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犬の口が臭くなるのは、なぜ? 放置しておくとよくない理由やご家庭でもできる対策について解説【獣歯科医 監修】

犬の口が臭くなるのは、なぜ? 放置しておくとよくない理由やご家庭でもできる対策について解説【獣歯科医 監修】

 
岡田 純一
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犬の口臭は、気づきながらも放置してしまいがち。しかしながら、それは全身のリスクにも関わるある病のサインであることがほとんどです。犬の口腔環境をいい状態に保つことは、健康寿命を延ばすことにも繋がります。そして、そのリテラシーの有無が、愛犬の将来を左右すると言っても過言ではありません。今回は、KINS WITH 動物病院 二子玉川院の院長であり、歯科治療に注力されている岡田純一先生に、口臭のメカニズムとリスク、予防対策の方法についてお話をうかがいました。

プロフィール
獣歯科医 岡田 純一 先生

岡田 純一 先生

KINS WITH 動物病院 二子玉川本院 院長。 2015年 日本大学生物資源科学部 獣医学科を卒業後、都内の動物病院、神奈川県内の動物医療センターにて約7年にわたり、歯科治療・一般臨床を経験。その後、KINS WITH 動物病院 二子玉川院 院長に。日本大学大学院 獣医学研究科、日本顕微鏡歯科学会、日本小動物歯科研究会、日本獣医歯科学会に所属。

 

目次

犬の口臭の原因と放置してしまった
場合のリスクとは?

診察中の岡田先生

お口の嫌なニオイの原因は、なんですか?

獣歯科医 岡田 純一 先生

代謝の異常や食事によるもの、内臓疾患によるものもありますが、多くの場合は「歯周病」が原因です。

症状の度合いはさまざまですが、3歳以上になると8割の犬が歯周病と言われています。日頃から診察している感覚では、もう少し多いのではないかと思うほどです。

歯周病のニオイの特徴は、硫黄系の温泉のようなニオイ。重度になると、卵が腐ったニオイ、生ゴミが腐敗したニオイ、下水道のようなニオイがします。

歯周病菌がタンパク質を分解・代謝する際に発生するガスこそ、ニオイの原因。ニオイが強ければ強いほど、菌がたくさんいる可能性が高いということです。私も診療の際には実際にニオイを嗅ぎ、重症度を予想することが多くあります。鼻で感じるニオイの度合いと歯周病の重症度、そして菌の総数はある程度相関関係にあることが、いくつかの研究で示されています。

ちなみに、他の疾患によるニオイは、腎臓疾患や消化器疾患、呼吸器疾患などさまざまな原因がありますが、腎臓病であれば、歯周病の場合とはまったく違うアンモニア臭のような独特のニオイがします。

口腔内を確認する様子

歯周病にはどんなリスクがありますか?

獣歯科医 岡田 純一 先生

歯周病とは、歯と歯ぐきの境目にある歯周ポケットの中で細菌のかたまり(プラーク/バイオフィルム)が増えることによって、歯ぐきに炎症が起き、進行すると歯を支える骨が溶かされてしまう病気です。最終的には歯が抜け落ちてしまいます。

チワワやトイプードルなどの超小型犬は、下顎の骨が小さく、一番奥にある非常に大きな歯(下顎第一後大臼歯)が中型犬などよりも骨に対して相対的に大きいため、歯周病が進むことで顎の骨が折れてしまうこともあります。

また、ダックスフンドなどによく見られる口腔鼻腔瘻(こうくうびくうろう)は、口腔と鼻腔を隔てる骨が溶け、口と鼻が繋がってしまう病気ですが、これも重度の歯周病が原因です。

人において、歯周病が心臓疾患や腎臓疾患、認知症など全身の健康に影響を及ぼすことがわかってきています。犬においても、同じような関連性を示す報告があります。

診察室でのカウンセリング風景

歯周病が進行しやすい犬種や特徴はありますか?

獣歯科医 岡田 純一 先生

どんな犬種でも歯周病にはなりやすいのですが、特に進行しやすいのは、小型犬と鼻ぺちゃ系と言われる短頭種です。大型犬、中型犬に比べると、歯と歯の空間が詰まっているため汚れが溜まりやすいことなどが理由です。

また、乳歯が残っている場合や、上顎が長い、下顎が長いなどの特徴があると、歯並びの関係で歯周病の発症リスクは高くなります。

ちなみに、フレンチブルドッグやブルドッグは下顎が出ていることが自然ですが、他の犬種で顎の長さが不自然だと感じたら、歯周病以外の問題も起きることがあるので、一度病院で診てもらうことをおすすめします。

受診するタイミングと
施される検査や治療の内容とは?

