【ペットのお悩み相談室】愛犬家・安田美沙子さんと獣医師・中村篤史先生の対談。愛犬の笑顔を守るために、オーナーができることとは(後編)

【ペットのお悩み相談室】愛犬家・安田美沙子さんと獣医師・中村篤史先生の対談。愛犬の笑顔を守るために、オーナーができることとは(後編)

  • 安田 美沙子
  • 中村 篤史
      

ペットのお悩み相談室は、オーナーからの質問に獣医師が直接お答えするコーナー。ここでは毎回、さまざまなオーナーゲストをお招きし、愛犬の心配ごとをお話ししていただきます。今回のゲストオーナーは、タレントの安田美沙子さん。
後編では愛犬ハンナちゃんのSOSにより早く気づくため、実際に安田さん自身が愛犬の健康チェックに挑戦してみることになりました。指導をしてくださるのは、前編同様、TRVA夜間救急動物医療センター院長の中村篤史先生です。

プロフィール

安田 美沙子さん

京都府出身。『ミスマガジンコンテスト2002』をきっかけに注目され、数多くのバラエティー番組やテレビドラマなどでタレント、女優として活躍。2014年に結婚。現在、4歳と1歳の男の子のママであり、14歳のビションフリーゼ、ハンナちゃん(女の子)のオーナー。

安田さんの愛犬 ハンナちゃん

ビションフリーゼ 14歳 女の子。安田さんが1人暮らしをしていたころから一緒に過ごしてきた愛犬。明るく陽気で、人懐っこく誰にでもフレンドリー。好きなことはお散歩。

プロフィール
広島県広島市生まれ。北里大学獣医学科卒業。2006年に東京大学附属動物医療センター、2008年に酪農学園大学附属動物病院(北海道)で研修医として勤務。その後、勤務医経験を経て、2011年にTRVA夜間救急動物医療センターの開院とともに院長に就任。業務の傍ら講演活動も精力的に行い、2019年には日本獣医救急集中治療学会の設立に参加し理事長を務めるなど、日本に動物の救命救急分野を根付かせようと尽力している。

中村 篤史 先生

グルーミングしながらハンナちゃんの健康をチェック。
大事なのは、元気なときの様子をきちんと知っておくこと

中村先生

安田さんから見て、今日のハンナちゃんの体調はどうですか?

安田さん

最近、倒れるような様子もあったので心配していたのですが、今日はとても元気そうです。でもきっと、そろそろ散歩に行きたいと思っていますね(笑)。

中村先生

確かに、ずっと室内で退屈してしまったかもしれませんね(笑)。倒れることがある、というのも心配ですし、さっそく健康チェックをしていきましょう。

滑り止めマットを敷いた台の上にハンナちゃんを移動させ、健康チェックがスタート

中村先生

ハンナちゃんは、本当に人が好きですね。触られることに躊躇がなくて、フレンドリーな性格が伝わってきます。

安田さん

そうなんです。でも病院は苦手なので、今日は上手にできるかどうか……。

中村先生

今日は白衣もスクラブも着ていないので、獣医師だと気づかれないはずです(笑)。警戒されないように気をつけて、ハンナちゃんの健康チェックをしていきましょう。

安田さん

ありがとうございます。よろしくお願いします!

そんな会話からスタートした健康チェックですが、少し背の高い台にハンナちゃんを移動させたところで、あっさりと中村先生が警戒されるように……。

警戒モードに入ってしまったハンナちゃん

安田さん

気づかれちゃいましたね(笑)。

中村先生

ハンナちゃん、賢いですね~。チェックしやすいようにと診察台に似た高さの台を用意したことがよくなかったのかもしれません。でも今日、私は痛いことをしませんから。きっともうすぐまた打ち解けてくれるはずです(笑)。

では、ここからは中村先生が教えてくださった健康チェックの方法を紹介します。

STEP1

全身をくまなく触ってみる

耳のつけ根や内股を触って体温をチェック

普段の体温を耳の周りや内股など被毛が薄い部分を触って確認します。犬の体温は38度くらいなので、ちょっと温かいと感じるくらいがちょうどいい体温。リラックス時、散歩時などに確かめて、普段の体温を把握しておきましょう。

