激な症状の悪化(急にぐったりしている)
- ・散歩などで屋外に出る習慣がある(同居動物を含む)
- ・ダニが多く生息する場所(自然が多い場所)に行った

I. SFTS 疑いネコ・イヌの診療フロー
https://tvma.or.jp/wordpress/wp-content/uploads/2026/03/SFTS簡易マニュアルー改訂版ー(案)20260318.pdf
SFTSの対処法を知っておきたいと思います。

SFTSは人と動物の共通感染症なので、感染の疑いがある動物が来院する際に獣医師は感染を防ぐために個人用防護具(PPE)を身につけます。これまでにSFTSに感染した猫の体液に接触した獣医師や、噛まれた飼い主さんが死亡する事故が起きているため、二次感染を防ぐために必要な対応です。
検査を行ってから確定するまでは3~7日ほどかかり、その間は動物病院で入院隔離を行います。SFTSの治療に特効薬はなく症状に合わせた対症療法が中心です。必ずしも完治するとは限らず、救命できたとしてもウイルスの完全消失までには治療に時間も医療費もかかります。

I. SFTS 疑いネコ・イヌの診療フロー
https://tvma.or.jp/wordpress/wp-content/uploads/2026/03/SFTS簡易マニュアルー改訂版ー(案)20260318.pdf
SFTSは致死率が高いと聞いて心配になりました。


致死率は猫がやや高く60%前後、人が約10~30%とされています。犬は感染しても症状が出ない場合があり、はっきりとはわかっていません。致死率の高さが注目されますが、マダニに刺されない対策を行えば、過剰に怖がる必要はないことも知っておきましょう。
家庭での対策を行う事が、地域の全体の予防にもつながりますから。マダニ駆除剤は多くの飼い主さんに使ってほしいと思っています。
飼い主ができるSFTSの対策
犬猫がマダニに刺されないための対策を教えてください。


犬猫にマダニ駆除剤を通年投与することです。マダニは動物と地上を行き来しながら成長(脱皮)・繁殖するライフサイクルを送り、都市部の草むらやプランターなどにも生息する身近な寄生虫です。感染や発症の可能性は低くても、発症した場合には命に関わります。SFTSへの対策は、マダニを人間の生活環境内に持ち込まないことが最善の方法。通年投与を忘れないように毎月1日などの日にちを決めるといいでしょう。
マダニ駆除剤にはさまざまな種類があります。体内に入って長く効くタイプや、体表に比較的短くとどまるタイプなどがあるので、獣医師に犬猫の年齢や体調、飼い主さんの希望を伝えて相談してください。
マダニ駆除剤を通年投与したほうがいいのでしょうか。

SFTSは3月~10月に発症例が多い感染症ですが、それ以外の時期にもリスクはあります。マダニが雪の上を歩いていたという報告もあり、たとえ真冬でも油断はできません。犬猫にはマダニ駆除剤を通年投与してしっかり対策しましょう。

マダニ駆除剤の投与に加えておすすめの対策は?


猫は完全室内飼育することでマダニに刺されるリスクをかなり減らせます。犬は散歩から帰ってきたときにマダニが寄生しやすい皮膚のやわらかいところ(耳や目のまわり、脇の下、内股、足裏など)をチェックしましょう。
もしマダニがついていた場合も、無理に取ろうとすると一部が残ってしまうことがあるので動物病院を受診してください。寄生したマダニに対して滴下タイプや内服タイプの駆除剤が効果を発揮するまでにある程度の時間がかかりますが、動物病院でスプレー式薬剤を使用することでマダニを狙って噴射できます。

そもそもマダニからSFTSウイルスに感染しないようにするためには、どのように予防すればよいですか?

飼い主さんが家に持ち込まないように、自然が多い場所へ行くときには、肌が露出しないように長袖・長ズボン、長靴を着用することも重要です。
犬猫から飼い主への感染を予防できますか?

SFTSに限らず人と動物の共通感染症を防ぐために、生活環境やふれあいの際に衛生面には注意が必要です。食器を共有しない、トイレを掃除する、排泄物に触れたら手を洗う、顔まわりをなめさせない、といった習慣を心がけてください。
中川先生からのメッセージ
身近にいるマダニを持ち込まない対策を行う
SFTSが全国に広まった一因として、野生動物やそれに伴うマダニの生息地域の拡大も指摘されています。都市部の公園でピクニックをした際に、マダニがレジャーシートに紛れ込んで家庭内に侵入する可能性もあるわけです。東京都では農作物や家屋への被害が大きいアライグマ・ハクビシン防除実施計画による捕獲を実施しています。SFTSを媒介するマダニはみなさんの身近にいるので、犬猫への駆除剤の通年投与で、家庭はもちろん地域にも持ち込まない対策を行いましょう。

・厚生労働省 重症熱性血小板減少症候群(SFTS)に関するQ&A
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou19/sfts_qa.html
・環境省
https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/pamph/infection/guideline.pdf
・環境局 東京都アライグマ・ハクビシン防除実施計画について
https://www.kankyo.metro.tokyo.lg.jp/nature/animals_plants/raccoon/400100a20220418103620357