歯科診療の様子

受診したほうがいいサインや目安はありますか?

獣歯科医 岡田 純一 先生

歯周病は重症化してしまうと、なかなかもとには戻せない病気です。だからこそ、いかに早く状況を把握し、進行させないために対策できるかが、健やかさを守る鍵になります。

生まれたばかりの子犬を家族に迎えた方は、乳歯から永久歯に生え変わったときや1歳を迎えたタイミングで歯科の病院へ行って、レントゲンを撮って診てもらうといいと思います。

保護犬など成犬の場合、朝に顔を舐められたときに、少しでも臭いと感じたらなるべく早めに歯科の病院で診てもらいましょう。すでに歯周病が進行している可能性があります。

また、そこまで口臭は気にならなくても、歯ぐきがピンク色より少し赤みがある場合や、歯石がついているのを目視できたら、早めの受診がよいと思います。

歯ぐきが赤くなっているのは炎症のサインです。この段階なら、歯石除去などの治療とホームケアで歯周病を最小限に抑えることができますが、放置しておけばあっという間に歯周病に進行してしまいます。まだ大丈夫だろうと思わずに、ぜひ受診してください。

また歯周病は慢性疾患であり、一生涯ケアが必要な病気です。定期的に歯科検診を受けて、なるべく進行する前に、継続的に治療を受けてください。

受診する時には、健康診断の結果がわかるもの、尿検査や血液検査、エコーなどの過去のデータ、普段使っている歯磨きグッズをお持ちいただくとよいと思います。他の病院で歯の治療をしている場合は、レントゲン画像や治療歴があると診療の参考になります。

レントゲン検査のイメージ

どのような検査が行われるのでしょうか?

獣歯科医 岡田 純一 先生

問診、視診、ニオイを嗅ぐ。この3つがベースになりますが、当院では、はじめの診断でできるだけ多くの情報を得るために、麻酔なしでレントゲンを撮影して、その結果も飼い主さまと一緒に診るようにしています。

レントゲンでは、埋まっている歯もわかりますし、歯の異常にも早めに気づくことができるので必須です。

次の段階として、歯周病の進行具合を細かくチェックするために、全身麻酔をしてプロービングを行います。プロービングとは、歯と歯ぐきの溝に非常に細い棒状の器具を差しこんで、歯周ポケットの溝の深さを測る検査のことです。

麻酔に対して抵抗のある飼い主さんもいらっしゃいますし、そのお気持ちもよくわかるので、どこまで検査をするかは状況をみながらタイミングを決めて行っていますが、ここまでしっかり検査をしてはじめて、治療の進め方を検討することができます。

治療の説明をする岡田先生

どのような治療が行われるのでしょうか?

獣歯科医 岡田 純一 先生

全身麻酔をして、歯周病の原因となる歯石を徹底的に取り除きます。丁寧にしっかり取り除けば、口の中の状態はかなりよくなります。

麻酔に抵抗があるお気持ちはわかります。しかし、動いてしまうことで口腔内や目などに器具が当たってしまうことの方が怖いですし、恐怖心を持たずにきちんと治療を受けるためにも、麻酔は有効です。

歯石除去のペースは、3ヶ月に1回が理想的ですが、歯磨きを頑張ってくださっている場合は、半年に1回など、相談しながらタイミングを決めるようにしています。

しかし、歯周病の対策としては、歯石を取ればそれでOK、というわけではありません。歯周病の進行を最小限に抑えるには、きれいな口腔の状態をできるだけ保つ必要があります。そのために欠かすことができないのが、ご家庭での歯磨きです。

病院でも、歯磨きの指導やアドバイスをさせていただいていて、慣れるまでは週1回で通ってもらいながら、犬の歯並びを理解してもらったり歯磨きのコツを掴んでもらったりしています。歯磨き教室を企画している病院も多いと思いますので、そういう機会をぜひ利用していただけたらと思います。

スケーリング(歯石除去)の機械
スケーリング(歯石除去)の機械

家庭でできるオーラルケアのコツと
注意すべきこととは?

歯磨き指導の様子

歯磨きのコツはありますか?

