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【獣医師インタビュー】言葉を話せない動物の症状を読み取り、正確な診断へと導く。米国獣医画像診断専門医・栗原 学先生

【獣医師インタビュー】言葉を話せない動物の症状を読み取り、正確な診断へと導く。米国獣医画像診断専門医・栗原 学先生

#HugQ編集部
      

「苅谷動物病院グループ江東総合病院」院長の苅谷卓郎先生からバトンを繋いでいただいたのは、「画像診断科アドバイザー」として活動する米国獣医画像診断専門医・栗原 学先生。レントゲン、超音波、CT、MRIなどの画像検査をもとに、かかりつけの獣医師と協力して診断や治療にあたっています。日本の獣医療の向上を目標に掲げる現在の活動について伺いました。

【獣医師インタビュー】「確実な診断で適切な治療を」世代を超えた実直な診察を続ける総合病院。苅谷動物病院グループ江東総合病院・苅谷卓郎先生

プロフィール

栗原 学 先生

米国獣医画像診断専門医。国内外の動物病院にて画像診断科アドバイザーとして活動。2012年 麻布大学(獣医放射線学研究室所属)卒業(在学中にアメリカのコーネル大学およびペンシルバニア大学獣医画像診断科にてエクスターンシップ)。国内の動物病院で4年間の勤務医を経て、2016年よりニュージーランドのマッセイ大学画像診断科プロジェクトアシスタントに就き、翌年から2018年まで画像診断科インターン。同年に一般社団法人LIVESを立ち上げ、理事に就任するとともに画像診断科を担当する。2020年よりアメリカのタフツ大学獣医画像診断科レジデント。

目次

獣医師と協力する「ドクターズドクター」の目標は明るく気さくな専門医

ドクターズドクターについて語る栗原先生

「画像診断科アドバイザー」として、診察にはどのように関わっているのでしょうか。

体内の状態を写したレントゲン、超音波、CT、MRIなどの画像検査を読み取り、かかりつけの獣医師と協力して原因を絞り込む鑑別診断を行います。人間の病院ではおもに放射線科が担当していることで、診断や治療をサポートする仕事ですね。医師からコンサルを受けて協力するので、「ドクターズドクター」とも呼ばれています。僕は相談されやすいように「明るく気さくな専門医」を目指していますが(笑)。画像診断科アドバイザーは動物や飼い主さんと直接のやり取りはないけれども、健康を支えるお手伝いをしています。人間に比べて動物は診断が難しいので、獣医師の先生たちも迷ったり悩んだりするんですよ。

動物の診断がそれほど難しいというのは意外でした。

人間であれば「3日前からおなかの右上あたりがチクチクと痛くて吐き気もする」というように具体的な症状を伝えられますが、動物は言葉を話せないからです。動物の診断には検査から得られる情報が欠かせません。人ほどに医療が進んでいないので、検査をある程度重ねなければわからないことも多い。だから動物病院では診断のために小規模でもX線検査装置(レントゲン)や血液検査装置を置き、中規模になればCTやMRIを持つところもあるわけですね。

一方、獣医療では画像診断に特化した教育を受けられる大学が少ないので、画像検査を深く学ぶ機会を学生の時に得られなかった獣医師が多いのではないでしょうか。臨床の先生からは「検査機器は使えるけれど、正確な診断ができているかどうか」という悩みも聞きます。そもそも1人であらゆる動物のあらゆる症例に対応するのは不可能に等しいので、画像診断科アドバイザーとして協力できたらと思っています。

動物の診断には問診が重要。飼い主の声は専門医に直通で届く

インタビューに答える栗原先生

かかりつけの先生に加えて、飼い主さんの話を参考にすることはありますか?

飼い主さんの問診は診断の参考どころかものすごく役立ちます。問診と身体検査は全症例を通じて一番大事です。画像を見て異常を見つけたとして、それが症状に合っているかどうか問診や身体検査所見と確認するからです。飼い主さんの声は僕に直通で届きます!

たとえば飼い主さんが「食欲がないけど嘔吐はしていない」と言ったけれども、僕が腹部の超音波検査の画像を見て嘔吐を起こしていないわけがないと判断した場合、問診と症状のミスマッチですよね。そこから別の病気を疑う余地が出て、診断が変わるかもしれません。診断が変わればその後の治療も変わります。「薬を飲ませられなかった」とか言いづらいこともあると思いますが、獣医師を信じて正直に伝えてほしい(笑)。ちゃんと話していただいたほうが動物のためになり、巡り巡って飼い主さんのためにもなります。

やり取りする機会が少ない専門医の先生が身近に思えてきますね。

僕たちのような専門医は一次診療(かかりつけの獣医師)からの紹介で成り立っている二次診療ですが、飼い主さんが動物と一緒により楽しく生活できるようにするのも仕事だと思っています。画像診断科アドバイザーと連携している動物病院は、診断への信頼性が上がるのではないでしょうか。