肥満度チェック

愛犬のあばら骨を触り、自分(人間)の手の感触でチェックしていきます。自分自身の手の甲の感触が肥満度の基準になるので参考にしてみましょう。①手の甲の指のような骨ばった感触=痩せ気味、②中央部の少し骨が触れる程度の感触=標準、③骨感が感じられない=肥満気味だと言われています。

しこりや傷

全身をくまなく触っていることで、小さなしこりや傷に早めに気づくことができます。かゆみなどが原因で、自分で舐めすぎて被毛がちぎれてしまい、皮膚が傷ついているなど、皮膚系の病気などを見つけることもできます。

手の甲の感触での肥満度チェックを教える中村先生

安田さん

ハンナは痩せてはいないですね……。(苦笑)

中村先生

そうですね。まずまず、がっしりしています(笑)。よく歩いていて筋肉質でもあるので、太りすぎということはないですよ。シニアになると急激に太るということはあまりないのですが、おやつやフードのあげすぎには気をつけてください。

安田さん

最近、どうも息子たちがこっそりおやつやフードをあげているようで……。ハンナと仲良くなりたい気持ちからなんですが、注意して見ておきます!

STEP2

脈の様子を確かめる

犬の心拍数はリラックスしている状態で1分間に80~120回程度です。前足の肘にあたる部分に心臓があるので、触って鼓動を感じて見ましょう。少し難易度が高いので、愛犬の胸に耳を当てて心臓の音を確認するのでもOKです。

中村先生

心拍数を数えるのは少し飼い主さんには難しいんですが、もしできたらやってみましょう。心臓はどこにあるか分かりますか? ハンナちゃんの肘があたる部分をそっと触ってみてください。

安田さん

このあたりですね。かすかに鼓動を感じますが、数えるのは難しそうです……。いつもなんだか愛おしくて、ハンナの胸に耳をつけて心臓の音を聞いているんですが、それで数えてもいいんでしょうか?

中村先生

とてもいいと思います! その方法はオーナーさんにもわかりやすいですね。

安田さん

ハンナが倒れるのは不整脈が原因だったりするのかな、と思っているのですがそれもわかりますか?

中村先生

わかりますよ。「ドク、ドク、ドク」とリズムよく鳴っていれば正常、「ドク・・ドクドク・・・」とリズムが崩れてくると不整脈の疑いがあります。(ハンナちゃんの脈を確認して)でも、ハンナちゃんは不整脈はなさそうですね。とてもキレイなリズムを打っています。

安田さん

よかったです!ひとまず安心しました。

台の下に降りたそうなそぶりのハンナちゃんをそっと止める安田さん

STEP3

呼吸の様子を確かめる

犬の呼吸回数は、安静時と興奮時で大きく変わってきます。安静時は1分間あたり10~20回、体温上昇時や興奮時は160~200回分ほど。胸が動き、同調しておなかが動く穏やかな呼吸かどうかをチェックしましょう。安静時に1分間で60回以上で頭を揺らしながら全身で一生懸命に呼吸をしているようなら、犬にとってかなり苦しい状態です。

中村先生

私の病院ですと、電話がかかってきた際にスタッフが「呼吸はどうですか?」と聞くんですが、見極めが難しいですよね。普段の様子をチェックしておいていただくと、異変があるかどうかわかりやすいと思います。

安田さん

ハッハッハと息があがることは犬にはよくありますもんね。だからこそ今後は、呼吸回数だけでなく、頭が動いているかなどチェックしてみたいと思います。

STEP4

舌の様子を確かめる

舌は全体の色がキレイなピンク色であれば問題ありません。全体が白っぽい、紫色をしているときは要注意です。愛犬の笑顔の写真を撮っておくと普段の舌の色が把握できるのでおすすめです。

安田さん

舌のどの部分を確認すればいいんでしょうか?