獣歯科医 岡田 純一 先生

今はシート状のものなど、さまざまなオーラルケアのグッズが販売されていますが、歯周病対策としては、歯ブラシを使ったブラッシングが必須です。

人の歯磨きと同様に、歯と歯ぐきの境目に歯ブラシを45度くらいの角度で当て、やさしく小刻みに揺らしながら1本ずつ磨きましょう。

はじめは硬い歯ブラシを使わず、できるだけ柔らかいものでやさしく歯ぐきや歯周ポケットのあたりをマッサージするところからスタートするといいと思います。できるだけ不快感を与えないように、やさしく当てて練習していきましょう。少しずつ慣れてきて、柔らかいもので汚れが落ちない感覚があったら、少し硬いものを試してみてください。

歯磨きのイベントが楽しい、ということを覚えさせるために、最初はブラッシングの後に少量のおやつをあげてもOK。おいしい味がするジェルもありますから、そういう嗜好性の高いものを使うのもいいかもしれません。やったらいいことがあるとわかれば、犬も口を触られることに徐々に慣れていきます。楽しい遊びという感覚で、小さいうちから習慣にしていくことが大切です。

ポイントは、毎日、同じ時間、同じ場所でやること。食前食後などのくつろぎの時間にソファでやるとか、飼い主さんに負担が少ないタイミングを決めて、コミュニケーションのひとつとしてやってみてください。

これは犬も人も同じですが、食事の後、8時間が経過すると歯垢がつきはじめ、24時間以内に歯周病菌が増えてきます。そう考えると、本当は1日に2回のブラッシングが理想的。しかし、朝はなにかと慌ただしく時間が取れないことも多いと思うので、負担になるようであれば、1日1回でもいいので、毎日続けてみましょう。

食事やおやつのイメージ

食べもので気をつけることはありますか?

獣歯科医 岡田 純一 先生

おやつとしては、粘性の低いジャーキーなどがおすすめです。

ドライフードを水分でふやかしたものや、蒸した芋類(さつまいもやカボチャ)など、粘度が高いものは歯にくっつきやすく、汚れになりやすいため、食後にしっかり歯磨きをしてあげるとよいと思います。

あと、ブロッコリーの花の部分(もしゃもしゃした上の部分)は細かいのでどうしても歯に詰まりやすい傾向があります。微量でも詰まってしまうと、それが歯周病の原因になるので、あまりおすすめしません。

歯磨きガムやヒマラヤンチーズ、アキレス腱などのおやつも、ハサミで切れないレベルのものは硬すぎて歯を痛めてしまうリスクがあります。噛むおもちゃも同様なので、気をつけましょう。

歯周ポケットの間の歯垢は、噛んでも取り除くことはできないので、やっぱりホームケアとして有効なのはブラッシング一択。はじめのうちは難しく感じるかもしれませんが、飼い主さんもわんちゃんも、慣れれば大切なコミュニケーションのひとつになりますよ。

食事やおやつのイメージ

岡田先生からのメッセージ

犬の歯周病について

歯周病の診療をするためには、歯のレントゲンや顕微鏡、スケーリング(歯石除去)の設備、専門的な知識や技術力も必要です。動物病院では、医師がそれぞれに専門を持ちながらも、総合的に診ることが多いと思いますが、お近くで歯の診療を得意とする病院を探しておいて、使い分けるのもいいと思います。

無麻酔の歯石除去をしている施設があると聞きますが、獣医師以外がこの処置を行うことは違法です。そもそも無麻酔だと、歯石を取り切ることは非常に難しいと思います。経験上、歯石が残っていると、将来的に歯を残すことがとても難しくなってしまうので、しっかり取り切ることの意味を理解していただけたらと思います。

犬は、ものを食べるときにあまり噛みません。だからと言って、歯がなくてもいい、というわけではありません。噛み合わせは大事ですし、生活に支障が出ることもあります。 全部の歯が残せなかったとしても、引っ張って遊ぶのが好きとか噛むのが好きとか、その子の性格や特徴に合わせて、残すべき歯を守ることはできます。 万が一歯が折れてしまっても、詰め物をして被せ物をつくるという方法などで、歯を残すことはできますから、諦めずに相談してください。

大切な愛犬が、いつまでも健康でいてくれることが一番。信頼できる歯科の病院で定期的に検診や歯石除去を受けつつ、毎日の歯磨きを頑張っていただけたらと思います。

獣歯科医 岡田 純一 先生生

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