インタビューに答える栗原先生

近年立ち上げた「一般社団法人LIVES」は獣医師向けですが、獣医療が向上することで動物の治療にも生かされます。将来的には飼い主さんが僕たちに直接質問ができるシステムを作りたいですね。意外なことに動物の分野では初診の遠隔診療を行うことが法律上できません。時間はかかるかもしれないけれど、人の医療で可能なことは動物の医療でも実現できると思っています。

専門医に質問できるシステムはセカンドオピニオン外来にも通じると思いました。

動物病院でセカンドオピニオンが一般的になるのはもう少し先になりそうです。セカンドオピニオン外来が難しいのは、最初に診た先生が診断できなかった場合、「この先生だからダメだった」という構図になりやすいからです。後医は名医ともいわれるように、それは本質でありません。一次診療と二次診療と、動物と飼い主さんと、4つのファクターで協力していくことが非常に重要です。

10年前には日本に数人しかいなかった「専門医」

インタビューに答える栗原先生

実は、日本ではまだまだ数が少ない「専門医」という存在。獣医師から専門医へと転身した経緯を伺いました。

そもそも、獣医師のなかでも珍しい画像診断科を目指したきっかけを教えてください。

物心ついたころから動物が好きだったけど家では飼えなくて、子ども時代は動物図鑑を見たり動物園に行ったりするのが楽しみでした。小学生のときから野球に夢中になって、高校2年生までは野球以外何も考えていない時期(笑)。甲子園を目指す高校球児から受験生に変わったあたりで動物に夢中になった子どものころを思い出して、飼い主さんと動物をつなぐ“獣医さん”に魅力を感じたんですよね。

そこで獣医師を目指そうと思って大学を調べたときに画像診断を学べる「獣医放射線学研究室」を見つけて、動物を画像で診断するのがおもしろそうだなと。野球しかやっていなかった僕の学力は下から数えたほうが早いくらいでしたが、担任の先生の反対を振り切って猛勉強の結果、不合格(笑)。でも翌年には麻布大学に入学できました。受験の段階で研究室まで絞っているのは珍しいと思いますよ。

インタビューに答える栗原先生

現在は米国獣医画像診断専門医まで取得されていますね。アメリカに留学するきっかけは?

大学5年生のときにアメリカの大学を見学してきた苅谷卓郎先生(「苅谷動物病院グループ江東総合病院」院長)から、「絶対に見に行ったほうがいい」とすすめられたんです。そこまで言うならと思って行ってみたら、日本との教育システムの違いに衝撃を受けました。日本では研究室での下働きの代わりに診察の見学や研究への参加ができるようなしくみで、教育を受けると言うよりは、お手伝いをさせていただいている、みたいな徒弟制度。実績のある教授や魅力的なリーダーの研究を間近で見られるのはメリットですが……。

一方、アメリカの大学には教育熱心な先生がたくさんいるうえ、授業の一環で全診療科を1年間かけて回ります。教育に注力するシステムを知って海外で学びたいと思ったんですよね。そこでエクスターンシップ(短期就業体験プログラム)やワーキング・ホリデー制度を利用して海外の画像診断科を回りました。英語をまったくしゃべれなかったので高校の教科書を見直すことから始めましたが、米国獣医画像診断専門医になれました。

栗原先生の活動を知って獣医師や専門医を目指す人もいるかもしれません。

うれしいですね。じつは僕の出身高校から獣医師になったのは僕が初めてだったんですが、後輩が何人か続いていると聞いています。日本の専門医も10年前は数人しかいなかったのに何倍にも増えています。これからも獣医師の先生方と切磋琢磨しながら、動物と飼い主さんの幸福に貢献していきたいと思います。

苅谷動物病院グループ江東総合病院院長・苅谷卓郎先生のバトンの回答

苅谷先生

Q1.一次臨床から専門分野(画像診断科)に興味が移った背景と時期について教えてください。

栗原先生

最初は高校3年生のときに「画像診断は臨床みたいだけど研究もやってそう」と興味を持ったこと。受験の段階で画像診断を学べる研究室がある大学に絞ったくらい一直線でしたね。卒業後は動物病院での勤務医を経て開院することも考えましたが、CTやMRIの機材がそろうまでは提供できる医療のレベルが下がってしまう。学んできた画像診断で動物を救いたいのに……と考えて、29歳のときに画像診断専門医の取得に向けて勝負に出ました。

苅谷先生

Q2.専門医と一次臨床従事者(かかりつけの獣医師)との健全な関係性を築いていると思いますが、普段から意識していることを教えてください。

栗原先生

同じ獣医師として尊敬しています。僕が担当するのは画像診断だけれど、一次診療の先生はすべて自分で診ているわけですから。そのなかで答えを出せない症例を二次診療に相談・紹介してくださって初めて僕たちは動物を診られるので、常に感謝の気持ちを心に刻んでいます。これからも一次診療の負担を減らして動物を救う手助けをしたいので、僕のような明るく気さくな専門医に声をかけてほしいですね(笑)。

福岡 玲先生へのバトン

Q1.一次診療の動物病院から東京大学というアカデミア(教育機関)に戻った理由とは?
Q2.内科の中でも血液をメインとして臨床・研究を行なっている理由と、その決め手とは?

 
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