中村先生

全体ですね。紫色になる場合は、中央部分から変色することがあるので中央部を注意深く見てみましょう。

安田さん

白っぽい時や紫色のときは、どんな疑いがあるんでしょうか?

中村先生

白っぽくなるのは、血の巡りが悪いことが考えられます。歯茎まで白くなっていくと極度の貧血状態です。また、紫色になるのは酸素が体内に不足している、いわゆるチアノーゼ状態。早々に治療を開始しなくてはなりません。

安田さん

今のハンナは、通常と変わらないピンクだと思うんですが、普段そんなに注意深く見ていないので迷いますね……。

中村先生

そうですよね。だからこそ、私はよくオーナーさんに愛犬の笑顔の写真を撮っておくといいですよ、とおすすめしています。笑顔の時は口まわりの色が確認できるので。

安田さん

なるほど! 笑顔の写真と比較すればわかりやすいですね。早速撮っておきます!

健康チェックについて真剣にアドバイスを聞く安田さん

CHECK LIST

愛犬の健康チェックの仕方 まとめ

グルーミングをしながら、普段の様子を把握していきましょう。

  • STEP 1. 耳のつけ根で体温をチェック。全身を触って、肥満度、しこりや傷の有無を確認しよう。
  • STEP 2. 胸に耳を当てて脈(心拍数)や鼓動のリズムを聞いてみよう。
  • STEP 3. 胸とおなかの動きから呼吸回数を確認しておこう。
  • STEP 4. 舌の普段の色を確かめておこう。(白や紫色は危険信号)

シニア犬だからこそ、季節の変わり目の体調変化に注意。
病院に行くか迷ったら、意識・脈・舌のチェックを

安田さん

ハンナもシニア犬になったので、普段から体調管理には気をつけていきたいと思っています。何か生活の中で気をつけておくべきことなどはありますか?

中村先生

高齢になると体温調節が苦手になり、脱水しやすくなります。夏は熱中症にならないように注意してあげるといいですね。残暑が厳しい時期なども要注意です。それから、季節の変わり目は体調を崩しやすくなるのでよく様子を見てあげてくださいね。

安田さん

体調の変化に気づいたとき、何を基準に病院に連れて行くべきかどうか判断すればよいでしょうか?

中村先生

先ほどの健康チェックの内容の中で特に要注意なのは、呼吸や舌の色の変化です。病院に電話がかかってきたときにオーナーさんに確認するのは、①意識があるかどうか、②呼吸回数はどのくらいか、③舌の色が何色か。この3つに異常があるようなら、夜間でもすぐに病院に来てもらっています。

安田さん

なるほど。普段からチェックして、その3つは必ず分かるようにしておきたいですね。ハンナが前回倒れたときは、すぐに立ち上がって、意識もあり、呼吸も通常どおりだったように思います。今後もし倒れた場合にはこの3つをチェックして病院に行ってみます。

中村先生

そうですね。ただハンナちゃんの場合は何度も倒れるのを繰り返しているということなので、3つにそんなに異常を感じられなくても、また倒れた際には、一度病院に行ってみた方がいいですよ。

安田さん

ありがとうございます。そうしてみます。

CHECK POINT

病院に行くべきか迷ったときのチェックポイント

  • 1. 意識がはっきりしているかどうか。
  • 2. 1分間の呼吸回数が60回以上で、頭を揺らして一生懸命に呼吸するなど苦しそうな様子はないか。
  • 3. 舌の色がピンクではなく、白や紫色になっていないか。

無理やり口を開けさせようとして、マズルを強く押さえないで!

中村先生

舌の色を確かめるときの注意ですが、口まわりを触られるのが嫌な子に無理やり口を開かせようと力を入れてマズルを握るのは危険です。

安田さん

ドッグトレーニングなどでマズルコントロールを習ったんですが、あまり力を入れない方がいいんですか?

