ブルーの被毛とスリムな体型が魅力的なロシアンブルー。おだやかな性格で飼いやすい猫種ですが、怯えやすいため、飼い主としては注意してあげたいところです。この記事では、ロシアンブルーの歴史からかかりやすい病気、生活するうえで気を付けたいことを紹介します。ロシアンブルーを飼う際の参考にしてみてください。
目次
ロシアンブルーの歴史
ブルーの被毛にグリーンの目、ほっそりとした体つきが特徴的なロシアンブルー。まずはそのルーツについて紹介します。
ロシアを代表する猫
ロシアンブルーは、ロシアのアルハンゲリスクという港町に生息していたブルーの猫が発祥だと言われています。アルハンゲルキャット(Archangel Cat)と呼ばれるのは、この地名に由来しているそうです。
1860年頃、ロシアの商船に乗った猫が英国や北欧に渡り、ブリーダーたちによって生み出されたのが、今のロシアンブルーの原型とされています。英国の初期のキャットショーには、英語読みにした「アークエンジェルキャット」という名で出陳されました。1912年に英国で「ロシアンブルー」として血統登録されています。
ブルーの被毛とスリムな体型で人気に
第二次世界大戦後は数が減少したため、シャム猫との交配が行われました。交配を進める中で、ややぽっちゃりした体型になった時期もあります。そして1940~1950年代にかけてスカンジナビア半島と英国のロシアンブルーを混ぜて、現状のロシアンブルーの血統を確立。特徴的なブルーの被毛に、スリムな体型を取り戻し、人気も高まりました。
ロシアンブルーのかかりやすい病気
ロシアンブルーがかかりやすい病気は以下の通りです。なかには報告数が少ないものもありますが、どんな病気のリスクがあるのかをチェックしておきましょう。
下気道炎症性疾患(猫喘息・慢性気管支炎、細気管支炎)
猫で最も多く認められる呼吸器疾患です。猫喘息は1~5%の猫が罹患しているとされ、性差はありません。発症する平均年齢は4~5歳です。
■診断
咳、呼吸困難、呼吸数が早いなどの症状が認められるかを確認。胸部X線検査を行います。
■治療
主にステロイド薬投与および症状にあわせて気管支拡張薬を併用します。まれに他の免疫抑制剤が使用されるケースもあります。多くの場合、生涯にわたる治療が必要です。適切に治療されないと肺気腫や気管支拡張症、気管支肺炎に進行することがあります。
気管支肺炎
若齢期を除き、猫では原発性の細菌性肺炎を罹患することはまれです。多くの場合、慢性気管支炎や猫喘息などの下気道炎症性疾患が進行し、二次的に細菌感染が生じることで発症します。
■診断
臨床症状、身体検査、X線検査によって総合的に診断を行います。
■治療
抗菌薬の投与、噴霧吸入療法、気管支肺炎の背景にある気道炎症性疾患の治療としてステロイド薬や気管支拡張薬の投薬を行います。その他に栄養補給や輸液による脱水補正、酸素療法などの補助療法が必要になることもあります。
間質性肺疾患
非感染性、非腫瘍性のまれな疾患群です。多くは中年齢以上で発症しますが、若齢での発症例もあります。無症状から頻呼吸、咳、運動不耐性など、他の肺疾患と鑑別できる特異的な症状はありません。
■診断
臨床症状や画像診断、病理組織学的検査を組み合わせて総合的に診断します。
■治療
根本的な治療は確立されておらず、対症療法が中心です。
肺線維症
肺実質が線維化する原因不明の非感染性・非腫瘍性のびまん性肺疾患で、猫ではまれに見られます。多くは中年齢以上で発症しますが、若齢で発症することもあります。
■診断
臨床症状や画像診断、病理組織学的検査を組み合わせて総合的に判断します。
■治療
根治は望めません。症状に合わせてステロイド治療や外科的切除などを行います。
尿石症
ロシアンブルーにとってはリスクが高い病気です。結石の成分や発生場所によってさまざまな病態が認められます。
■診断
尿検査、超音波検査、X線検査などを行います。
■治療
ストルバイト結石は食事や投薬によって溶解しますが、シュウ酸カルシウム結石は食事や投薬で溶解せず、膀胱結石や尿道結石、尿管結石では外科手術による摘出が必要です。生活環境、飲水環境の改善も欠かせません。
糖尿病
無症状から糖尿病性ケトアシドーシスまでさまざまな症状があり、程度によって治療は異なります。
■診断
臨床症状、高血糖、尿糖の存在を確認します。
■治療
インスリンと食事管理による治療が一般的です。治療によって寛解することもありますが、多くの場合は生涯にわたってインスリンを投与します。
白内障
水晶体が不透明になった状態です。原因は先天性、加齢性などがあり、他には遺伝性、外傷性、水晶体脱臼緑内障、糖尿病(猫では糖尿病が原因で白内障になるケースは稀です)によるものが確認されています。猫の遺伝性白内障は犬と比較するとまれですが、ロシアンブルーの発症報告もあります。
■診断
細隙灯顕微鏡(スリットランプ)検査で水晶体の混濁を確認します。先天性白内障では開瞼時に既に白内障が認められます。
■治療
点眼薬のみでコントロールすることはできず、手術が必要です。ただし年齢的に高齢でかかるケースが多く、手術が選択されない場合も多いのが現状です。白内障となった水晶体から水溶性の変性蛋白質が溶け出して水晶体起因性ぶどう膜炎になった場合は、消炎点眼薬を使用します。
皮膚肥満細胞腫
猫の皮膚腫瘍の中で2番目に多く発生し、好発発生部位は頭頚部および体幹です。病変の大きさは2ミリ程度~30ミリ大とさまざま。経過に伴って腫瘤の大きさが縮小・増大を繰り返すことがあります。
■診断
病理組織学的検査を行います。
■治療
外科手術で病変を摘出します。ステロイドや分子標的薬などの内服薬も使用することがあります。
ロシアンブルーとの生活で気を付ける点
ロシアンプルーは頭が良く飼い主に従順ですが、静かで内気な性格のため、普段の生活でも心配りが必要です。気を付けたい点をチェックしておきましょう。
ロシアンブルーが安心して過ごせるよう配慮する
ロシアンブルーは飼い主にはなつきますが、人見知りが激しいところもあります。初対面の人や動物、大きな音に警戒心を見せることもあるので、静かに生活できる環境を整える、動物病院での診察時には犬の鳴き声が聞こえないようにするといった心配りが必要です。
カロリーコントロールでスリム体型を保つ
ロシアンブルーは細身の猫なので、カロリーコントロールによって健康を維持しましょう。フードの与えすぎは避けて、適切な運動も心がけてください。
1日1回のブラッシングを欠かさない
ロシアンブルーは短毛種ですが、下毛が豊富なので、定期的なブラッシングが必要です。1日1回のブラッシングを欠かさずに、美しい被毛を保ってあげましょう。
ロシアンブルーを飼うのに向いている人
内気な性格のロシアンブルーは、環境の変化を好みません。頻繁に引越しをするような家庭で飼育するのは難しいでしょう。ロシアンブルーの性格を理解し、静かな環境を整えられる人が飼い主として向いています。
内気なロシアンブルーが過ごしやすい環境作りを
ロシアンブルーは、その名の通り特徴的なブルーの被毛を持ち、スリムな体型、グリーンの目をした美しい猫です。体型や健康を維持するためにカロリーコントロールに注意しましょう。内気で怯えやすい性格にも配慮して、ストレスのない環境作りをしてあげてください。
服部 幸 先生