中村先生

ハンナちゃんは成犬なのでおそらく大丈夫なのですが、1歳未満の子などは要注意です。マズルの骨が柔らかいので、気道がふさがれ呼吸ができなくなってしまうんです。鼻の短いチワワやパグ、ブルドックなども押さえつけるのは止めた方がいいですね。

安田さん

怖いですね。気をつけてみます。歯磨きなどのときに、結構強く押さえてしまっているかもしれません……。

中村先生

苦しくてさらに口を触られるのが嫌になってしまうこともあるので、ちょっと様子を見てみた方がいいですね。でも、ハンナちゃんはお口の中もきれいですよ。そんなに心配することはありません。

安田さん

本当ですか? よかったです! 歳をとってから歯磨きを嫌がるようになってしまい、今は隙をついて、歯磨きスプレーを吹きかけることしかできないんです……。散歩から帰ってきて、脚を拭くついでにシュッと気づかれないように吹きかけています(笑)。

中村先生

工夫してるんですね(笑)。十分よくケアできています。無理せず、できるかぎりで続けてあげてください。

安田さん

そう言っていただけると安心します。ハンナには、ずっと元気で過ごしてほしいので、日常の中でできることをちゃんと行い、体調の変化に気づいてあげられるようにがんばります。

何より大切なのは、今ある時間を、一緒に笑って幸せに過ごすこと

安田さん

今日は本当にありがとうございました。最近は子どもにも手がかかるので、ハンナにたっぷり時間を取ることができず、不安がいろいろたまっていたんです。だからこそ、今日たくさん質問することができてとてもうれしかったですし、アドバイスをいただけて安心しました。

中村先生

安田さんの質問から、とてもハンナちゃんのことを愛情深くお世話されているんだということが伝わってきて、私もうれしくなりました。ただ、心配はしすぎないでくださいね。ハンナちゃんの楽しい毎日が心配ばかりの毎日になってしまうのもよくないですよね。

安田さん

そうですよね。私も、ハンナが病気にならないように、体調を崩さないようにと視界が狭くなってしまうことがあって、それはよくないなと感じていました。ハンナは今、元気で楽しく毎日を過ごしているので、行動を制限しすぎることなく、もっともっと彼女が楽しいと思うことを、どんどんさせてあげたいです。

中村先生

それがいいと思います! お子さんたちとも楽しく過ごしているようなので、ぜひ、一緒に過ごす時間を存分に楽しんでください。そのうえで、体調の変化などに気をつけてあげていれば大丈夫です。

安田さん

ハンナには、仕事が忙しくて寂しい思いをさせてしまったり、子どもが生まれてストレスを感じさせてしまったりしたこともありました。でも、それを経て彼女が新たな一面を見せてくれることもあって、本当に一緒に人生を歩んできたんだなと感じていますし、だからこそ、これからは、もっとずっと楽しく過ごしてほしいと心からそう思っています。最近、電動の自転車を買って、ハンナのキャリーケースも新調したんです。息子たちとハンナともっと一緒に公園などに出かけたいなと思って。ハンナがハンナらしく過ごせるように、一緒に過ごせる今を大事にしていこうと思います。

中村先生

ハンナちゃんはきっと、これからもたくさんのことを安田さんのご家族に教えてくれますね。子ども達にとっても、ますます大切な存在になっていくはず。ぜひ、この子らしい人生、犬生をおくらせてあげてください。そんな飼い主さんの思いを、私達、獣医師は大切にしたいと思っています。

散歩が大好きなハンナちゃんと、そんなハンナちゃんを見守ることが何より楽しいという安田さん。ぜひ、これからもハンナちゃんの笑顔を守っていけるようにしていきたいと、安田さんは対談後に語っていました。
中村先生は、「何か不安なことがあれば、いつでも獣医さんに相談してくださいね」と、仲良く帰っていく安田さんとハンナちゃんを笑顔で送り出しました。
そしてこれにて今日の「お悩み相談室」はクローズ。また次回、新たなゲストオーナーを迎えてオープンする日を、ぜひお楽しみに。

安田さんが中村先生にお悩み相談!
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愛犬の笑顔を守るために、オーナーができることとは(前編)

 
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